【研究成果】札幌医大の技術を使った新たな抗悪性腫瘍剤の実用化に関して

 北海道公立大学法人札幌医科大学(理事長・学長 山下敏彦、北海道札幌市)の技術を使った新たな抗悪性腫瘍剤である「ダトポタマブデルクステカン(Dato-DXd/DS-1062)」(第一三共株式会社)について、本日、薬価収載を受け処方箋による使用が開始されますことをお知らせします。

 「ダトポタマブデルクステカン(Dato-DXd/DS-1062)」に用いられているヒト化モノクローナル抗体は、札幌医科大学医学部免疫学研究所分子医学研究部門 山口美樹助教と濱田洋文教授(当時)を中心とする研究チームが第一三共株式会社の研究チームとの共同研究によって見出したものです。

 本剤は世界に先駆けて日本で承認を取得したのち米国でも販売開始となっており、日本だけでなく世界の乳がん患者の新たな治療選択肢の一つとなることが期待される抗体薬物複合体です。日本においてはHR(ホルモン)受容体陽性かつHER2(ハーツー)陰性の手術不能又は再発乳がん患者を対象としています。乳がんの多くで高発現しているTrop-2タンパクを標的としており、がん組織周囲に効率的に抗がん薬を届けることに成功しております。これまでのHR陽性乳がんの薬剤開発としてCDK4/6阻害剤などの分子標的薬や経口SERDと呼ばれる内分泌療法の進歩がありましたが、本剤の登場により新たなモダリティの薬剤として、多くの患者さんの治療選択肢が増えることになります。

 日本において女性の部位別のがん罹患者数では乳がんが最も多く、2023年には約9万2千人が新たに乳がんと診断され、約1万6千人が亡くなっております※1。世界でも2022年には約200万人が新たに乳がんと診断され、66万人以上が亡くなっております※2。

 HR陽性かつHER2陰性の乳がんは、乳がん全体の約70%占めており、多くの乳がん患者が該当します。標準治療である内分泌療法において病勢が進行するケースも多く、新たな治療選択肢が切望されていました。ダトポタマブデルクステカンが多くの患者さんの治療に貢献できる薬剤となることを願っております。

※1 厚生労働省「2023年人口動態統計(確定数)」・「全国がん登録罹患数・率報告2020」
※2 WHO/IARC:Global cancer burden growing, amidst mounting need for services

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