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プレスリリース・メディア

【研究発表】肺サーファクタント蛋白質Dの抗腫瘍活性の解明~肺がん治療薬の開発とバイオマーカーとしての役割に期待

<研究の概要>
 札幌医科大学医学部呼吸器・アレルギー内科学講座 助教・梅田泰淳(教授 高橋弘毅)と医化学講座 助教・長谷川喜弘(教授 高橋素子)らの研究グループは、上皮増殖因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の肺がん細胞において、肺サーファクタント蛋白質D(SP-D)が抗腫瘍活性を持つこと、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者の血清SP-D値は、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の効果および予後と関連することを明らかにしました。
 SP-Dは、変異型EGFRの糖鎖に結合し、リガンド結合の阻害、二量体形成の阻害、自己リン酸化の阻害といった様々な機序により、変異型EGFRを制御することが明らかとなりました。EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者において、血清SP-D高値群ではEGFR-TKI治療による無増悪生存期間と全生存期間が延長していました。従って、SP-Dによる変異型EGFRのシグナル抑制作用は,血清SP-D高値の患者の良好な予後につながっている可能性があると考えられました。
 この研究は、本学医学部 呼吸器・アレルギー内科学講座、医化学講座、フロンティア医学研究所分子医学部門、公衆衛生学講座の共同研究であり、文部科学省研究費補助金のもとで行われました。その研究成果は、国際科学雑誌Oncogeneに、2017年11月16日に掲載予定です。

Yasuaki Umeda, Yoshihiro Hasegawa, Mitsuo Otsuka, Shigeru Ariki, Rina Takamiya, Atushi Saito, Yasuaki Uehara, Hiroshi Saijo, Koji Kuronuma, Hirofumi Chiba, Hirofumi Ohnishi, Yuji Sakuma, Hiroki Takahashi, Yoshio Kuroki & Motoko Takahashi

Surfactant protein D inhibits activation of non-small cell lung cancer-associated mutant EGFR and affects clinical outcomes of patients

<研究のポイント>

  •  EGFR遺伝子変異陽性の肺腺がん細胞株において、SP-Dは変異型EGFRの自己リン酸化と下流シグナルを抑制し、細胞増殖、遊走、および浸潤を抑制しました。
  • SP-DはEGFRのN型糖鎖に結合し、変異型EGFRのリガンド依存性および非依存性の二量体形成を阻害しました。
  •  EGFR遺伝子変異陽性の肺腺がん細胞株において、EGFR-TKIとSP-Dを併用すると、細胞増殖がより抑制されました。
  •  EGFR遺伝子変異陽性の肺腺がん患者において、血清SP-D値が高い患者では、低い患者と比べて、遠隔転移が少なく,全生存期間と無増悪生存期間が有意に延長していました。
     

 

図説

           ※画像の二次配布・無断転載は禁止いたします。

<研究の背景・実施期間など>
 EGFRは、肺がん細胞では過剰に発現しており、がん細胞の増殖シグナルの起点となっています。非小細胞肺がんの治療薬であるEGFR-TKIは、細胞内にあるEGFRチロシンキナーゼドメインに結合し、EGFRの増殖シグナルを抑え、がん細胞の増殖を抑制します。
 EGFR-TKIによる治療では、エクソン19の欠失やエクソン21の点変異といったEGFRチロシンキナーゼドメインの遺伝子変異が重要で、これらの遺伝子変異が存在するとEGFR-TKIとの親和性が増し良好な奏効率を示します。しかし、二次変異獲得など例外なく耐性を獲得してしまうことが問題となっています。
 肺サーファクタントは、肺胞の全表面を覆い、肺が虚脱することを防ぐことで円滑な呼吸を維持しています。肺サーファクタントに含まれる特異的なタンパク質のひとつであるSP-Dは、肺の自然免疫に関与しています。また、SP-Dは血液中にも存在し、血清SP-Dは間質性肺炎のバイオマーカーとなっています。
 以前よりSP-Dが肺がんの進展に抑制的に働いている可能性が示唆されてきましたが、分子メカニズムは不明でした。我々はこれまでに、SP-Dが野生型EGFRの糖鎖に結合し、EGFRのリガンド結合を阻害することで,EGFシグナルを抑制することを報告しました。しかし,リガンド非依存性に活性化する変異型EGFRに対するSP-Dの作用は不明であったため,本研究ではSP-Dの変異型EGFRの活性に与える影響について検討しました。また肺腺がん患者を対象に、血清SP-D値とEGFRの遺伝子変異の有無、EGFR-TKIの効果と予後との関係について検討しました。
<研究の意義・これからの可能性、今後への期待、今後の展開など>
 SP-Dは、野生型だけではなく変異型のEGFR、さらには二次変異を獲得したEGFRにも抗腫瘍活性をもつことが明らかとなりました。今後、肺がんの新たな抗腫瘍薬の開発につながる可能性があります。EGFR-TKIの耐性化の機序として、EGFシグナル以外の受容体シグナルが活性化することも重要であり、膜受容体の大半が糖鎖をもつことから、SP-Dが制御するシグナル伝達機構が他にも存在する可能性もあります。また、血清SP-D値は、EGFR-TKIの効果を予測する新たなバイオマーカーとなることが期待されます。
<本研究に関するお問い合わせ先>
札幌医科大学医学部 呼吸器・アレルギー内科学講座・助教・梅田泰淳
               医化学講座・教授・高橋素子

TEL:011-611-2111(32390)FAX:011-613-1543
Eメール:梅田泰淳:y.umeda☆sapmed.ac.jp 高橋素子:takam☆sapmed.ac.jp
      ☆を@に変えてご送付ください。
 

  • 発行日:2017年11月15日