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プレスリリース・メディア

(研究発表)日本人クローン病発症はIL23受容体の比較的低頻度の変異により抑制される


<研究の概要>
 IL-12BやIL-23受容体などTh17細胞応答に関わるサイトカインは欧米のクローンの病感受性遺伝子として同定されている。驚くべきことに、日本人にはこれらの多型すら存在しない。ゲノムワイド関連解析 (GWAS) はcommon disease-common variants hypothesisに則った戦略であり、その限界から翻って最近ではcommon disease-multiple rare variants hypothesisが注目されている。
 本研究では、クローン病の一家系(両親と次男は健常、長男と三男がクローン病)の全エクソンシークエンス解析を施行した。さまざまなフィルタリングにより、5つの候補多型を効率よく、かつ、精度高く絞り込むことに成功した。そのうち、IL23受容体コード領域の比較的低頻度の変異(G149R,rs76418789)が、日本人クローン病発症を抑制することをはじめて明らかにした。

<研究のポイント>
・ Exome解析の最大の難点は、検出された多くの多型をどのように解釈しフィルタリングすると、効率よ
く、かつ、精度高く絞り込むかということに尽きる。
・ 本研究では、品質基準による絞込み、同義SNPやタンパク非コード領域のSNPの除外、これまでに既知のコモンSNP(dbSNPなど)の除去に加え、両親を保因者と考え、本家系におけるCDの遺伝様式を常染色体劣性遺伝に則ると仮定した場合、2人の患児は両親から同一のハプロタイプ(identical by descent IBD)を2つ引継ぎ(IBD = 2)、CDの原因遺伝子はそのような領域に存在するはずである。このIBDを予測するアルゴリズムを使用した。
・ さらに候補遺伝子を絞り込むために、複数の罹患者のシークエンスを行い、罹患者に共通する多型を検出し、ここから非罹患者の多型を除くことで、遺伝様式に関わらず、この家系に特有なプライベート多型を除くことができるLinkage based strategy、および、非罹患の両親と罹患児のトリオにおいて、患児に特異的な多型を検出できるDe novo based strategyを採用した。
図 本研究におけるパーソナルゲノミクス解析のワークフロー

                       図 本研究におけるパーソナルゲノミクス解析のワークフロー

オレンジは健常者、青は罹患者を表す。家系の番号は1が父親、2が母親、3が長男、4が次男、5が三男をそれぞれ表す。図形中の数字は、同定された多型数、破線の楕円は健常者、実線の楕円は罹患者を表す。De novo 変異は認められず、同定された5つの候補はすべてLinkage based strategyにより同定された。
 

<研究の背景・実施期間など>
最初に報告されたクローン病感受性遺伝子は、ロイシン繰り返し配列を介して細胞内菌体成分を感知するムラミルジペプチドをコードするnucleotide oligomerization domain 2 (NOD2)/caspase-activation recruitment domains-15 (CARD-15)であった。さらに、病原体のクリアランスに関わるオートファジーを司るautophagy gene autophagy-related 16-like 1 (ATG16L1)が、クローンの発症に関与することが判明した。これらは、いずれも自然免疫機構の破綻がクローン病の病因であることをはじめて示唆した重要な知見である。驚くべきことに、欧米では重要な疾患感受性遺伝子であるNOD2/CARD15 (IBD1)、 solute carrier 22A4/5 (SLC22A4/5) (IBD5) およびIL23Rなどは、日本人にはその多型すら存在しない。このことは、調べる地域や人種間における遺伝的素因の差を示しているのか、あるいは、真の原因遺伝子が未だ同定されていないことを示唆する。加えて、GWASによって発見された遺伝子の多くは、オッズ比が小さく、たとえばクローン病の高い家族集積性や人種の違いなどの遺伝素因のおよそ20%を説明し得るに過ぎない。これがmissing heritabilityといわれる所以であり、その克服のため最近ではパーソナルゲノミクス解析が注目されている。

<研究の意義・今後への期待>
日本人のクローン病小家系におけるパーソナルゲノミクス解析により、日本人に特有な新たなCD感受性遺伝子が同定される可能性があり、今後も極めて意義ある検討であろう。

<論文発表の概要>
題名:Low-frequency IL23R coding variant associated with Crohn’s disease susceptibility in Japanese subjects identified by personal genomics analysis
著者:Kei ONODERA 1), Yoshiaki ARIMURA 1),Hiroyuki ISSHIKI 1), Kentaro KAWAKAMI 1), Kanna NAGAISHI 2), Kentaro YAMASHITA 1) ,Eiichiro YAMAMOTO 3) , Takeshi NIINUMA 3), Yasuyoshi NAISHIRO 4)Hiromu SUZUKI 3), Kohzoh IMAI 5), Yasuhisa SHINOMURA 1)
所属:Department of Gastroenterology, Rheumatology, and Clinical Immunology 1) , Department of Anatomy 2), Department of Molecular Biology 3) , Department of Educational Development 4)、 Sapporo Medical University, and Center for Antibody and Vaccine Therapy, Institute of Medical Science, The University of Tokyo 5)

掲載誌 :本研究成果は、国際科学誌PLOS ONEに公表されます。
公表日時:米国東部時間 2015年9月16日(水)午後2時【日本時間 2015年9月17日(木)午前3時】

<本研究に関するお問い合わせ先>
所属・職・氏名:札幌医科大学医学部消化器・免疫・リウマチ内科学講座 講師 有村佳昭
TEL:011-611-2111 (内3211)
FAX:011-611-2282
E-メール:arimura*sapmed.ac.jp (*印を@に変えてください。)



  • 発行日:2015年09月17日