献体に関する質疑応答

献体についての対応は、各大学の事情によって多少異なります。
ここでは、札幌医科大学に献体される方々のために、札幌医科大学白菊会の会員、または入会を希望される方々からのご質問にお答えする形で事情をご説明致します。

全くありません。だから献体を約束した人を篤志家というのです。医学・歯学の教育上で最も大切なことは、人体は金で買うことのできない尊いものであるということです。

それは「病理解剖」というもので、病気の原因を明らかにするために病気に関係したところを調べるものです。これは、その日のうちに解剖が終わり、ご遺体はご遺族のもとに戻ってきます。しかし、献体の目的である「解剖学(正常解剖)」は人体の構造を全身くまなく学ぶので、長い期間が必要となります。

確かに、これは非常に難しい問題です。しかし、あなたが亡くなられたとき、本人の遺志を尊重し献体を実行して下さるのはご家族なのです。たとえ日時がかかっても、十分お話合いの上、ご家族の皆さんから同意を得てからにして下さい。

献体を希望されるかたが亡くなられた場合、大学に通知されるかた、または最終的にご遺体を大学に引き渡すかどうかを決めるのはご遺族です。したがって、ご本人がいかに献体を希望されても、ご家族全員のご賛同がなければ献体が実行されない場合があるのです。大学としてはご家族の反対のあるご遺体を引取るわけにはまいりません。

知人、友人、主治医など、ご自分の死後のお世話をお願いすることになると思われるかたに依頼して下さい。

献体に関する法律は、献体という尊い行為を国が承認し、国が国民の理解を深めるために努力するという精神のものです。この法律には「献体の意思は尊重されなければならない」と書いてありますが、これが実行されるためには「遺族がその解剖を拒まない場合」という条件がついています。入会に際してご家族全員の承諾をいただくことと矛盾するものではありません。

まず、ご家族の間で献体することに異存がないか確認の上、以下の引き渡し方法からご都合のよい方法を選んで下さい。
  1. お通夜などもせず直ちに引き渡す。
  2. お通夜又はお別れを済ませてから翌日に引き渡す。
  3. 通常どおりお通夜、告別式を済ませてから引き渡す。
以上のうち、どちらかに決まりましたら、大学へ引き渡しの日時及び場所をお知らせ下さい。大学から委託を受けた葬儀社がお迎えにあがります。

大学への連絡は、問7のとおりご遺体の引き渡し日時、場所などが決まってからにして下さい。
直ちに大学へ引き渡したいという場合は、札幌医科大学へ電話して下さい(電話番号 011-611-2111)警備員室に死亡者の氏名、会員番号、連絡先の氏名、電話番号を伝えていただければ、折り返し担当者からお電話いたします。ご遺体のお迎えは問7のとおり、大学職員になり代わり専門業者がお迎えに参ります。

葬儀をなさることは一向に差し支えありません。しかし、葬儀の費用を大学で負担することはできません。ご遺体引き取りから遺骨返還までの間、つまり大学でご遺体をお預かりしている間に必要な費用については大学で負担いたしますが、それ以外の負担はできません。
(たとえば、ご遺体をお預かりする前の通夜、葬儀に関することや、遺骨返還後の法要などは大学で関与することはできません。)

それは差し支えありませんが、事前に大学と相談して下さい。また、その費用を大学で負担することはできません。

死後、早い時間内にドライアイスを入れるなどの措置をしていただければ、ご遺体の保存に良い結果を得ることができます。葬儀をなさる際には、通常、葬儀社が自動的にこの措置を施して下さるようです。

ご遺体を大学にお引き渡しいただく際に、「死亡診断書(写しで可能)」と「埋火葬許可証」をご用意下さい。埋火葬許可証は市町村町役場の戸籍係へ死亡届けをすると発行されます。
他に、書類手続き上必要となりますので、印鑑をご用意して下さい。(三文判で結構です)

札幌医科大学の場合、学生の解剖学実習は4月から7月に実施されますが、ご遺体をお預かりしてから実習に供するまでに3ヶ月以上の防腐期間が必要です。長い間ご遺体をお預かりすることは心苦しいことですが、通常1年から2年とお考え下さい。

せっかく献体していただいたご遺体ですから、よりよい状態で保存しなくてはなりません。このため、大学に運ばれますと直ちに防腐処置をして、長期間の保存に耐えられるようにいたします。これを固定といい、一定の固定期間を経た後、1体毎にスチール製ロッカーで衛生的に保存されます。また、早期献体の場合は凍結保存致します。

問14でご説明した防腐処置をした後では、対面はできませんのでご了承下さい。ただし、事情により献体直後(当日内)に限り、防腐処置を延期して近親者の対面ができるよう配慮しています。早期献体によって速やかに解剖された場合はこの限りではありません。

以前は、ご遺族に火葬場までお越しいただき、拾骨をしていただいた上でご遺骨を返還していました。しかし、平成12年度より、「遺骨返還式」を新設し、ここでご遺骨の返還を行なっています。従って、火葬のご案内は原則として実施していませんのでご了承ください。

大学では毎年9月に、当該年度に解剖された方々のご遺族をお招きして「解剖体慰霊式」並びに「遺骨返還式」を挙行いたしております。この式典は、無宗教方式で行われ、ご遺族をはじめ、来賓、教職員、学生などが白菊の花を献花し、献体された方々への感謝と御霊のご冥福をお祈りするものです。
慰霊式の後、引き続き遺骨返還式が行われ、文部科学大臣・札幌医科大学長からの感謝状の伝達と共に、ご遺骨の返還を行なっています。

白菊会に入会すること、又は死亡されて献体することについて費用は一切かかりません。火葬の費用も大学で負担いたします。(問9参照)

札幌平岸霊園内に札幌医科大学の納骨堂がありますので、ご遺骨の返還不要というかたのご遺骨についてはここに納骨することができます。

献眼や腎臓移植など臓器提供とは両立できません。特に臓器提供の場合、体内の大きな血管が切られますので、防腐処置ができなくなります。また、献眼すると目の解剖ができなくなります。解剖学実習への献体というのは全身を提供することだとご理解下さい。

病理解剖も医学の発展に不可欠であり、要請があった場合には家族の反対がない限りご承諾いただいて結構です。その際、病理解剖終了後に正常解剖への献体ということはできませんのでご了承下さい。このような場合、後日でも結構ですので、必ず白菊会事務所までご連絡下さい。

無条件・無報酬でという献体の主旨から、大学としては会員に特別の扱いをすることはできません。

ご家族の同意に基づき最寄りの大学に連絡し、献体を受け入れてもらえるかお願いをしてみることもできます。ただし、献体が過剰になっている大学もあるとのことですので、ご希望に添えない場合もあるかと思います。

医師の会員も少なからずおられることをご承知下さい。また、生前は入会しておられなくても、死後に病因究明のため病理解剖に供されるかたは多数おられます。いずれにしても白菊会の主旨は、自分がお役に立ちたいという自発的意思に基づくもので、他人のことを批判するのは本旨に反するように思われます。

白菊会では毎年6月に、そのような目的で総会を開催しています。

近年、国や関係機関の理解も深まり、献体について広く多くの方々に認知していただけるようになり、献体登録者も増加の一途をたどっていますが、同時に平均寿命が伸び社会の高齢化も進んでいます。お若いかたであれば、臓器移植や骨髄バンクなど、医学に貢献できる道がいろいろありますが、満70歳を越えますとなかなかそういう訳にもまいりません。(角膜移植は年齢不問)その点、献体は臓器移植などと異なり、何歳になられても十分医学に貢献できる行為であることから、医学への貢献の道が狭くなった高齢の方々を優先的にお預かりするため、満70歳以上とさせていただいています。

これは、献体していただいたご遺体を解剖学の教育と研究のみならず、外科系医師の手術手技の鍛錬などにも使わせていただくというものです。できるだけ生体に近い状態が必要なことから、死後、24時間以内に献体されたかたが対象となり、この場合、防腐処置をせず冷凍保存と致します。故人の生前の意思確認とご遺族の承諾が必要となりますが、希望したからといって、必ずこの対象になるというものでもありません。献体していただいた時の諸般の事情から、その扱いは大学に一任させていただきます。(これを行なっているのは、全国で札幌医大だけです。)
白菊会入会申込の際、「医師の研修並びに研究に関する同意書」によって、ご本人のお考えをお知らせいただいています。