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抄読会要旨

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2021年

2021年1月7日 担当 苗代

Trial of Anifrolumab in Active Systemic Lupus Erythematosus. Eric F. Morand, et al. N Engl J Med 2020; 382:211-221
標準治療を受けている中等度から重度の全身性エリテマトーデス患者を対象にI 型インターフェロン受容体サブユニット1に対するヒトモノクローナル抗体アニフロルマブ(anifrolumab)の奏功性を評価した。 先行する第3相試験(TULIP-Ⅰ)では主要エンドポイント(SRI4で疾患活動性の低下を測定しanifrolumabの奏効性を評価) に有意な影響を及ぼさなかったが、 今回の第3相試験(TULIP-Ⅱ)では,疾患活動性の低下をBritish Isles Lupus Assessment Group based Composite Lupus Assessment(BICLA)指標に基づいて52週間測定した。 その結果、、プラセボ投与群で奏効が認められた患者は31.5%であったのに対し、anifrolumab投与群では47.8%であり、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある疾患活動性の低下を示し、主要評価項目を達成した。 また、TULIP-Ⅱ試験では、複数の副次評価項目においても統計学的に有意な差異が認められた。 経口コルチコステロイド10mg/日以上を投与されたanifrolumab投与群の患者の51.5%が2.5㎎/日以上の投与量を減らすことができたのに対し、プラセボ投与群では30.2%にとどまった。 さらに、中等度から重度の皮膚疾患を伴う患者群における症状の改善に関しては、測定基準とされた12週目で皮膚症状の改善が認められたのはanifrolumab投与群では49%だったのに対して、プラセボ投与群では25%だった。

2021年1月14日 担当 菅原

RNA Identification of PRIME Cells Predicting Rheumatoid Arthritis Flares. Orange DE, et al. N Eng J Med. 2020 Jul 16;383(3):218-228
関節リウマチ(RA)患者の疾患活動性の改善と再燃に関係する分子生物学的な機序に関して、これまで明確な見解は無かった。 本研究では患者自身で継続的に指先から数滴の採血を行い、検体を研究機関に輸送してもらうプロトコールを樹立し、RAの疾患再燃前後の血液検体を用いて発現が変動する遺伝子をRNAシークエンスで解析し、 RA患者の滑膜細胞のシングルセルRNAシークエンスのデータと比較した。解析の結果、RA再燃1-2週前の患者血球中ではB細胞の活性化に関与する遺伝子群と、 細胞外組織形成や軟骨・筋骨格系の形成等に関与する遺伝子群の発現が上昇していたが、再燃後はこれら遺伝子群の発現が低下していた。 また後者の遺伝子群は滑膜線維芽細胞のシングルセル解析でも発現レベルの上昇が認められたうえ、再燃前の患者血液中で滑膜線維芽細胞と同様の表面抗原パターンを有する細胞を抽出し、 滑膜線維芽細胞と共通で発現が認められた遺伝子の変動の推移を時系列で確認すると、RNAシークエンスの解析に一致して再燃前の発現上昇と再燃後の発現低下を認めた。 研究者らはこの血液中の細胞を前炎症性間葉系(PRIME)細胞と名付け、RA患者の再燃前に血中のB細胞により活性化を受け、患者の滑膜細胞中に移動するモデルが示唆された。

2021年1月21日 担当 赤澤

Thermal characteristics of rheumatoid feet in remission: Baseline data. Alfred Gatt, et al. PLoS ONE 2020;15(12)
これまで活動性RA患者の足の特徴的なサーモグラフィパターンについての研究についての報告はあるが、寛解期のRA患者と健常者のサーモグラフィを比較した報告はない。 そこで、除外基準(足の熱放射率に影響を与えうる疾患患者、喫煙歴あり、疾患活動度が中等度以上)を満たさない、臨床的・超音波検査で滑膜炎がないRA患者32名と健常者51名について、 足底部のforefootとheel領域それぞれについて、サーモグラフィにて温度を測定した。その結果、RA患者は健常者に比べ優位に足底の温度が有意に高いことが明らかとなった。 また分散分析によって、RA患者のforefoot領域中の各部位、heel領域中の各部位(それぞれlateral、central、medial)で有意な温度差を認めなかった。 サーモグラフィはコストや時間、専門性などの面においても簡便であり、非侵襲的であることから、今後、更なる研究の基礎となると同時に、RA患者自身が自己管理の一手段として利用できる可能性があるかもしれない。

2021年2月18日 担当 豊見山

Quantitative MRI adds to neuropsychiatric lupus diagnostics. Ramirez GA, et al. Rheumatology 2020 (e-pub ahead of print)
SLEではMRIにて脳白質病変が頻繁に認められるが,その診断的意義は不明である. 本研究では,白質病変の定量化がNPSLEの診断に寄与するかを検討した. SLE患者32人と健常者32人の脳を3T MRI装置を用いてDual Echo法および3DT1強調シーケンスにて撮像し,T2-hyperintense lesion volume (T2LV),number (T2LN)およびprobability map (T2LPM)を導出した. 解析の結果,T2LVはSLE患者が健常者よりも高く(P < 0.001),NPSLE患者が他のSLE患者よりも高かった(P = 0.006). T2LNもNPSLE患者では他のSLE患者と比較して高かった(P = 0.003). T2LPMではSLE患者において脳梁膨大部,右上縦束,右放線冠に病変が存在する確率が高いことが示された. また,T2LV≧0.423 cm3またはT2LN≧12でカットオフを設定すると,臨床医の印象でNPSLEの可能性があるとされた患者の分類が改善された. 以上より,脳白質病変の定量化は,NPSLEの診断に役立つと結論付けられた.

2021年3月11日 担当 永幡

IgG4-related disease: an update on pathophysiology and implications for clinical care. Perugino CA et al. Nat Rev Rheumatol 2020 16(12):702-714
IgG4関連疾患におけるsteroid sparing agentは未だ定まっていない。 今回のJCでは、論文中の治療薬の部分を取り上げた。これまで使用されてきた古典的な免疫抑制薬からRTXまでのエビデンスを総括した。 現在CD19抗体など主にΒ細胞(形質芽細胞)を治療標的としての治験が予定されるとともに、今後、多発性骨髄腫領域の薬剤も治療薬として利用される可能性がある。

2021年3月18日 担当 高橋

Progressive interstitial lung disease in patients with systemic sclerosis-associated interstitial lung disease in the EUSTAR data base. Hoffmann-Vold A-M et al. Ann Rheum Dis. 80(2):219-227
目的 SSc-ILD(強皮症関連間質性肺病変)の適切な早期治療介入にあたって,その経過・リスク因子・予後を理解する必要があり,EUSTARデータベースを用い,実態を明らかにした.
対象・方法 SSc分類基準(2013)を充足する18歳以上,画像的にILDが確認,baselineと12ヶ月後のFVCなどが記録されている826例.エントリー時点で先行する12ヶ月間のFVC変化で4群に分類:高度進行群(10%<の低下),中等度進行群(5-10%の低下),安定群(5%未満の低下・改善),改善群(5%以上).その後5年間のFVC変化から,5群に分類:最大低下群(20%<),高度低下群(10%<で20%以下),中等度低下群(5-10%),安定群(5%未満の低下・改善),改善群(5%以上).
結果 ①エントリー時点:高度進行群が12%,中等度進行群が15%,安定群が48%,改善群が25%.FVC,逆食症状,MRSSがリスク因子.自己抗体や病型,免疫抑制治療は相関なし.②ILDの経過:最大低下群は9%,高度低下群は14%,中等度低下群は14%,安定群は39%,改善群は24%.連続的に進行性に低下することはなく,1年ごとの評価では進行→安定の経過をとることが多い.一方,安定→進行のパターンは約30%,全く進行期がないのは178例(33%)のみ.リスク因子として男性,逆食症状,MRSS高値,免疫抑制療法は相関なし.
考察 登録前12ヶ月に進行を示すSSc-ILDは27%,その後の5年間では23〜27%でさらに進行がみられた.進行パターンは多くの例で一定していない.緩徐進行例は臨床の現場では見過ごされやすく,5〜10%のFVC変化も臨床的には意味があり,注意すべきである.従って,SSc-ILDは緊密にモニタする必要がある.皮膚硬化,男性,逆食がFVC低下の最大のリスクとして抽出された.これらリスクを有する群への早期治療が有用かどうかは近い将来,RCTを行う必要がある.

2021年4月1日 担当 鈴木

ACE inhibitors in SSc patients display a risk factor for scleroderma renal crisis—a EUSTAR analysis. Bütikofer L, et al. Arthritis Res Ther. 2020 22:59
強皮症腎クリーゼ (SRC) の予後はACE阻害薬 (ACEi) 治療によって大幅に改善したが、一方で、SRC発症前にACEiを開始した患者は予後不良と報告されている。高血圧もSRCのリスク因子であり、全身性強皮症 (SSc) 患者の降圧薬の選択が問題となる。本研究では、EUSTARコホートにおけるSRCと降圧薬、グルココルチコイド (GC) との関連について検討した。SRC発症率は3.72/ 1000人年で、SRC累積発症率は高血圧・ACEi投与で高く、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB) 投与では低い傾向にあった。 ACEiと高血圧はSRCの独立したリスク因子であり、カルシウム拮抗薬、ARB、エンドセリン受容体拮抗薬、GC(主にPSL ≦15 mg/日)はSRC発症と関連しなかった。 ACEiはSRC治療の第一選択薬であるが、高血圧を有するSSc患者に対するACEi投与はSRC発症のリスク因子となる。ARBは安全な使用できる可能性が示されたが、SSc患者の降圧治療の安全性についてさらに検討する必要がある。

2021年4月8日 担当 神田

Paroxetine-mediated GRK2 inhibition is a disease-modifying treatment for osteoarthritis. Carlson EL, et al. Sci Transl Med 2021 10;13(580):eaau8491
変形性関節症(OA)は、進行性の軟骨変性を特徴とする関節疾患であり、疾患修飾療法(disease-modifying anti osteoarthritis drugs; DMAOADs)は開発できていなかった。 OAは病的軟骨細胞肥大(CH)によって引き起こされることがわかっていたが、その分子メカニズムはよくわかっていなかった。 本研究では、OAの罹患軟骨組織においてGタンパク質共役型受容体キナーゼ2(GRK2)の発現亢進とそれに伴う、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)シグナル伝達の異常によりOAが進行することを示した。 また、ノックアウトマウスおよび阻害薬を用いた検討によりGRK2異常を改善することによりCHを防ぎ、OAの進行を抑制し、軟骨の再生を促進することを示し、OAの病態におけるGRK2異常の重要性を示した。 特出すべき点は、すでにうつ病などに承認されているパロキセチンがGRK2選択的阻害作用を持つことに注目しその治療応用の可能性について言及し、パロキセチンがDMAOADsの候補として挙げられたことである。

2021年4月15日 担当 苗代

Somatic Mutations in UBA1 and Severe Adult-Onset Autoinflammatory Disease. Beck DB, et al. NEJM 2020 383;27
蛋白質のユビキチン化を開始させるユビキチン活性化酵素E1をコードするUBA1遺伝子に体細胞遺伝子変異(UBA1遺伝子のメチオニン-41 [p.Met41]ミスセンス変異)を認める男性25人を同定した。 これらの人々には、成人後期発症の治療抵抗性の炎症症候群。骨髄穿刺で空胞(vacuoles)像を認め、発熱・血球減少・骨髄異形成・皮疹・軟骨炎・血管炎などの自己炎症性の症状を伴い、 新たな自己炎症性疾患であるVEXAS症候群(vacuoles, E1 enzyme, X-linked, autoinflammatory, somatic syndrome/空胞、E1 酵素、X 連鎖、自己炎症性、体細胞症候群):と命名した。

2021年5月6日 担当 菅原

Targeting Jak-Stat Signaling in Experimental Pulmonary Hypertension Yerabolu D, et al. Am J Respir Cell Mo Biol. 2021:64(1);100-114.
肺高血圧症(PAH)では、肺血管構造の破綻を来す進行性の構造リモデリングにより肺血管抵抗の増大と肺動脈圧の上昇を生じ、最終的に右心不全や死亡に至る。
肺血管細胞の異常シグナルの詳細を分子学的に解明する事で、新しい治療戦略の開発の基礎となる。
著者らはペプチドベースのキナーゼ活動性アッセイを用いて、潜在的に新しい治療ターゲットとなりうる、制御機構の破綻したキナーゼの解明を目的に実験を行った。
まず特発性PAH(iPAH)患者と健常コントロール(HCs)の肺動脈平滑筋細胞(HPASMCs)を対象に、144種類のペプチド基質に対するチロシンキナーゼ依存性リン酸化アッセイを行い、
チロシンキナーゼ活性の変化を予測した。その結果、iPAH患者のHPASMCsではHCsに比べ、JAK2の異常活性化と発現上昇を認めた。
アメリカ食品医薬品局で承認済のJAK1及びJAK2インヒビターであるruxolitinibを用いたIn vitroでの検証では、HCsコントロールとiPAH両方のHPASMCsでIL-6誘導性の細胞増殖や細胞の移行性が
用量依存性に減少した。In vivoでの検証では実験的に作成した2つのPAHマウスモデルにruxolitinibを投与後、用量依存性かつ循環器系への副作用なく肺動脈圧の上昇、右室肥大の軽減、及び心係数の改善を認めた。
これらの検討により、ruxolitinibはJAK2-STAT3経路の阻害によってPAHにおける肺血管リモデリングを軽減させ、新たな治療選択となりえると考えられた。

2021年5月13日 担当 永幡

Pathogenic UBA1 variants associated with VEXAS syndrome in Japanese patients with relapsing polychondritis. Tsuchida N, et al. Ann Rheum Dis 2021 0:1–5
背景:昨年のNEJMによりVEXASの60%が再発性多発軟骨炎(RP)を満たすことは報告された。逆にVEXASで見られるUBA1遺伝子変異がRPにもあるかどうかは未知だった
目的:UBA1変異を有するRPの日本人患者の詳細な遺伝的および臨床的特徴を定義すること
P RP n=14人
 method:13人で末梢血、骨髄組織のサンガーシークエンス、ddPCR、PNAクランプPCRでUBA1変異をスクリーニング
E UBA1(p.Met41)変異あり n=9人(サンガー法8人+ddPCR法1人)
C UBA1 (p.Met41)変異なし n=5人
O 臨床的特徴
→ UBA1変異ありの8人(男性患者全体の73%)では皮膚病変が多かった
+ddPCR法で女性1人で低頻度(0.14%)の体細胞変異を検出できた
コメント:
横市大からの報告
VEXASで見られたUBA1遺伝子変異は今回のRPのコホートでは64%にみられた
高齢男性で皮膚病変(紅斑、好中球性皮疹)を伴うRPでは背景にVEXASの可能性を想起してよいかもしれない
この女性のケース程度の低頻度な変異なら健常者でもありうるのか

2021年7月1日 担当 神田

Aberrantly glycosylated IgG elicits pathogenic signaling in podocytes and signifies lupus nephritis. Bhargava R, et al. JCI insights 2021.
活動性ループス腎炎患者のIgGはポドサイトにおけるcalcium/calmodulin kinse IV (CaMK4)の発現を上昇させ、ポドサイトの運動性を亢進させる。
このメカニズムはIgGのN末端フコシル化糖鎖修飾により制御されていることを示した。
しかしながら、活動性ループス腎炎患者のIgGにおいてフコシル化糖鎖修飾の増加は認められなかった。
活動性ループス腎炎患者のIgGの糖鎖修飾では非ガラクトシルフコース鎖が増加しており、ガラクトシルフコース鎖は減少していた。
このことからN末端フコース鎖だけでなくガラクトシル基の有無がCaMK4の発現亢進に影響を与えることが推測された。
実際、非ガラクトシル化したIgGではCaMK4の発現を亢進させネフリンの発現を亢進させるがガラクトシルIgGではその作用が認められなかった。
また、CaMK4はNFkBp65を介してネフリンの発現を制御していた。IgGの糖鎖修飾の違いがポドサイト障害に影響を与えるという点で興味深い着眼点であること、またCaMK4の発現量はループス腎炎の活動性と相関し尿中での測定も可能であることから、今後治療のマーカーとしても利用できる可能性が出てきている。

2021年8月12日 担当 菅原

Metformin repositioning in rheumatoid arthritis Matsuoka Y, et al Clin Exp Rheumatol. 2021:39(4);763-768.
目的:メトホルミンは糖尿病の治療薬として知られている。近年、メトホルミンの免疫系への作用によって自己免疫疾患や悪性疾患が改善する可能性が示唆されている。
コラーゲン誘導関節炎モデルマウスにおけるメトホルミンの治療効果は報告されているが、ヒトの関節リウマチ(RA)におけるメトホルミンの治療効果はまだ分かっていない。
そこで実験者らはRAの病態におけるメトホルミンの進行抑制の効果をin vitroで検証する事とした。
方法:まず破骨細胞の分化をメトホルミンの有無別に、洒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ染色、破骨細胞に特異的な酵素の発現解析、骨吸収アッセイで評価した。
次にヒト線維芽細胞様滑膜細胞セルラインであるMH7Aを用いて、TNF-αで刺激後の前炎症性サイトカインやプロテアーゼ、成長因子の遺伝子発現をメトホルミンの有無別に測定する事で、
TNF-α刺激に対するメトホルミンの潜在的な修飾作用を評価した。更に実験者らはメトホルミンの有無別に、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)における血管新生能を管形成アッセイによって評価した。
結果:メトホルミン存在下では破骨細胞の分化は抑制され、破骨細胞に特異的な遺伝子発現も低下した。MH7Aにおいてはメトホルミン存在下でTNF-αで誘導される前炎症性サイトカインやプロテアーゼ、
成長因子の遺伝子発現は低下した。加えてHUVECで誘導されるネットワーク状の管構造はメトホルミン存在下で阻害された。
結論:得られた結果からは、メトホルミンが関節の炎症・破壊などのRAの病態を改善させ、メトホルミンが潜在的なRA治療薬として活用される可能性が示唆された。

2021年8月19日 担当 永幡

    
Efficacy and safety of voclosporin versus placebo for lupus nephritis (AURORA 1): a double-blind, randomised, multicentre, placebo-controlled, phase 3 trial. Brad H Rovin, et al. Lancet. 2021 May 29;397(10289):2070-2080.
CQ:新規カルシニューリン阻害剤であるボクロスポリンは、ループス腎炎患者の1年間での腎機能改善を安全に達成できるか?
P SLE DBRCT phase3(AURORA1), 2017.4-2019.10
27か国の142病院(North and Latin America, Europe, South Africa, Asia(バングラデシュ、スリランカは除いている)),
ACR/EULAR2019分類基準でSLE/LNと診断され、2年以内にclassIII、IV、V(単独または併存)を示した腎生検の患者が適格
I MMF(≧2g/day)+急速漸減する低用量経口ステロイド+経口ボクロスポリン(23.7 mg/day)
C MMF(≧2g/day)+急速漸減する低用量経口ステロイド+プラセボ
O Primary:52wks complete renal response(U-Pro/cre(UPCR)≦0.5mg/mg、eGFR≥60mL/minかつベースラインからの
GFR低下≦20、レスキュー薬の投与なし、3日以上のPSL ≧10mg/day使用なし)
Secondary: UPCR 0.5g/dayに達するまでの時間、24wks,52wksでのpartial response(UPCR 50%以上減少)
有害事象は、ボクロスポリンまたはプラセボの初回投与後から最終投与から30日以内に発生したものをカウント
コメント:
Primary endpoint満たした(41% vs 23%, OR 2.65)
AURA-LNと比較して死亡例が少なくてよかった。治験国の選択は大事。
以前のどの研究よりも有意に低い累積ステロイド投与量だがSOCでもそれなりに寛解している。
ボクロスポリンはUSAでは既に認可されているようだが非常に高価(1T=80ドル弱,3T/day)でMMFへの上乗せ効果(15%程度)が費用対効果に見合うかは微妙。
タクロリムスでも十分な可能性も。

2021年9月16日 担当 高橋

    
Natural developing process of immunoglobulin G4-related sialadenitis after submandibular gland excision: a retrospective cohort study. Zhang KF et al. Clin Rheumatol 2021: 40 (12), 4969-4976.
IgG4関連疾患(IgG4-RD)における顎下腺切除の意義を明らかにするため,1955〜2012年にかけてPeking大学にて顎下腺切除を受けた慢性唾液腺炎症例の経過・唾液腺機能などを解析した.慢性唾液腺炎1043例中,HEでIgG4-RD相当110例,免疫染色追加でIgG4-RD相当 83例(definite 28/probable 55)を抽出.顎下腺罹患は片側 56例(A群:62.9%),両側 33例(B群:37.1%),切除はA群は全例片側,B群は25例が両側,8例が片側切除.追跡しえた83例(93.3%),フォロー期間の中央値108ヶ月.再燃は45例(54.2%),切除後,中央値 18ヶ月で発生した.カプランマイヤーから72ヶ月以内に56.9%でCPが生じることが示された.腺外病変ありは腺外病変なしより再燃率が高かった(HR 2.108),年間CP率は腺外病変ありで20.7%,なしで14.1%であった. 以上から,唾液腺切除は,切除後の再燃率が高く,不可逆的な臓器障害(口渇)を生じるため,治療手段としては選択するべきではない.腺外病変を有する唾液腺炎では高率な再発がみられることを示した.唾液腺炎はIgG4-RDの部分症であり,切除のみよりも全身性の免疫治療でコントロールを図るべきである.

2021年11月11日 担当 苗代

Efficacy and Safety of Upadacitinib vs Dupilumab in Adults With Moderate-to-Severe Atopic Dermatitis A Randomized Clinical Trial Andrew Blauvelt, MD, MBA; Henrique D. Teixeira, PhD, MBA; Eric L. Simpson, MD, MCR; Antonio Costanzo, MD; Marjolein De Bruin-Weller, MD; Sebastien Barbarot, MD, PhD; Vimal H. Prajapati, MD; Peter Lio, MD; Xiaofei Hu, PhD; Tianshuang Wu, PhD; John Liu, MD, MS; Barry Ladizinski, MD, MPH, MBA; Alvina D. Chu, MD; Kilian Eyerich, MD 2021/8/4 JAMA Dermatology
要旨
経口JAK阻害薬ウパダシチニブとモノクローナル抗体デュピルマブの有効性と安全性を評価することを目的とし、中等症から重症のアトピー性皮膚炎の成人患者692例を対象に第IIIb相、多施設共同、無作為化、二重盲検、ダブルダミー、実薬対照試験をおこなった。患者は無作為に割り付けられ、348人(平均年齢36.6歳、標準偏差14.6歳、男性が52.6%)をウパダシチニブに、344人(36.9歳、14.1歳、56.4%が男性)をデュピルマブに割り付けそれぞれ24週間投与された。それぞれ316人(90.8%)と319人(92.7%)が治療を完遂した。16週時点で、ウパダシチニブ群の247人(71.0%)と、デュピルマブ群の210人(61.1%)が、EASI75を達成していた。効果の発現の早さにもウパダシチニブの優越性がみられ、1週後のNRSのベースラインからの変化率は、31.4%と8.8%(P<0.001)だった。NRSのベースラインからの変化率は、4週時点で59.5%と31.7%(P<0.001)で、両群の差は16週後まで維持され、66.9%と49.0%だった。16週時点で、NRSのベースラインからの改善が、臨床的に意義のある4ポイント以上になっていた患者の割合は、55.3%と35.7%だった(P<0.001)。2週後のEASI75達成率は46.7%と17.4%(P<0.001)、16週時点のEASI90達成率は60.6%と38.7%(P<0.001)、EASI100達成率は27.9%と7.6%(P<0.001)だった。 これらの結果から中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者に対する16週間の治療の効果は、デュピルマブに比べウパダシニチブの方が高いことがあきらかになった。

2021年11月18日 担当 菅原

Insular cortex neurons encode and retrieve specific immune responses. Tamar Koren and Others
要約
脳が末梢の免疫を制御していることを示す多くの報告が出ているが、脳が免疫系の状態をどのように表現しているのかは、まだ明らかになっていない。 実験者らは脳の島皮質が免疫に関連する情報を保存している可能性について検証した。マウスの活性依存性細胞標識法を用いて、デキストラン硫酸ナトリウム誘発大腸炎と ザイモサン誘発腹膜炎の2つの異なる炎症状態で活性化する神経細胞集団を島皮質に確認した。この神経細胞集団を化学的に再活性化することで、2つの炎症状態を再現することができた。 本研究によって脳が特定の免疫反応を記憶し取り出すことができ、古典的な免疫学的記憶の概念を炎症情報の神経細胞の表現にまで拡張する事ができる事が示唆された。
    

2022年

2022年3月24日 担当 苗代

Phase 2 Trial of Iberdomide in Systemic Lupus Erythematosus. J.T. Merrill, et al.
要約
著者らはセレブロン調節薬イベルドミド(iberdomide)が、白血球の発生と自己免疫に影響あたえる転写因子であるイカロスとアイオロスの分解を促進することから全身性エリテマトーデス(SLE)の治療薬としての評価を行った。 この第 2 相試験では、対象患者288名に標準治療薬に加え、イベルドミドを 0.45 mg、0.30 mg、0.15 mg のいずれかの用量で 1 日 1 回、24 週間経口投与する 3 群と、プラセボを投与する群に 2:2:1:2 の割合で無作為に割り付けた。主要エンドポイントは、24 週時点における SLE 反応指標(SRI-4)での反応とした。24 週の時点で SRI-4 反応が認められた患者の割合は、イベルドミド 0.45 mg 群 54%、0.30 mg 群 40%、0.15 mg 群 48%、プラセボ群 35%であり(イベルドミド 0.45 mg 群とプラセボ群との補正後の差 19.4 パーセントポイント,95%信頼区間 4.1~33.4,P=0.01)イベルドミドの 0.45 mg より低い用量群とプラセボ群間に有意差は認められなかった。イベルドミドに関連する有害事象として、尿路感染症、上気道感染症、好中球減少などがあった。 SLE 患者を対象とした今回の第2相試験では、イベルドミド 0.45 mg の投与により、SRI-4 反応が認められた患者の割合はプラセボ投与よりも高くなった。SLE に対するイベルドミドの有効性と安全性を明らかにするためには、より大規模かつ長期の試験でのデータが必要と考えられた。

2022年4月13日 担当 菅原

Elevations in adipocytokines and mortality in rheumatoid arthritis. Joshua F Baker, et al.
要約
Objective: 本研究では、末梢血中のアディポネクチンおよびレプチンがRA患者における死亡率の上昇と関連するかどうかを評価した。
Methods: Veterans Affairs RA Registryに登録された成人RA患者を対象とした。バンク血清を用いて多項目分析パネルの一部としてアディポカインと炎症性サイトカインを測定した。
死亡日および死因はCorporate Data WarehouseおよびNational Death Indexを参照した。共変量は医療記録、生体試料保管庫、レジストリのデータベースを参照した。 多変量Cox比例ハザードモデルによりバイオマーカーと、全死亡及び特定の原因による死亡との関連を評価した。
Results: 2583人の患者を対象とした。アディポネクチン値が高いほど高齢、男性、白人、BMI低値、自己抗体陽性、骨破壊、長期の罹病期間、プレドニゾロン内服、骨粗鬆症と関連していた。 アディポネクチン値の高さは炎症性サイトカイン濃度の高さとも関連したが、登録時の疾患活動性とは関連しなかった。レプチンは主にBMIおよび合併症の多さと関連していた。アディポネクチンの最大(第4)四分位(vs最小(第1)四分位)は共変量を補正した後、高い全死亡率[ハザード比(HR):1.46(95%CI)、1.93)、P=0.009]および高い心血管死亡率[HR:1.85(95%CI:1.24、2.75)、P=0.003]と関連した。レプチン高値は全死因死亡率およびがん死亡率の高さとも関連していた。
Conclusion: アディポカインの上昇はRAにおいて年齢、BMI、合併症、重篤な他疾患の合併と関連しており、独立した早期死亡の予測因子だった。アディポネクチンと炎症性サイトカインの関連は慢性の不顕性炎症が代謝の変化を促進してアディポカインの上昇を促し、健康上の不利益をもたらすという仮説を支持するものであった。

2022年4月21日 担当 永幡

Efficacy and safety of mavrilimumab in giant cell arteritis: a phase 2, randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Cid MC, et al. Ann Rheum Dis 2022;81:653–661.
目的 26週間のグルココルチコイドの漸減下でのマブリリムマブのGCAフレアのリスク低減を検討する
背景
TCZでも年に3割弱は再発し、副作用で継続困難例もいる。GCAにおいてCD4+Th17を遮断するTCZ以外にCD4+Th1やマクロファージなどを介するGM-CSFの経路の遮断が注目されてきた。 P GCA(n=70) 50~85歳の新規発症または再発・難治性で6週間以内に疾患が活動性 ベースライン時にプレドニゾンを1日20~60mgの範囲で寛解状態にあること 26週間の治療期間の後試験薬を中止し、12週間のウォッシュアウト期間中にグルココルチコイドを含む標準治療に移行
I  マブリムマブ150mg隔週皮下+26週間のプレドニゾン漸減(GIACTAに準じて) n=40
C  プラセボ+26週間のプレドニゾン漸減 n=26
O 
Primary:26週目までのフレア発生率
 (フレア:ESR(≧30mm/時間)および/またはCRP(≧1mg/dL)の上昇に加え、明らかな頭蓋内外症状または新規・増悪の発生) Secondary:フレアまでの時間と26週目までの持続的寛解率、治療群別のプレドニゾン累積量、38週までの安全性(特に肺胞蛋白症) → プラセボ群における初回フレアまでの中央値は25.1wks、マブリリムマブ群では、フレアまでの期間の中央値が26週間以上 マブリリムマブは、プラセボに対してフレアリスクを低減(HR, 0.38; 95%CI 0.15 to 0.92; p=0.026) 26週目における持続的寛解(マブリリムマブ群83.2%、プラセボ群49.9%(p=0.0038)) 副作用も目立ったものはなし
議論
GIACTAのTCZqw 26wksとほぼ同等の寛解率で比較的良好な安全性で今後TCZに次ぐ代替薬の候補になりうるのでは プラセボ群のフレアが少ないのはなぜ? GIACTAと比較しても今回のプラセボ群では再発例の割合はやや多いくらい RAを対象とした臨床試験で肺胞蛋白症の発生はあったのか→RAを対象とした2.5年の安全性の検討では一例もなし(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29361199/)

2022年5月21日 担当 高橋

まとめ    

2022年3月24日 担当 苗代

Two Phase 3 Trials of Baricitinib for Alopecia Areata. Brett King, et al. NEJM  May 5, 2022 vol. 386 no. 18
要約
円形脱毛症は、頭髪、まゆ毛、まつ毛および全身の体毛の急速な脱毛を特徴とする自己免疫疾患と考えられる。治療法は限定的で、確実な効果を示すものはない。 米国・イェール大学医学大学院のBrett Kingらは、重症円形脱毛症(頭部の半分以上の脱毛)の治療におけるヤヌスキナーゼ阻害薬であるバリシチニブの有用性を検討した。 3対2対2の割合で、バリシチニブ4mg、2mg、プラセボ投与群にランダムに割付けて1日1回の投与を36週間継続し、脱毛の範囲が20%以下になっていた患者の割合を評価した結果、 バリシチニブ4mg群では38.8%、2mg群は22.8%、プラセボ群は6.2%(BRAVE-AA1試験)であり、プラセボと比較して、臨床的に意義のある毛髪再生を達成した患者の割合が高いことを示した。