治療方法
概略
手術回数 | 2回(1回目:肋軟骨移植術 2回目:耳介挙上術、1回目と2回目の手術間隔は半年以上、ともに全身麻酔)が基本ですが、状態によっては3回になる場合もあります。 |
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手術時期 | 小学5年生以降 体格、軟骨の量、成熟度などの点から本来は中学生、ないし高校生位での手術がベストです。 しかし、学校の影響を考慮してぎりぎり下げられる年齢が小学校5年生ということであり、肋軟骨を使う限りはこれ以上早い手術は全くお勧めできません。 より低年齢での手術では軟骨量が不足し十分な形態を作れないだけでなく、手術後軟骨が容易に変形・吸収を生じ、せっかく手術をした意味がなくなってしまいます。 また、20歳以降肋軟骨は徐々に硬く脆くなっていくため、綺麗な耳の輪郭を作るのが困難になっていきます。 手術ができないわけではありませんが、年齢とともに精巧度は落ちていきますので、遅くとも20歳前までの手術をお勧めします。 |
手術時間 | 1回目:3~4時間(生え際が低い患者では4~5時間位) 2回目:2~3時間 |
入院期間 | 1回目、2回目どちらも3~4週間 |
手術前の剃髪 | 1回目、2回目共に手術前日に耳介周囲を約2cm程度剃髪します。 その周囲の毛髪はそのまま残せますので、退院時は問題なく剃髪部分を隠せます。 |
1.耳垂型小耳症
耳垂(耳たぶ)分の耳がある小耳症のことです。
小さな耳は耳たぶとして利用できます。
小さな耳は耳たぶとして利用できます。
肋軟骨移植術(1回目の手術)
手順1
手術する耳の左右にかかわらず、通常胸の右側の第6〜8軟骨を利用採取します。
手順2
採取した軟骨を削ったり組み合わせたりして(ステンレスのワイヤーにより固定します)耳介の形態にします。
手順3
耳介形成予定部位の皮下を剥離して、作った軟骨フレームを皮下に埋め込みます。
元々ある小さな耳は、位置を動かして耳たぶとして利用します。
元々ある小さな耳は、位置を動かして耳たぶとして利用します。
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手術終了時
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手術後3ヶ月
耳介挙上術(2回目の手術)
手順1
耳介周囲を切開して軟骨下で剥離し、耳を持ち上げます。
手順2
下腹部から皮膚を採取し、耳介後面に移植します。
また、胸部に埋めてあった軟骨(肋軟骨移植時に余った軟骨片を集めて、胸部の皮下に埋めてあります)を取りだし(肋軟骨移植時の切開線を瑠要します)、耳介の立ち具合が左右対称になるよう耳介の後面に移植します。
また、胸部に埋めてあった軟骨(肋軟骨移植時に余った軟骨片を集めて、胸部の皮下に埋めてあります)を取りだし(肋軟骨移植時の切開線を瑠要します)、耳介の立ち具合が左右対称になるよう耳介の後面に移植します。
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手術終了時
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手術終了時
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胸とお腹の傷
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術後1年の状態
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術後1年の状態
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術後2年の胸とお腹の傷
耳垂型小耳症の治療例
患者1:11歳男児 右耳垂型小耳症
患者2:11歳女児 右耳垂型小耳症
2.耳甲介型小耳症
耳介の下半分、特にイヤホンを入れるへこみ部分(耳甲介)を有するタイプの小耳症です。
下半分の耳はそのまま利用して耳を作ります。
下半分の耳はそのまま利用して耳を作ります。
肋軟骨移植術(1回目の手術)
基本的な術式は耳垂型小耳症(耳垂型小耳症はこちら)と同じですが、使用する肋軟骨フレームは形が異なり、使用する量も少なくなります。
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移植する肋軟骨フレーム
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手術終了時
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術後半年
耳介挙上術(2回目の手術)
耳垂型小耳症と同様の方法で行います。
耳垂型小耳症はこちら
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手術終了時の状態
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手術終了時の状態
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手術後2年の状態
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手術後2年の状態
耳甲介型小耳症の治療例
患者1:18歳女児 右耳甲介型小耳症
患者2:13歳女児 右耳甲介型小耳症
3.生え際の低い小耳症
小耳症の中では最も難しい手術になります。
頭髪が通常より低い位置まで生えているため、上記の耳垂型小耳症・耳甲介型小耳症の方法で耳を作ると耳に毛が生えてしまいます。
そこで、耳を作る予定の位置に重なっている頭皮は切除します。
また今ある小さな耳は位置を移動して耳垂(耳たぶ)として利用します。
作成した肋軟骨フレームを移植し、軟骨上の皮膚のない部分に対しては、頭皮下の筋膜を取り出し軟骨を包みます。
その後、反対側の耳の後ろの皮膚を採取し、それを移植します。
そこで、耳を作る予定の位置に重なっている頭皮は切除します。
また今ある小さな耳は位置を移動して耳垂(耳たぶ)として利用します。
作成した肋軟骨フレームを移植し、軟骨上の皮膚のない部分に対しては、頭皮下の筋膜を取り出し軟骨を包みます。
その後、反対側の耳の後ろの皮膚を採取し、それを移植します。
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手術前の状態
耳垂が頬部側にあり、 しかも低いのがわかります。
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耳介作成予定の場所
頭皮があるため、 この皮膚は切除します。
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作成した軟骨フレーム
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手術
小さな耳は耳垂に移動し、皮膚の不足部分は 反対側の耳の後ろから採取した皮膚を移植します。
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助軟骨移植術(1回目の手術)後
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耳介挙上術(2回目の手術)後
生え際の低い小耳症の治療例
患者1:11歳男児 生え際の低い小耳症
4.幼少時期に行える手段
基本的に積極的に行うものではありませんが、正式な手術が行えるようになるまでの間、少しでも快適な状態であるよう、最小限の耳介形成を行うものです。
就学前の3~5歳で行います。
就学前の3~5歳で行います。
倒れた耳を起こす
倒れた耳を起こして、マスクがかけられるようにします。
耳の位置を移動する
目立つ位置に耳があるため、位置を移動します。
5.再再建
他院で形成された不満足な形態の耳介に対しても、希望に応じ種々の作り直しを行っています。
部分的な修正
10歳時に他院で耳介形成術を受けましたが、耳介はゴツゴツした印象です。
これに対し、部分的に軟骨を削るなどの修正を行って形を整えました。
これに対し、部分的に軟骨を削るなどの修正を行って形を整えました。
移植された軟骨フレームの修正
9歳時に他院で耳介形成術を受けましたが、耳介は幅広く前に回転したような状態となっています。
これに対し、移植された軟骨フレームを取り出し、分解、新しく組み立てなおして移植し、2回の手術で耳介を再再建しました。
頭髪のかかっている部位は反対側の耳の後ろの皮膚を採取し移植しました。
これに対し、移植された軟骨フレームを取り出し、分解、新しく組み立てなおして移植し、2回の手術で耳介を再再建しました。
頭髪のかかっている部位は反対側の耳の後ろの皮膚を採取し移植しました。
新たな軟骨フレームを形成し耳介全体を修正
幼少時に他院で耳介形成術を受けましたが、耳介は凹凸がなく幅広い形で、毛も生えています。
これに対し移植軟骨を切除し、新たに助軟骨を採取し、軟骨フレームを作成、移植して、2回の手術で耳介を再建しました。
頭髪が生えている部分は反対側の耳の後ろの皮膚を採取し移植しました。
これに対し移植軟骨を切除し、新たに助軟骨を採取し、軟骨フレームを作成、移植して、2回の手術で耳介を再建しました。
頭髪が生えている部分は反対側の耳の後ろの皮膚を採取し移植しました。