当科の治療方法

手術の合併症

二回とも全身麻酔で行いますが、麻酔科医が常に全身状態を確認し、万全な体制で行っています。
出血自体もせいぜい30~100cc程度で、体調に影響を及ぼすものではありません。
しかし、手術は全てがトラブルなく順調に経過するとは限りません。
主な合併症として以下のことが挙げられます。
いずれも頻度としては非常に少ないものですが、万が一起こった場合にはすぐに対処が必要なことがありますので、手術を間近に控えた方は十分読んでおいてください。

術中、術直後の合併症

肋軟骨移植術(1回目の手術)

胸部
胸膜の損傷 肋軟骨と付着する胸膜が肋軟骨採取時に損傷することがまれにありますが、術中に膜の縫合をすることで、特に問題となる症状は生じません。
軟骨採取部位の疼痛 術後2〜3日は大人しくしていないと痛みが強く起こる可能性がありますが、その後はどんどん消失していき、退院時ころにはあまり気にならないところまで消失していることが殆どです。
多少残存していても、2ヶ月以内には違和感もなくなります。
耳介
皮膚の血行障害 剥がした皮膚の血流が悪化し、うっ血(紫色になる)または壊死(部分的に皮膚の一部が脱落する)などの可能性があります。
治癒が遅れ、入院期間に影響が出る可能性がありますが、耳の結果に大きな影響を与えるものではありません。
創の離開 皮膚の血流が不安定だと傷の治りが遅れたり、開いたりする可能性がありますので、術後3週間しっかりと傷を観察し、確実に治ったことを確認する必要があります。
傷の感染 頻度は非常に少ないものの、万が一耳に感染を生じた場合、最悪の場合、移植した軟骨自体を捨てざるを得なくなり、耳ができない可能性があることから、絶対に起きてほしくない合併症です。
多くは術後数日以内に生じ、せいぜい術後2週間以内であることが殆どです。
この際は臨時手術により徹底的に洗浄することで、救済できる可能性があります。
以上より、怪我の傷などとは異なり、軟骨移植では、術直後からしっかり治癒するまで常に最大限の注意を払って傷の管理をすることが重要であり、100%傷が治っていないと、耳がだめになってしまう可能性もあります。
そこで、傷の確実な治りを重視して、心配が残る場合には長めに入院して頂いています。  

耳介挙上術(2回目の手術)

胸・腹部の縫合創 多少治癒に遅れが生じる場合もありますが、特に問題なく治ります。
移植皮膚の血行障害 耳介後面の血行が安定していないと皮膚のつきが悪い可能性があります。
小範囲であれば問題ありませんが、広い範囲で起こった場合には皮膚移植を追加することがあります。

術後長期の合併症

一度しっかり傷が治ってから退院すれば、そうそうトラブルが起きるわけではありませんが、気になることがありましたら、すぐにご連絡をいただき相談する形を取っていただくことをお勧めします。  
胸部
軟骨採取部位の損傷 術後2ヶ月以内では、同部を強く打撲したり、強いからだのねじれが加わることは危険です。
これまでトラブルになった方は幸いまだいませんが、激しい運動は念のため禁止しています。
それ以降では普通の運動を行っても心配はありません。
軟骨採取部位の陥凹 軟骨採取部位は、術後凹みが出る可能性があります。
本人が苦にするほどの大きな変形にはならないことが多いですが、痩せた方や小さな体格で手術を受けた方は、より強く凹みが生じる傾向があります。
ただし、これもあくまで胸郭の形態的な問題であり、軟骨を採取したことで、その後の運動がずっと制限されたりなど機能的な問題が生じるわけではありません。
 
耳介
耳介の痛み 基本的に耳介は肋軟骨移植術(1回目の手術)直後は知覚が低下し、何ヶ月かで徐々に感覚が出てきます。
しかし、一部の方では耳がぶつかったりすると極度に痛がる方がいます。
これは、おそらく一時的な皮膚の過敏症状であることが多く、心配はいりません。
耳介挙上(2回目の手術)のあとに徐々に落ち着くことが多いようです。
耳介の皮膚炎 耳介は術後垢が多く出やすい状態が続き、時々汚れを落とさないと皮膚が炎症を起こすことがあります。
特に耳介の痛みがある場合は、なかなか怖くて耳を洗えないという方がいますが、頑張ってやっていただくことをお勧めします。
耳の腫れと赤み 退院時にはまだ耳は全体に赤みがあり、はれぼったい印象ですが、これは2〜3ヶ月で落ち着き綺麗な形になりますので心配不要です。
日によっても腫れの状態は異なりますが、通常就寝時に下にして寝ると朝腫れが強くなることがあります。
この場合、夜までには徐々に腫れが抜けてきますので心配要りません。
もし腫れが徐々に強くなったり、赤みが強くなったりしてきた場合には、その他のトラブル( 下記のワイヤーの感染の項を参照)の可能性があるので、すぐ連絡をください。
ワイヤーの感染 軟骨を組み立てるのに、細いステンレスのワイヤーを使用しています。
ワイヤーはトラブルがない限りはずっと中に埋まった状態です。傷がすっきり治って退院しても、まれに埋めてあるワイヤーで炎症を起こして、膿を持ったりすることがあります。
この場合は、部分的に赤く腫れたりしますので、すぐにワイヤーを抜去する必要がありますので、ご連絡ください(外来ですぐに抜けます)。
術直後の感染と異なり、すぐに対処すれば心配ありません。
また、長期の経過で感染を伴わず、いつの間にかワイヤーが露出していた、ということも起こりえます。
この場合緊急性はありませんので、お越しになれるタイミングで受診をご計画ください。
軟骨の変形 一時的に耳を下にして寝たり、肘がぶつかったというような程度ではそうそう形が崩れたりすることはありませんが、小耳症の患者の中には、小耳症の側の耳を下にして寝るくせの方がいます。
慢性的にいつも耳が枕等に圧迫されつづけると、耳介の外周が歪んでくる可能性があるので、手術前からできるかぎり就寝時の姿勢で逆向きに寝るようくせをつけることが理想です。
軟骨の吸収 術直後は良好な形態でも、数年、10年と長期間の間に若干の軟骨の凸凹が生じる可能性があります。
特に低年齢で手術をした場合、傷の治りが遅れた場合などは、そういうことが起こる可能性があります。
基本的には問題ありませんが、もし外観が気になる方は、後日、多くは局所麻酔で修正することが可能です。
起こした耳が寝てくる せっかく二回目の手術で反対と同じように耳を立ち上げても、術後徐々に耳が寝てくる方がいます。
これは退院時に説明する手術後の管理をしっかり行うことがまず重要ですが、体質的に移植した皮膚のひきつれが強く起こる方もいます。
どうしても不便が生じる場合には、後日皮膚移植を追加して再度挙上することができます。
ケロイド 体質的に傷が盛り上がる体質の方がいます。
特に耳たぶ、または移植皮膚の周囲などで起こる場合があります。
これに対しては、早目から盛り上がるのを抑えていく治療(飲み薬、貼り薬、注射等)を傷が落ち着くまで定期的に行うことが重要です。