札幌医科大学 医学部 病理学講座病態究理病理学分野

教室専用
学生・研修医のみなさまへ

As is our pathology, so is our practice.
(私たちの病理がそうであるように、私たちの診療もそうである)
現代医学の父といわれる内科医 Sir William Osler(ウィリアム・オスラー) が残した有名な言葉です。そのまま訳したのでは、少し意味が分かりにくいかもしれませんが、この短い文には2つの意味があります。


  1. 病理医としての解釈
    病気を診断するに際し、最後の結論は病理診断に委ねられることがとても多いのをご存じでしょうか?特にがんの診断には決定的な役割を果たしています。どのように診断するかが、そのまま治療選択に直結します。 第一の意味は「診断が変われば、治療が変わる」ということです。
  2. 病理学者としての解釈
    病理という言葉は単なる診断ではなく、病気の成り立ち(病態生理)、分子メカニズム、疾患概念そのものを含んでいます。これらは、様々な医療技術が発達した今でも、分からないことだらけです。 つまり第二の意味は「どのように病気を理解しているかで、医療の限界が決まる」ということです。

この言葉には続きがあります。
What the pathologist thinks today, the physician does tomorrow.
(今日、病理医/病理学者が考えたことが、明日の臨床医の行いとなる)
病理医/病理学者は、病理医として、個々の症例に対して下した診断によって、(日付の意味での)明日の臨床医の診療の根拠となる指針を提供します。そして、病理学者として、病気の成り立ちやメカニズムを研究することで、(未来という意味での)明日の臨床医の診療をかえうるという使命をもって研究を行っています。
病理学第一分野では、2つの役割を体現できる病理医/病理学者の実践と育成に取り組んでいます。

病理学を勉強しよう~医学部低学年のみなさんへ

病理学はおもしろい!

病理学を理解するうえで、まず土台となるのは解剖学と生理学です。さらに、分子生物学や生化学の知識も、現代の病理学を学ぶうえでは欠かせません。 これらの基礎医学をしっかり学んでおくことが、病理学の理解を大きく助けます。すでに履修を終えている内容であっても、今から復習を始めることに決して遅すぎることはありません。
病理学の教科書にはさまざまなものがありますが、世界的に「病理学のバイブル」とも称されるRobbins & Cotran Pathologic Basis of Diseaseは、病理学を学ぶうえで非常に重要な教科書です。ただし、最初からこの大著に真正面から挑戦するのは容易ではありません。まずは、日本語で書かれた比較的コンパクトな教科書を一通り読んでみることをおすすめします。
病理学を学び始める際には、特に次の二点を意識するとよいでしょう。


  1. まずは総論を重視すること
    炎症、循環障害、腫瘍、免疫などの総論部分には、各臓器の病気に共通する考え方が数多く含まれています。まずは総論を一通り読むことで、病理学全体の見通しが得られます。
  2. 一度ですべてを理解・暗記しようとしないこと
    病理学には多くの概念や知識が登場します。最初から完全に理解しよう、覚えようとすると、かえって苦しくなってしまいます。まずは「病気をどう見る学問なのか」に親しむことが大切です。

学生のうちから病理学に触れておくことは、高学年での臨床医学の理解や、卒後の診療においても大きな財産になります。
また、「一人で Robbins & Cotran Pathologic Basis of Disease を読むのは少し大変そうだ」と感じる方には、輪読会への参加もおすすめです。詳細については、講義などを通じて随時案内しています。

病理学を体験しよう~医学部中・高学年のみなさんへ

病理学に興味をもったら、体験してみましょう!

MD-PhDコースでは、大学院生と同様に基礎医学研究に参加し、実験技術や研究の進め方を学ぶことができます。得られた成果を積み重ね、全国学会での発表や英語論文としての発信を目標としています。これまでにも多くの学生が研究に挑戦し、それぞれの成果を形にしてきました。
研究室に来る頻度や活動時間について、一律の制限は設けていません。学業との両立を前提に、それぞれの関わり方を尊重しています。 「まずは少し研究を体験してみたい」という学生さんから、「自分自身のテーマを持って本格的に研究に取り組みたい」という学生さんまで、幅広く歓迎しています。
一方で、研究において「良い結果」を積み重ねることは決して容易ではありません。また、一定の技術を習得し、自立して研究を進められるようになるまでは、大学院生の補助的な作業からスタートすることが一般的です。その点については、あらかじめご理解いただければと思います。 「基礎医学的な実験にはあまり自信がない」という方でも、病理診断に興味がある場合には、病理診断業務や病理学の実際に触れていただくことが可能です。 病理学は、顕微鏡を通して病気を理解し、診断へと結びつける学問です。臨床医学と基礎医学の両方に関わることのできる分野でもあります。
受け入れ人数には限りがありますので、興味のある方はお気軽に直接お問い合わせください。

病理学を追求しよう~医学部卒後のみなさんへ

病理学を専門にしませんか?

病理医は “Doctor’s doctor” とも呼ばれ、適切な医療を支えるうえで欠かすことのできない存在です。また、病理学者として、臨床(医療)と基礎(医学)をつなぐ役割も担っています。一方で、病理医は全医師数の1%にも満たない、非常に希少な専門職です。そのため、病理医・病理学者に対しては、一般には十分知られていない部分や誤解も少なくありません。 ここでは、私たち札幌医科大学医学部病理学講座に寄せられることの多い質問について、FAQ形式でご紹介します。病理学に関心を持つ学生・研修医の先生方に、少しでも病理の魅力や実際の姿が伝われば幸いです。そして、一人でも多くの先生が将来の仲間として加わってくださることを願っています。

病理医は「収入が少ない」のですか?
病理医だから特別に給与が低い、ということはありません。基本的な給与体系は他科の医師と大きく変わりません。一方で、夜間や休日の呼び出しが比較的少ないため、時間外手当の割合は他科より少なくなる場合があります。生活が不安定になるような職種ではありません。
病理医は「楽な仕事」なのですか?
患者さんを直接受け持たないため、時間の使い方に比較的自由度があることは事実です。しかし、病理診断は診療の最終診断を担う重要な業務であり、その責任は非常に重いものです。また、病理医は常に新しい医学知識や診断技術を学び続ける必要があります。「楽だから病理を選ぶ」という考え方とは異なる専門領域だと思います。
研究と病理診断の比率はどのくらいですか?
これは一人ひとりの志向によって異なります。病理医として一定水準以上の診断能力を維持する努力は全員に求められますが、そのうえで、研究を中心に取り組む人、病理診断を主軸とする人、あるいはキャリアの途中で重点を変えていく人もいます。病理学は、研究と診断の双方に関わることのできる、柔軟性の高い分野です。
病理学を専門にした場合のキャリアパスが見えにくいのですが?
病理医は人数が少ない分、キャリア形成の自由度が高いことが特徴です。大学院で学位取得後に国内外へ留学し、その後に病理専門医資格を取得する人もいれば、先に専門医資格を取得してから研究に進む人もいます。歩み方は一つではありません。「決まったレールがない」ということは不安につながる面もありますが、自分自身の関心や目標に応じて道を選べるという魅力でもあります。教室としても、進路選択について継続的に支援しています。
どのような研究テーマに取り組んでいますか?
私たちの教室では、半世紀以上にわたりヒト腫瘍免疫に関する研究を続けてきました。現在もそれは大きな柱の一つです。一方で、腫瘍免疫は非常に広い分野であり、ストレス応答、分子病理、炎症・アレルギー疾患など、多様なテーマへと発展しています。病理学は「病気を理解する学問」であり、対象となる領域は決して一つに限られません。
研究と病理診断の両立は現実的に可能なのでしょうか?
研究も病理診断も、それぞれ非常に奥深い世界です。どちらか一方を極めるだけでも、生涯をかける価値があります。その一方で、病理学という分野には、研究と診断の両方に携わることのできる魅力があります。研究の視点が診断に新しい発見をもたらすこともあれば、日々の診断経験が研究課題につながることもあります。両者を行き来することで見えてくる景色がある――それが病理学の大きな魅力の一つだと、私たちは考えています。
ページトップへ戻る