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臨床ストレス応答学会

The Biomedical Society for Stress Response

 

 

BSSR NEWS LETTER No. 2

2007.9.20

 

第1回臨床ストレス応答学会大会レポート

 

第1回大会庶務委員 久保田広志(京都大学再生医科学研究所)

 

 平成18年11月22日、23日の両日、臨床ストレス応答学会の初めての学術集会である第1回大会が、京都大学医学部構内にある芝蘭会館の稲森ホールと山内ホールにて開催された。これまで、10回続いてきた「臨床ストレスタンパク質研究会」を発展的に解消し、学会として新たにスタートした本学会の記念すべき第1回大会である。演題数も、研究会時代の2倍に増え、新学会の創設にふさわしい、熱気あふれる学術集会であった。本稿では、その大会の様子を、かいつまんで紹介する。

 22日の朝9時から稲森ホールにおいて大会が始まった。まず、大会長の永田和宏先生(京都大学)より、開会挨拶として、研究会から学会への発展の経緯や本学会の重要性などについて話があった。続いて、テーマごとに分けられた一般口頭発表演題のセッションが開始された。一日目のセッションは、「小胞体ストレス」「ユビキチン化とタンパク質分解」「分子シャペロンと阻害剤の作用機構」「酸化ストレス」の4つである。各セッションごとに選ばれた2名の座長によって進行が行われ、各演題は 10分間の講演と3分間の質疑応答により進行した。ここでは、主として、ストレス応答やストレスタンパク質作用の分子メカニズムについての発表があった。これらの基礎的な研究による重要な発見が、臨床応用的研究をその基盤として支えているということを改めて実感した。

 この日のお昼には、すぐとなりの山内ホールにおいてエーザイ共催によるランチョンセミナーがあり、徳島大学の六反一仁先生の司会の下、熊本大学の水島徹先生よりNSAIDs潰瘍の分子機構とHSP誘導による胃粘膜保護に関する講演があった。このランチョンセミナーは、この日の大会参加者のほとんどが聴講する盛況ぶりであった。

 夕方4時すぎからは、本学会主催の公開シンポジウム「タンパク質のミスフォールディングと疾患」が稲森ホールにて開催された。オーガナイザーは永田先生と、学会長でもある札幌医科大学の佐藤昇志先生で、演者は発表順に、田口英樹先生(東京大学)、久保田広志(京都大学)、Prof. Douglas Cyr (Univ. North Carolina, USA)、Prof. Ron Kopito (Sanford Univ., USA)の4人である。このシンポジウムは公開となり、会員以外も聴講できたので、聴衆も多くて、特に大きな盛り上がりがあったと思う。田口先生は、酵母を使ったプリオン病のモデルを用いて、プリオンがどのように増幅し、伝播し、ダイナミックに変化していくのかについて発表した。最先端の技術を駆使した一分子レベルのライブイメージングにより、その詳細が明かになりつつあり、さらなる発展によりプリオン病の本質的理解がされる日も遠くないものと思われる。久保田は、細胞質シャペロニン(CCT)が、ハンチントン病の原因であるポリグルタミンタンパク質(ハンチンチン)の細胞内凝集を抑制し、その細胞毒性を防ぐことを報告した。蛍光分子イメージングによる解析から、細胞質シャペロニンは、ポリグルタミンタンパク質凝集の初期過程(核形成)を抑制すると考えられ、ポリグルタミン病の発症抑制に効果が期待される。Prof. Cyrは、嚢胞性線維症の原因タンパク質CFTRΔF508の、タンパク質品質管理のメカニズムに関して発表した。嚢胞性線維症は、欧米を中心に多くの患者がいる遺伝性の難治疾患である。Prof. Cyrの報告によると、CFTRΔF508の分解には、膜ドメインと細胞質ドメインとで、それぞれ異なる品質管理ユビキチンリガーゼ複合体が働いており、前者にはRMA1とDerlin-1が、後者にはHSC70とCHIPがそれぞれ重要な働きを担っているとのことである。以前よりCFTRΔF508の分解と本疾患との関連が言われているので、これらの最新の知見が、この難治疾患の治療に役立つものと考えられる。Prof. Kopitoは、in vivoでユビキチン-プロテアソーム系の活性を測定できる系を確立し、これを使って、ハンチントン病のモデルマウスの脳を解析した結果を報告した。それによると、このモデルマウスの発症初期において、ユビキチン-プロテアソーム系の活性低下が示唆されるという。ポリグルタミン凝集によるユビキチン-プロテアソーム系の阻害がポリグルタミン病の一因であるという従来の説にin vivoにおける直接的証拠を与えたものとして注目される。

 2時間半の公開シンポジウムの後、直ちに場所を山内ホール変えて、懇親会が開催された。永田先生、佐藤先生、Prof. Kopito、矢原一郎先生(医学生物学研究所)、そして次回大会長の姫野國祐先生(九州大学)よりそれぞれスピーチがあった。懇親会は終始なごやかな雰囲気で行われ、基礎から臨床に至るまでの研究者の意見交換がなされた。なお、懇親会終了後、Prof. CyrとProf. Kopitoは、若い学生たちと共に2次会に行き、さらに熱く語りあったとのことである。

 2日目の23日は、一般演題による5セッション「タンパク質凝集と疾患」「物理的および精神的ストレスへの応答」「ストレスタンパク質誘導剤」「免疫とストレス応答」「ストレスタンパク質の臨床応用へ向けて」が開催された。ここでは、細胞レベルから個体レベルに至るまで、ストレスタンパク質やその誘導剤による疾患の予防や治療の可能性について、様々な発表がなされ、議論が行われた。ストレスタンパク質やその誘導剤による疾患の治療が具体化する日もそう遠くないと思われる。

 最後に学会長の佐藤先生より、閉会の挨拶がなされた。佐藤先生からは、九州大学で開催される第2回大会に向けて、更なる発展をとのお話があった。全体を通して、第1回大会は、成功のうちに終了したと思う。質疑応答も活発で、各研究者の発表内容に対する関心の高さが感じられた。特に、基礎研究から臨床応用に至るまで、本研究分野の役割の重要性を改めて強く感じることができた。基礎と臨床応用の研究者か互いに意見を交換できる貴重な機会として、本学会および大会の更なる発展を祈りつつ、本報告を終りとする。


ストレス応答学関連国際会議のお知らせ

 

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Cell Stress Society International

The 4th International Congress on Stress Responses in Biology and Medicine

October 6-9, 2009   Sapporo, Japan

第4回臨床ストレス応答学会大会との合同国際会議

Sapporo SPA Resort ホテルシャトレーゼガトーキングダムにて開催予定です

       http://web.sapmed.ac.jp/stress2009

 

Gordon Research Conference on AUTOPHAGY IN STRESS, DEVELOPMENT AND DISEASE

     January 6-11, 2008   Ventura, CA

 

Gordon Research Conference on PROTEIN FOLDING DYNAMICS

     January 6-11, 2008   Ventura, CA

 

6th International Workshop on the Molecular Biology of Stress Responses

     March 25-29, 2008   Bangkok, Thailand

     http://www.cellstress.uconn.edu/conferences.html

 

Gordon Research Conference on MOLECULAR CELL BIOLOGY

     June 1-6, 2008    New London, NH

 

Gordon Rsearch Conference on MICROBIAL STRESS RESPONSE

     July 6-11, 2008  South Hadley, MA

 

Glutathione and related thiols in microorganisms

     August 27-29, 2008   Nancy, France

     https://matar.ciril.fr/THIOL/homephar.php

 

4th  International Symposium on Heat Shock Proteins in Biology and Medicine

     September 15-18, 2008   Daegu, South Korea

 

The Second Woods Hole Symposium On Heat Shock Proteins In Biology And Medicine

     November 3-6, 2008   Woods Hole, MA, USA


 

役員・事務局

会長  佐藤昇志(札幌医科大学医学部病理学第一講座教授)

副会長 伊藤英晃(秋田大工学資源学部環境物質工学科教授)

総務  水島 徹(熊本大学大学院医学薬学研究部創薬化学講座教授)

会計  六反一仁(徳島大学医学部大学院生体制御医学教授)

監事  森 正敬(熊本大学名誉教授)

事務局

060-8556 札幌市中央区南1条西17丁目

札幌医科大学医学部病理学第一講座内 担当 鳥越俊彦

TEL: 011-611-2111 (内線2691), FAX: 011-643-2310

E-mail: BSSR@sapmed.ac.jp

ホームページ:http://web.sapmed.ac.jp/patho1/BSSRindex.html

 

学会活動予定

(1)大会(学術集会)

毎年1回、大会・総会を開催します。

現在までに予定している開催地および大会長は次の通りです。

 

        開催年月日       開催地 大会長        

第2回 平成19年11/30, 12/1  福岡  姫野國祐(九州大学)

第3回 平成20年       秋田  伊藤英晃(秋田大学)

第4回 平成21年10/6-9     札幌  佐藤昇志(札幌医科大学)

4th Cell Stress Society International Congress on Stress Responses in Biology and Medicine合同国際会議)

 

(2)刊行物

BSSR News Letterを発行し、学会活動や関連学会に関する情報をお届けします。

 

(3)ホームページ

Webを介して、臨床ストレス応答学関連の各種ニュースや国際会議情報、その他臨床試験や創薬関連情報を提供します。


学会幹事

伊藤 英晃   (秋田大工学資源学部環境物質工学科)

鵜殿 平一郎  (理化学研究所RCAI免疫シャペロン研究チーム)

大塚 健三   (中部大学応用生物細胞ストレス生物学)

小川 智    (金沢大学大学院医学系研究科脳医科学神経分子標的学)

佐藤 昇志   (札幌医科大学医学部病理学第一講座)

祖父江 元   (名古屋大学大学院医学系研究科脳神経病態制御)

永田 和宏   (京都大学再生医科学研究所細胞機能調節学)

野村 馨    (東京女子医科大学内科学)

原  勲    (神戸大学大学院医学系研究科腎泌尿器科学)

樋口 京一   (信州大学医学研究科加齢生物学)

姫野 國祐   (九州大学大学院医学研究院病態医学専攻微生物免疫学)

藤田 潤    (京都大学医学研究科分子病診療学)

水島 徹    (熊本大学大学院医学薬学研究部創薬化学講座)

六反 一仁   (徳島大学医学部大学院生体制御医学)

以上14名(アイウエオ順)

 

評議員(平成19年6月)

青江 知彦(千葉大学)、荒瀬 尚(大阪大学)、一條 秀憲(東京大学)、今泉 和則(宮崎大学)、岩坂 日出男(大分大学)、大高 道郎(秋田大学)、岡嶋 研二(名古屋市立大学)、小熊 惠二(岡山大学)、小山田 正人(京都府立医科大学)、甲斐 広文(熊本大学)、笠原 正典(北海道大学)、金子 清俊(東京医科大学)、木内 博之(山梨大学)、木村 洋子(都臨床医学総合研究所)、桑田 一夫(岐阜大学)、高後 裕(旭川医科大学)、小亀 浩市(国立循環器病センター)、後藤 知己(熊本大学)、小林 良二(香川大学)、小安 重夫(慶應義塾大学)、笹栗 靖之(産業医科大学)、関山 敦生(国立長寿医療センター)、高橋 良輔(京都大学)、田中 啓二(都臨床医学総合研究所)、千葉 進(札幌医科大学)、辻 省次(東京大学)、遠山 正彌(大阪大学)、徳永 文稔(大阪市立大学)、鳥越 俊彦(札幌医科大学)、中井 彰(山口大学)、根本 孝幸(長崎大学)、久枝 一(九州大学)、平澤 博之(千葉大学)、平田 公一(札幌医科大学)、藤木 幸夫(九州大学)、堀 修(金沢大学)、堀 清次(京都大学)、森 和俊(京都大学)、山崎 浩一(北海道大学)、山田 健人(慶應義塾大学)、山本 友子(千葉大学)、山本 雄造(秋田大学)、横田 伸一(札幌医科大学)、吉田 賢右(東京工業大学)、吉森 保(国立遺伝学研究所)、淀井 淳司(京都大学)、和田 郁夫(福島県立医科大学)              以上47名(アイウエオ順)


第2回臨床ストレス応答学会大会の御案内

 

会期 20071130日(木)、121日(金)

会場 九州大学医学部コラボステーション(視聴覚ホール)

   福岡市東区馬出九州大学病院地区キャンパス内

   (アクセスは http://www.srp.kyushu-u.ac.jp/collabo2/access/index.htm )

 

大会長 姫野國祐(九州大学医学研究院・教授)

 昨年の第1回の「臨床ストレス応答学会」は京都大学の永田和宏大会長のご企画の元に、従来の研究会の概念を一掃し前途洋々たる歴史が刻まれていくであろうことを予感させるような素晴らしいスタートが切られました。第2回大会の大会長には光栄にも私が仰せつかりました。第2回大会は本学会の今後の進むべき方向性をさらに明確に構築していく上で非常に重要な責務を伴った大会として位置づけなければならないと感じております。第2回大会も第1回大会の実績をもとに、ストレス応答研究の基礎および臨床研究分野の更なる融合を目指した有意義な学会にしたいと願っております。本大会は以下に示しましたように特別講演として「神経変性疾患と分子シャペロン」と「蛋白分解と生体制御」の二本立てを企画しております。今後のこの分野の更なる飛躍的な発展にご協力をいただければ幸いです。ここにご案内を兼ねて、お願い致します。

 

予定プログラム

 

午前

午後

1130

一般演題

ランチョンセミナー

一般演題

特別講演1

懇親会

121

一般演題

特別講演2

 

一般演題

 

 

特別講演1『神経変性疾患と分子シャペロン(仮)』

 演者 金子清俊 先生(東京医科大学)

    服部信孝 先生(順天堂大学)

    高橋良輔 先生(京都大学)

 

特別講演2『蛋白分解と生体制御(仮)』

 演者 田中啓二 先生(都立臨床研究所)

    村田茂穂 先生(都立臨床研究所)

 

ランチョンセミナー

 演者 祖父江 元 先生(名古屋大学)

 

演題申し込み・参加登録

大会ホームページよりオンライン登録

http://web.sapmed.ac.jp/patho1/BSSR2007.html

演題登録締切 20071020

 

参加費

      大会参加費        懇親会

    事前    当日      事前   当日

一般 5000円  7000円    5000円  7000

学生 3000円  4000円    3000円  4000円 

事前振込締切1116、参加費振込は添付の郵便振込用紙をお使い下さい

 

大会事務局

  第2回臨床ストレス応答学会大会事務局

  〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1

  九州大学医学研究院 感染免疫熱帯医学分野内

  TEL/FAX 092-642-6118 e-mail bssr2007@parasite.med.kyushu-u.ac.jp

 

宿泊案内

 この度、第2回臨床ストレス応答学会大会に出席されます皆様方のご宿泊予約を西鉄旅行M天神支店にて取扱いさせていただくことになりました。

 皆様方の学会期間中にお部屋を確保し、お得な料金にてご案内させていただきますので是非、ご利用下さい。尚、福岡の11月は非常に混み合う時期でもありますのでお早めに申込みいただくよう、お願い申し上げます。

 

西鉄旅行M天神支店

810-0001 福岡市中央区天神2-11-2 (西鉄福岡駅ビル1)

「第2回臨床ストレス応答学会大会」係 担当:渡・四位・宮田・庄田・川島

電話番号:092-741-4952 (月~土 10:0019:30/祝・日 10:0018:00)

FAX番号:092-714-3405 

http://www.nishitetsutravel.jp/niccs/bssr2007/

 

 


事務局からの連絡

 

入会手続き

 学会ホームページから「入会申込書」をコピーし、必要事項をご記入の上、

BSSR事務局までFAX(011-643-2310)または電子メール(BSSR@sapmed.ac.jp)にてお送り下さい。

 

年会費

一般会員 5,000円、学生会員 3,000円、企業賛助会員 50,000円

以下の郵便口座へお振込ください。

加入者名臨床ストレス応答学会

口座番号02730-3-64452

    (添付の振込用紙をお使い下さい)

なお、企業賛助会員の入会受け付けは事務局までお問い合わせ下さい。

 

会員情報の変更および脱会について

 会員の所属機関や住所等の変更、あるいは本学会からの脱会を希望される方はFAXまたは電子メールで事務局までご連絡願います。

 

大会ポスターについて

 第2回臨床ストレス応答学会大会のポスターを事務局に用意しております。できるだけ多くの基礎・臨床研究者に参加していただくため、ポスターを配布して宣伝していただきますようお願い申し上げます。事務局まで必要枚数をお知らせ下さい。

 

平成19年度総会/評議員会について

 大会2日目(12月1日)午後、第2回評議員会/総会を開催する準備を進めております。会員皆様のご参加をお願い申し上げます。

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BSSR事務局

060-8556 札幌市中央区南1条西17丁目

札幌医科大学医学部病理学第一講座内

TEL: 011-611-2111 (内線2691), FAX: 011-643-2310

E-mail: BSSR@sapmed.ac.jp

ホームページ:http://web.sapmed.ac.jp/patho1/BSSRindex.html


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