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乳がん関連情報

乳がんについて

  乳がんにはたくさんの治療法があります。しっかりと納得したうえで治療方針を決定していくプロセスが大切です。ご心配なお気持ちはたいへんとお察しいたしますが、落ち着いてご自身の乳がんの状態、性質を把握して、それに合わせた治療を選ぶことが非常に重要です。そのうえで、ひとつひとつ納得のいく治療を受けるために、乳がんの性質、乳がんの治療、乳がんのつらいところ、そして生活への影響などについて整理していく必要があります。
  乳がんの治療は多岐に渡ります。治療と一口にいっても手術・乳房再建、放射線照射、化学療法、内分泌療法、分子標的治療などがあり、これらの実施にはそれぞれ質の高い専門性が求められています。それ故に様々な専門科が密に連携して、より状況に沿う最適な治療を行う体制を整えて行かなくてはなりません。また、画像診断、遺伝子診断や不妊治療といった注目の集まる分野やキャンサーサバイバーの課題を目の当たりにする場合、社会的な問題に関わる情報を知ることも重要です。多角的な情報を把握して高い治療効果を得るために、悩みをひとつひとつ解決して、少しでも快適な生活な生活をめざすことが大切です。
  一方で、乳がんを予防することにも注目されるようになってきました。アンジェリーナジョリーさんが受けた手術は予防的乳房切除とは、乳がんになった訳ではないけれど、遺伝子検査で乳がんの発症リスクが非常に高いと診断されたことから、乳がんになる前に手術を受けたというものです。「治療」と「予防」でいうと、まさに予防をしたということになります。現在、保険診療として認められていませんが、この考え方も非常に注目されています。

  ここでは、いくつかのキーワードを簡単にお答えしていきます。

乳がんの診断はどのようなものがありますか?

  マンモグラフィ、超音波検査、MRI検査やCT検査、核医学検査といった画像検査を用いて乳がんの有無、大きさ、転移の有無を見ていきます。確定診断には、細胞診、針生検、マンモトームといった病理学的な検査があり、針で細胞や組織を採取して顕微鏡で調べ、がんかどうか、がんだったらどのような性質のものかを診断します。

乳がんの治療はどのように展開していきますか?

  治療法には手術、内分泌療法、化学療法、分子標的治療といったものがあります。これらは、前述した病理学的診断から負担が最低限ですみ、最も効果の高いと考えられている治療法をお勧めさせていただきます。
  • 初期治療:
    • 乳がんと診断され、まず最初に受ける治療を「初期治療」と呼びます。初期治療には手術、放射線療法といった局所治療と化学療法、内分泌療法、分子標的療法による全身治療があります。「初期治療」はほかの臓器への転移がない乳がんの患者さんの治療としてすでに既に存在しているかも知れない微小転移を根絶し、乳がんを根本的に治すことをめざすものです。
  • 局所進行乳がんの治療:
    • 乳房の皮膚や胸壁にがんが及んでいたり、炎症性乳がんであったり、鎖骨上リンパ節にまで転移が及んでいる場合には、そのままですぐには手術することは基本的方針とは言えません。化学療法を含む薬物療法を行い、状況にあわせて放射線療法、手術などの局所治療を追加していきます。
  • 転移・再発乳がんの治療:
    • 全身治療として化学療法、内分泌療法、分子標的療法を行います。状況により手術や放射線療法といった局所治療を追加します。

手術を受けるとしたら、どのようなものになりますか?

  画像診断などで、がんの広がりや全身の状況を把握したうえで、最適な術式を選択していきます。術式には、乳房切除、乳房部分切除があり、乳房再建も形成外科と合同チームとして行っています。また、乳がんは脇「腋窩(えきか)」にリンパ節転移をしやすいことが知られています。腋窩の状況により腋窩郭清、あるいは、センチネルリンパ節生検を行います。腋窩郭清は、腋窩のリンパ節の取り残しがないように脂肪も含めてひとかたまりに切除するものです。一方、センチネルリンパ節は乳房内から乳がん細胞が最初にたどりつくリンパ節と定義されますが、数個存在しているセンチネルリンパ節を摘出して、手術中に顕微鏡でリンパ節転移の有無を調べる方法をセンチネルリンパ節生検と呼びます。センチネルリンパ節生検の結果から腋窩郭清を省略できるかを決定していきます。
  当院では、手術前日に入院して手術の詳しいお話をいたします。同日、センチネルリンパ節生検を予定している場合はリンフォシンチグラフィというセンチネルリンパ節生検の準備を撮影します。手術は2〜3時間程度です。術後翌日から食事を開始、離床も進めて行きます。入院期間は約1週間程度であることが多いです。手術で切除した病巣から得られた病理診断結果は退院後にお話をして、今後の治療方針を決めていきます。

この他にもまだまだ多くのコツや考え方がありますので、ご不明なことがありましたら担当医師にもぜひご相談ください。
私たちブレストセンターは、少しでもお役に立てるよう最善を尽くしていきます。

遺伝性乳がん卵巣がん(Hereditary Breast and Ovarian Cancer, HBOC)症候群について

乳がんの5-10%,卵巣がんの15-20%は、遺伝的な要因が強く関与して発症していると考えられています。その中で最も多くの割合を占めるのが、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)です。

HBOCは、BRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子に生まれつきがんを起こしやすい変化があることで、乳がんや卵巣がんを高いリスクで発症する遺伝性腫瘍の1つです。HBOCを疑う特徴としては、若年で乳がんを発症した、一人の方が複数の乳がんを発症した、乳がんだけでなく卵巣がんも発症した、などがあります。また、乳がんや卵巣がんの家族歴が見られることもHBOCを疑う特徴となります。

しかし、これらの特徴はHBOCの方に必ず見られるわけではありません。これらの特徴がなくてもBRCA1/ 2遺伝子検査の結果によってHBOCと診断される方もいます。

HBOCは遺伝性の疾患で、BRCA1/2遺伝子の病的な変化は、親から子へ、性別に関係なく50%(1/2)の確率で受け継がれます。乳がん、卵巣がんを、まだ発症していない家族に対し、BRCA1/2遺伝子に病的な変化を持っているか、持っていないかを遺伝子検査で調べることによって、最適な治療や管理、予防などの対策に役立てることができます。

HBOCが心配な場合は、専門の医師やカウンセラーに相談し詳しく説明を受け、将来の健康について専門家の意見とアドバイスを受けることが勧められます。カウンセリングでは、BRCA1/2遺伝子検査を受けることの意義や注意点について、また検査結果が陽性と出た場合、もしくは陰性と出た場合のご自身の心理的な変化などについて、ご本人やご家族の状況に寄り添って説明し、ともに考え、検査を受けるかどうかを判断するためにサポートさせていただきます。検査結果をお伝えした後も、予防や早期発見・早期治療、また社会的サポートについてなど、役立つ情報をお伝えし、ご自分に合った、よりよい対処法を選択する手助けをさせていただきます。

問診票・・・HBOCの可能性がある方を拾い上げるために有用な問診票です。

母方、父方それぞれの家系について、以下の質問にお答えください。あなた自身を含めたご家族の中に該当する方がいらっしゃる場合に、□にチェックを入れてください。

かんたんチェック
□ 40歳未満で乳がんを発症した方がいますか?
□ 年齢を問わず卵巣がん(卵管がん・腹膜がん含む)の方がいらっしゃいますか?
□ ご家族の中でお一人の方が時期を問わず原発乳がんを 2 個以上発症したことがありますか?
□ 男性の方で乳がんを発症された方がいらっしゃいますか?
□ ご家族の中でご本人を含め乳がんを発症された方が 3 名以上いらっしゃいますか?
□ トリプルネガティブの乳がんといわれた方がいらっしゃいますか?
□ ご家族の中に BRCA の遺伝子変異が確認された方がいらっしゃいますか?

上記の質問に一つでも該当する項目があれば、あなたが遺伝性乳がん卵巣がんである可能性は一般よりも高いと考えられます。

患者さん・一般の方向け解説書

『遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)をご理解いただくために』
このパンフレットは、医療機関での遺伝カウンセリングに使われている患者さんへの説明用パンフレットを、一般の方にもお読みいただけるよう改訂したものです。遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の理解のため、お役立てください。