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1.口唇裂とは 2.顎裂とは 3.口蓋裂とは 4.口唇・顎・口蓋裂の関係 5.発生原因と頻度 6.合併症 7.関連科との連携 8.治療の費用について
 

 口唇裂とは、生まれつき上口唇いわゆる「うわくちびる」が割れている状態です。その程度はさまざまで、上口唇にわずかにくぼみがみられる程度(不全唇裂)から、鼻の穴の奥の方まで割れているもの(完全唇裂)までさまざまです。そのため、通常連続しているはずの口唇の筋肉(口輪筋)も同時に割れています。また口唇のみならず、鼻の変形も伴います。人によっては、見かけ上は割れていないのに、筋肉だけ割れている状態(痕跡唇裂)のこともあります。一カ所だけ割れている状態(片側唇裂)が多いのですが、 2 カ所が割れている状態(両側唇裂)のこともあります。

(例)口唇裂の種々の形態
右不全唇裂
右完全唇裂
両側唇裂
 
 単独で出現することはありませんが、口唇裂や口蓋裂に伴って、歯ぐきが同時に割れていることが多く、この歯ぐきの割れのことを顎裂と言います。歯が生えてくる土台の骨(上顎骨歯槽部)が割れているため、歯並びが悪くなったり、歯の数が減ったりします。
(例)左口唇裂、口蓋裂に伴う顎裂
   
 

 口蓋とは、鼻腔と口腔との境界をなす、口腔内の「ふた(蓋)」の部分です。口蓋の前方 3 分の 2 (歯に近い方)を硬口蓋、後方 3 分の 1 (のどちんこの周囲)を軟口蓋といいます。軟口蓋は口蓋を動かす筋肉がある重要な場所です。この筋肉によって、口蓋がのどの奥の方へ動き、食べ物が鼻に流れるのを防ぎ、また、発音にも重要な機能を果たします。この機能を鼻咽腔閉鎖機能といいます。
  口蓋裂とは、この口蓋が生まれつき割れているもので、すなわち鼻腔と口腔の境がなくなった状態です。その割れ方の程度はさまざまで、軟、硬口蓋伴に割れているものを口蓋裂、軟口蓋だけだと軟口蓋裂と言います。見かけ上は割れていないのに筋肉だけ割れているものを粘膜下口蓋裂と言います。

(例)口蓋裂の種々の形態
口蓋裂
軟口蓋裂
粘膜下口蓋裂
 
 口唇裂、口蓋裂がそれぞれ単独で生じる場合もありますが、合併して生じることも少なくありません。口唇裂・口蓋裂の合併の仕方としては、以下の図がよく使用されます。
【図1】口唇裂、顎裂、口蓋裂発生の種々の形態
不全唇裂
完全唇裂・顎裂
両側唇裂・顎裂
軟口蓋裂
口蓋裂
不全唇裂・軟口蓋裂
完全唇顎口蓋裂
両側唇顎口蓋裂
 

 今だ明確になっていない部分も多いのですが、一般に環境因子と遺伝因子が考えられています。環境因子としては、例えば妊娠中の精神的ストレスや感染症、服薬、栄養不足などがあげられます。また、遺伝因子の関与も指摘されていますが、今のところ特定の遺伝子が解明されているわけではありません。第 1 子が本症であり第 2 子も本症である可能性や、本症の方に将来本症の子が生まれる可能性は、一般より若干高いものと考えられるものの、その比率は低く、突然発症の率が高いとされます。
  従って、環境因子と遺伝因子等の多数の因子が複雑に関与して本症の発生に繋がるようです。本症は体表面に生じる生まれつきの疾患のなかでは、比較的頻度の高い疾患で、日本では、 500 〜 600 人に 1 人の割合で出生するといわれています。

 
 単独で口唇裂や口蓋裂が生じることが多いのですが、他の先天性疾患に本症を合併する場合もあります。多くのものは、生後すぐに見つかり、また一ヶ月検診等で必要があれば検査を行っていきます。具体的には、顔面の他の異常、心臓疾患、手足の異常など色々なものがあります。また色々な症候群(例えば、Pierre Robin 症候群、4p- 症候群、13 トリソミー症候群、EEC 症候群、CATCH22 症候群など)の一症状として出現することもあります。
 

 口唇裂・口蓋裂においては、われわれ形成外科医のみならず、各専門分野と連携したチーム医療が重要です。形成外科は他科との連携の窓口としても重要な働きをします。主な関連科と、役割分担は以下の通りです。

形成外科 口唇形成術、口蓋形成術等(患者様によっては口腔外科で行うこともある)
歯科口腔外科 哺乳指導、虫歯の治療、歯科矯正や手術による咬合の獲得
耳鼻咽喉科 鼻咽腔閉鎖機能の検査、中耳炎の治療*1
リハビリテーション 言語評価、言語訓練(言語聴覚士)
小児科 合併疾患の診断、発育・発達の評価等
*1: 口蓋裂のお子さんは耳管(中耳と鼻をつなぐ細い管)の働きが悪い場合が多く、中耳腔に滲出液が貯留してしまう滲出性中耳炎にかかりやすいといわれています。気が付きにくいことが多いため、早いうちに適切な診断と治療を行い、難治化を防ぐ必要があります。
 
 殆どの治療は、 乳児医療育成医療高額医療制度などの適応となります。育成医療とは 18 歳の誕生日までは、 1 割の自己負担で治療が受けられる制度です。札幌医大病院事務の相談窓口で、負担の少ない医療制度について気軽に相談ができます。