一般・患者の皆さまへ

覚醒下手術

 全身麻酔による脳の手術の重大な合併症に神経症状(手足がマヒする、言葉がうまく話せなくなる、など今までできていたことができなくなる)があります。病変を十分に取り除き、かつ、手術による合併症は安全に予防する、という目的のため覚醒下手術が行われます。脳自体には、痛みを感じる神経がありません。脳の手術を行っている最中は、痛みを感じないわけです。(皮膚には痛みを感じる神経があるためその部分には局所麻酔を行っています。)
 脳には様々な機能や個性が詰まっていますので、手術前には脳腫瘍の検査だけではなく患者さんに応じた脳機能の最先端検査を行います。手術中には、手足を動かしてもらいその感覚を確認し、会話をしながら、時には計算をしたり、高次脳機能を検査します。同時に、大事な神経の位置や走行をモニターし、さらに電気で刺激することによって患者さんの症状に変化がないかどうかも確認しながら、慎重に摘出をすすめます。
 京都大学脳神経外科で三國が2003年に始めてから、400件以上という国内最高の実績があります。日本では2015年に保険収載されましたが、経験を積んだ麻酔科専門医と脳神経外科専門医が常勤している限られた病院でしかこの手術は受けることができません。脳腫瘍特に神経膠腫(グリオーマ)やてんかんの手術で効果があることがわかっています。遠方からの問い合わせもありますので、札幌医科大学附属病院医療連携センターまたは脳神経外科外来までお問い合わせください。


 覚醒下手術による脳腫瘍摘出術

 言語、随意的運動・体性感覚、視覚や頭頂葉機能を守りながら最大限の摘出を可能とすることができる。脳磁図(MEG)、高磁場MRIによる機能的MRI(functional MRI; fMRI)、拡散テンソル画像による神経線維抽出(DTI tractography)の解剖情報を評価し、それらをニューロナビゲーションに取り込む(functional neuronavigation)。術中には手術操作部位をニューロナビゲーションによって脳機能位置情報を確認しながら脳電気刺激や脳電位測定(運動誘発電位;MEP)を行い、かつ神経症状を診察しながら病変摘出を行います。


 症例を提示します。
 右上下肢のつっぱり感を訴えて来院された若い女性の頭部MRIです。真ん中にある白い部分が腫瘍です。
 足の動きを担う脳の近傍の腫瘍を覚醒下手術にて摘出しました。 術後一時的な麻痺が出現しましたが、2週間で回復し、歩いて退院されました。
 腫瘍は、予後に大きく影響するため最大限摘出する必要があり、しかも症状を出さずに社会復帰していただくため、覚醒下手術を中心に集学的治療を当院では行っております。


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