医学部長就任にあたって
札幌医科大学 医学部長 仲瀬 裕志
札幌医科大学同窓会の皆様、平素より本学医学部の教育・研究・診療、そして北海道医療の発展に格別のご支援を賜り、心より御礼申し上げます。令和8年4月1日付で、札幌医科大学医学部長を拝命いたしました、仲瀬裕志でございます。身に余る重責ではありますが、同時に、札幌医科大学が次の時代へ大きく飛躍するための大切な時期に、その舵取りの一端を担わせていただくことに、強い使命感と覚悟を抱いております。
札幌医科大学は、1950年の開学以来、北海道の地に根差しながら、国内外の医療・研究・教育の最前線に多くの人材を送り出してまいりました。本学の卒業生は、道内各地の地域医療を支え、国内外の研究機関で新たな医学を切り拓き、臨床の現場で一人ひとりの患者さんに真摯に向き合ってこられました。その歩みこそが、札幌医科大学の誇りであり、何よりも大きな財産です。
私は今、医学部長として、札幌医科大学を全国屈指の医学部へと押し上げたいと考えております。これは単なる掛け声ではありません。北海道にある公立医科大学としての使命を果たしながら、教育の質、研究の独創性、臨床力、そして人材育成力において、全国から「札幌医大で学びたい」「札幌医大で研究したい」「札幌医大とともに医療を変えたい」と思われる大学を目指すという、明確な決意です。
そのために、私が最も力を注ぎたいのは、基礎研究の充実と教育の再構築です。
医学は、臨床の現場から生まれる問いによって前へ進みます。目の前の患者さんを救いたいという切実な思いが、病態の解明へ、治療法の開発へ、そして次世代の医学へとつながっていきます。その根幹にあるのが基礎研究です。基礎研究は、すぐに目に見える成果だけで評価されるべきものではありません。十年後、二十年後の医療を変える種をまく営みであり、大学医学部が担うべき最も重要な使命の一つです。
札幌医科大学には、臨床の現場に深く根差した強みがあります。地域医療、がん、再生医療、免疫、感染症、ゲノム医療、AI・デジタルヘルスなど、今後さらに発展し得る領域があります。これらを孤立した点ではなく、基礎講座と臨床講座、大学院、附属病院、地域医療機関が有機的につながる「面」として育てていく必要があります。臨床の問いを研究室に持ち帰り、基礎研究で磨き上げ、得られた知を再び患者さんと地域に還元する。この循環を、札幌医科大学の揺るぎない強みにしてまいります。
同時に、教育の充実なくして大学の未来はありません。齋藤前医学部長のもと、本学では医学教育分野別評価への対応、自己点検評価、PDCAサイクル、IR活動の強化、臨床参加型実習の充実など、医学教育改革に向けた重要な基盤が築かれてきました。私はその流れをしっかりと継承し、さらに発展させたいと考えています。
これからの医師には、知識や技術だけでなく、自ら問いを立てる力、多職種と協働する力、地域を理解する力、データやAIを正しく使いこなす力、そして何より、患者さんに寄り添い続ける人間力が求められます。学生一人ひとりが、自分の成長を実感しながら学び、失敗から立ち上がり、挑戦を恐れず、世界に目を向けることのできる教育環境を整えてまいります。
特に、MD-PhDをはじめとする研究医・Physician-scientistの育成は、本学の将来を左右する重要課題です。若い時期から研究に触れ、臨床と研究を往復しながら医学の本質を学ぶ人材を育てることは、札幌医科大学が全国屈指の医学部となるために不可欠です。学生、大学院生、若手医師、研究者が、講座や診療科の壁を越えて集い、互いに刺激し合い、新しい医学を生み出す場をつくっていきたいと考えています。
その実現には、同窓会の皆様のお力がどうしても必要です。札幌医科大学の同窓生は、道内外の医療現場、研究機関、行政、教育機関、そして国際舞台で活躍されています。皆様の経験、知恵、ネットワーク、そして母校への思いは、学生や若手医師にとって何にも代えがたい財産です。母校をさらに高めるために、ぜひ今一度、札幌医科大学に力をお貸しください。
学生に夢を語ってください。若手研究者を励ましてください。地域医療の現場で培われた知を大学に還元してください。札幌医科大学から新しい研究の芽が出ようとするとき、その芽を育てる土壌となってください。私たち教職員だけで大学を全国屈指にすることはできません。卒業生、在学生、教職員、附属病院、地域医療機関、そして北海道全体が一つの大きな力となってこそ、札幌医科大学は次の高みへ進むことができます。
目の前の一人を救うために、明日の医療を創る。
この言葉を、私は札幌医科大学医学部の進むべき道として胸に刻んでいます。北海道の医療を守り、日本の医学を前へ進め、世界に発信できる大学へ。教育と研究を両輪として、臨床の力をさらに高め、次代を担う若者たちが誇りを持って学べる医学部へ。札幌医科大学を、必ずや全国屈指の医学部へと育ててまいります。
同窓会の皆様には、これまで以上のご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。札幌医大の未来を、私たちの手で、ともに創ってまいりましょう。