退任教授・役職者

退任のご挨拶

免疫・リウマチ内科学分野
教授
高橋 裕樹

この度,2026年3月末日をもちまして札幌医科大学を定年退職致しました.1994年5月に内科学第一講座の助手として働き始めた当初はこんなに長く本学にいることになるとは思ってもいませんでしたが,当時,今井浩三先生が教授として就任した直後で,リウマチ膠原病グループを担当することになったのが全ての始まりでした.内科学第一講座は消化器・腫瘍・免疫を3本柱とした教室でしたが,リウマチ膠原病について専属で行うスタッフは私が初めてであり,その分,診療はもちろん,研究・教育の一切を委ねられることとなりました.

少ない臨床経験と乏しい知識の中で診療に当たることとなり,当時の患者さん・学生さんには本当に申し訳ないと思うことも多々ありますし,また,サポートして下さった他科の先生や看護師含むコメディカルの皆さんには本当に感謝申し上げます.私自身のリウマチ膠原病診療はまさに促成栽培ではありましたが,北海道はリウマチ膠原病診療のレベルが高く,しかも大学間・病院間の垣根が低い地域であり,北海道大学をはじめ他大学の先生や専門医の先生からもたくさんのご指導を頂くことができました.また,20世紀末から,リウマチ膠原病に関しては,新しい概念や治療法が導入され,パラダイムシフトと呼称されるような変革を身をもって経験でき,大変刺激的な大学病院での生活を送ることができました.

特に私が入局した当時の谷内昭教授が期待されていた,モノクローナル抗体による分子標的治療が21世紀初頭に癌のみならず,関節リウマチのような慢性炎症性疾患にも普段使いされるようになったのは驚きでもありました.さらに,シェーグレン症候群の患者さんが多く,関わる機会が多い北海道にいたからこそのセレンディピティであったと思いますが,20世紀までは同一視されていた,ミクリッツ病とシェーグレン症候群が異なる疾患であり,新たなIgG4関連疾患という全身性疾患の概念確立に多少でも貢献できたことは私のちょっとした自慢です.この経緯に関しては最終講義でも述べておりますので,機会がありましたらご参照ください(札幌医学雑誌95巻).

2013年に内科学第一講座が消化器・免疫・リウマチ内科学講座となり,さらに2016年に消化器内科と,免疫・リウマチ内科に分かれ,2017年に同科の初代教授として就任したわけですが,スタッフ3人のみでのスタートで,各自の負担も大きく,この当時を支えてくれたメンバーや同門の先生たちにもお礼申し上げます.2020年からはコロナ禍も重なり,制限のある診療・研究活動となりましたが,日本シェーグレン症候群学会理事長として貴重な経験もできましたし,なにより,リウマチ膠原病に興味を持った若い先生が当科を選択してくれたことが一番の喜びでした.教室の主宰者としては9年間と決して短くはない期間でしたが,その間に達成できたことはわずかで,しかも,まだ北海道のリウマチ膠原病診療を支える医療陣の育成は道半ばだと思いますが,何とか次の世代にこの教室を託すことができて,安堵しています.

リウマチ内科医は膠原病を主体に診療することから複数の臓器障害を含め,全身をみる必要性があり,その点では内科医の王道とも言えますし,一方で基盤に多彩な免疫異常があり,これらに関わる多くの免疫関連分子や細胞群を対象とした分子標的療法を使用することは演繹的でもあります.まだまだ解決されていない課題も多く残されており,これからの若い皆さんの活躍に期待したいと思います.

最後となりますが,大学・病院ともに以前に比べ,益々厳しい評価にさらされ,経済的にも大変な時期が続くと思いますが,札幌,さらに北海道の住民にとって本学は誇りでもあり,最後の砦でもあろうかと思いますので,皆さんの一層のご活躍・ご健闘をお祈りしたいと思います.また,私もまだ,本学の同窓会にも関わっていますので,多少でもお役に立てますようご協力させて頂きます.長い間,本当に支えて頂き,ありがとうございました.