退任教授・役職者

退任のご挨拶

先端医療知財学教室
教授
石埜 正穂

まず、全国の医学部で初めて知財の教室を設けて私を教授に迎えてくださった札幌医科大学に深く感謝したいと思います。特に、秋野豊明元学長、今井浩三元学長、黒木由夫元医学部長ほか、当時の執行部の諸先生方に敬意を表します。

おかげさまで、実務に根差した知財の研究や啓蒙活動などを通して、日本の医療系の産学連携の分野で思う存分活躍することができました。特に、医療の分野で知的財産法を活用する場面で生じる様々な課題を、医療・医学研究現場という従来にない斬新な視点に立って合理的に抽出し、然るべきあり方を論文や学会、講義・講演、委員会などで積極的に提案することができました。

一方で学内でも、多数の研究成果の技術移転に関して、知財化や、企業との交渉・契約に主導的に関与する機会に恵まれました。そのうち実際に医療の現場で実用化されたものも沢山あります。そして特にこれは製薬企業に勤めていても滅多に叶わない経験なのですが、2件の大型案件の実用化のお手伝いをさせていただくことができました。2件のうち1つはステミラック注で、もう1つは、最近承認されたばかりのダトロウェイです。これらのシーズはもちろん本望先生、濱田先生という素晴らしい研究者によって生み出されたものに他なりませんが、社会実装(実用化)に至るステップに縁の下で尽力できたことは大変な僥倖でした。

ステミラック注については、市場化に必要な特許を取得して、ニプロとのライセンス契約に結びつけることができたほか、当時整形外科教授だった山下学長と本望先生が進めた医師主導治験を、AMED橋渡し研究支援拠点の分担機関代表者としてお手伝いすることができました。ダトロウェイについては、特許や第一三共とのライセンス交渉等を通して、大学の貢献を最大限反映させてもらうことができました。これらが実際に医療の現場で生かされるに至ったことは本当に喜ばしいことです。その結果、大学に多額の実施料収入が入ってくる見込みですが、これを今後、第三、第四の新しい医療技術を生み出すための投資として是非有効に生かしてほしいと願ってやみません。

教育面では、全国医学部に先駆けて、学部生、大学院生に必修講義として知財教育を施すことができました。これは知財教育を受けた学生が将来研究者として実用化に繋がる研究成果を出したときに、頭の片隅に残っていた知財講義の記憶を思い出して、いち早く大学の知財部に相談に来て頂くことを期待した、長期的な戦略です。今後その成果が実を結んでいくことを願っています。

退職後ですが、特設講座(スタートアップ・研究支援講座)の特任教授として、引き続き先生方の研究戦略相談に対応させて頂けることになりました。今後しばらくの間はまだ大学におりますので、引き続きどうぞよろしくお願いします。