退任教授・役職者

退任のご挨拶

神経科学講座
教授
長峯 隆

2008年4月に赴任して以来、15年間、札幌医科大学にお世話になりました。生理学第二講座が神経科学講座と名称を変更しての出発にあたっての舵取りを行なうこととなり、無我夢中で進んで参りました。

学術領域の神経科学は、1980年台に急速に進展した非侵襲的脳機能計測法を新たな道具として、基礎医学に臨床、病態分野を加えてきました。従来の生理学という範疇を拡げようという本学の方針のもと、基礎と臨床の境界領域を意識して赴任し、前任地で行っていた取り組みを本学の学部教育へ導入してきました。

医学部低学年での講義の中に臨床視点の内容を含むようにし、臨床検査を体験する実習では、基礎事項を振り返って病態解明への考察を取り組めるように企画しました。高学年の臨床実習期間の中では、神経内科のローテートの中で、脳波を再度学修する機会を設けていただきました。

研究面では、神経内科、脳神経外科、精神神経科、リハビリテーション科、放射線科、放射線部門などのご協力をいただき、保健医療学部の方々にもご参加いただいて、ヒトを対象としたシステム科学を目指しました。電気生理、画像解析の手法を用いて、複数領域の機能を同時に計測、解析し、相互の時間関係、空間的関係の解明を目指しました。まだまだ発達途中だと思いますが、今後の本学の研究面で新たな可能性を広げることができていれば、幸いです。

医学部及び大学全体に関わるところでは、途中から加わったGP事業「双方向型医療コミュニケーション教育の展開」のほかに、学生サポートシステムの導入、附属総合情報センター関係のセキュリティ規定の整備などに携わりました。また、研究担当副医学部長としては、医学部大学院修士課程の講義体制変更、大学院学位審査体制の見直しなど、機関別評価の時期とも重なり、貴重な体験をさせていただきました。限られた資源の中での実施には限界がありましたが、頂戴した多様なご要望を検討することで、次の整備に向けての継続性を考えることもできたかもしれません。皆様方のご協力に厚く御礼申し上げます。

これらに増して長らく携わったものは、医学教育分野別評価への受審準備でした。平成24年度に医学部長の黒木由夫先生のご指示でカリキュラム委員長を拝命し、平成26年度導入の第一弾のカリキュラム改訂を準備しました。その後も、歴代学部長の堀尾嘉幸先生、三浦哲嗣先生、齋藤豪先生のご指導の元、評価基準に対しての対応を考えて参りました。黒船来航以来の医学教育体制の再構築が全国で求められる中、本学の特徴を残しながら全体像を設計していく中で、極力、評価基準そのものの理解を心がけました。原本の世界標準の意図を見つめることで、継続する基準改定に適合しやすいと考えた次第です。他大学出身者の私が基盤設計をすることの良否の判断は別れるところだと思いますが、これまでとは異なる発想で、中長期的な選択範囲が広まっていくことを祈っております。

私の実家は、鹿児島県大隅半島のほぼ中央に位置しております。中学で実家を離れてから、鹿児島県の医療情勢を把握しないまま、縁あって北海道に赴任し、地理的に離れた場所における医療問題を経験することになりました。気候、風土の中に南北、東西の差を実感する一方、中央との距離では似通った問題点も体感いたしました。全学の教員、事務職員、学生の皆様からのご厚志に深く感謝するとともに、この経験を、次の世代に伝えることができればと思っております。

札幌医科大学および医学部同窓の皆様方のご活躍、ご発展を祈念して、ご挨拶とさせていただきます。