退任教授・役職者

退任のご挨拶

リハビリテーション医学講座
教授
石合 純夫

2005年1月の札幌医科大学着任以来18年と3か月,医学部リハビリテーション医学講座,附属病院リハビリテーション科・部で大変充実した時を過ごさせていただきました.着任当時は,「リハビリテーション科」自体の知名度も低く,リハビリテーション訓練室こそ当時としては比較的整備されていましたが,セラピスト(理学療法士,作業療法士,言語聴覚士)の人数があまりに少なすぎました.そのため,独立したリハビリテーション科となったにもかかわらず,各診療科からのご依頼があっても,優先順位の高い患者さんに申し訳程度の介入しかできませんでした.それから10年余りは闘いの日々で,2018年にようやく常勤セラピスト数を当初の約3倍に増やすことができました.

一方で,札幌医科大学に来て感じたことは,診療科間の垣根が低いというか,フレンドリーに交流できることでした.リハビリテーション科は,臓器別診療科と違い,全診療科と連携し,軽いフットワークで患者さんたちの生活機能の維持と回復に貢献しなければなりません.その意味で,当科の医師,リハ部のセラピストは大変やりやすかったのではないかと思います.附属病院では,スポーツ医学センター,脳機能センター,慢性疼痛センターの構成メンバーにも加えていただき,また,保健医療学部の協力も得て,理学療法士・作業療法士 研修センターを主宰させていただいたことも,リハビリテーション医学・医療の地位向上を実感できた出来事でした.

医学生と医師の教育という点では,当時は「新専門医制度」と言っていましたが,これに向けて,教室の充実を図ることが急務でした.当初は,私と村上孝徳助教(現講師)の2名で診療を始めましたが,徐々に学外での研修を終えたリハ科を目指す医師が戻ってきて教室の体制が整いました.また,教室の講座化についても着任から6年間苦労しましたが,2011年に学科目からリハビリテーション医学講座に昇格させられました.当時から,すでに道内の多くの病院との連携を進めていましたが,リハビリテーション科専門医育成に向けて,数々のご支援をいただき,2018年度から「札幌医科大学リハビリテーション科専門研修プログラム」をスタートすることができました.最近では,医学生や初期臨床研修医への情報提供も進み,若い先生たちが概ね順調に当科の専門研修に参入してくれるようになっています.

私自身の専門性という意味では,高次脳機能障害の研究と臨床に継続性をもって力を入れてきました.脳神経外科との覚醒下手術における協力関係からは,術後に障害が起こらないようにするリハビリテーション介入という意味合いも含めて,セラピストの資質向上と研究的姿勢の育成が得られました.また,本学附属病院は高次脳機能障害支援普及事業の支援拠点機関とはなっていませんが,私の名前を知る北海道の脳外傷友の会コロポックル・NPO法人コロポックルさっぽろの皆さんから支援の依頼があり,多くの患者さんとお付き合いする機会を得ました.また,日本各地の高次脳機能障害支援拠点機関などからのお招きで,道内外で多くの講演をさせていただいたのも良い思い出です.

長いようで短い18年間でした,この間に,札幌医大のリハビリテーション科・部を少なくとも国公立大学の中では,一人前の姿に育てることができたと自負しています.それも,ひとえに学内外からの当教室へのご支援のおかげです.今後とも,札幌医科大学リハビリテーション医学講座,リハビリテーション科・部をどうぞよろしくお願いいたします.私は,退任後も札幌市内で自分の専門性を生かした診療を続けます.何かお役に立てることがございましたら,お声がけをいただけますと幸いです.本当にどうもありがとうございました.