就任のご挨拶
札幌医科大学附属病院 病院長 土橋 和文
病院長3期目を拝命しました医学部28期:土橋(つちはし)です、宜しくお願いいたします。AMICUS編集担当の学生さんから「インタビュー記事:学生時代・専門の分野・若い医師へのメッセージなど」との依頼を受けましたが、まだまだコロナ渦中、学生さんを感染させてはいけません。今回も文書を寄せ稿閲にて勘弁いただきましたご容赦ください。
附属病院は、日々5000人が交差する巨大空間であり、医療の実践と研究・教育の場であるのみならず、「生命科学との統合や未来を語り開かれた場」であり続けたいと願っています。後世検証される複合災害「新型コロナ感染症」対応において当院は、これまで培った「臨床力」と「危機管理力」を十分に発揮したが、同時に多くの「備えるべき課題」を露呈しました。
私事で恐縮ですが、先日、本誌に教授退任の思いと感謝を掲載いただいた。が、これも、コロナ禍の特異現象であろう、積み残した課題と問題点多くせめて道筋だけつけるよう御推挙賜り、この機会を得ました。何やら「不戦敗の再試験」の気配が漂いますが、せめて長すぎる弊害なく機敏に次世代にバトンタッチと思っています。
さて、札幌医科大学は、北海道全域は基より国内外の医療の現場・行政・団体で活躍する多くの医療人を輩出してきた。「聞く」「診る」「語る」「記録する」の臨床力がしっかりしていると評判です。このことは、入学志望者が各方面で活躍の諸先輩をロールモデルとしていることからも窺われます。また、運動部を中心にサークル所属率は随一で先輩・同輩・後輩の繋がりが強く、在学卒業生は学業のみならず医療者として肝要な「人脈」を得ることができます。新たに入学された皆様には、ぜひ、知識のみならず情熱と理性、そして困難にたちむかう真の「教養」を身につけていただきたいと存じます。また、ご卒業の皆様には、これまで培った力をいよいよ現場で発揮するときをむかえました。大いに期待します。医療は一生をかけるに十分に難攻不落、手強いものです。皆さんの医学入門セミナーでお話しますが、いずれ、「医療者は病院をでる覚悟」はもって励みましょう。
最後になりますが、当院の近々の課題を含めて列記し所信の表明といたします。
1.5つの重点かつ早期実現すべき目標
(1)「増改築と災害・感染症医療などの高機能付加」
これまでの高機能化に加えて、戦略的な高度機器の更新と配分、外来診療棟の再配置、高度救急救命センター・多目的HCUの整備拡充によるによる5疾患・5事業の機能、ことに2.5次医療の強化、感染症版 DMATの本格的整備と教育体制の構築:感染症診療体制への発展、当該地区の災害医療の中枢機能の強化
(2)「働き方改革」
勤務実態の客観化と統一基準の策定、徹底した医療職の本業回帰と「ゆとり」の創出と副業スキームの見直し、ダイバーシティー(男女共同参画など)の取り組みの推進
(3)「デジタル戦略:DX」・「どこでもドア」構想
DX戦略室の設置(診療、教育、研究)とPVファースト(健康相談機能)・教育コンテンツの作成、オンライン診療の本格的実施:第三のネットワーク構想と病院(遠隔医療センター)の基盤の創設
(4)「医療職の研修強化」
教育力による医療連携の強化、研修医スペース・講座との連携・教員定数の見直しと病院教授の認定配置による研修および診療医を増加、専門看護職・移植遺伝専門職・移植コーディネーター育成、PT/OT研修制度の発展、他の医療職域など専門職の育成体制整備
(5)「経営の健全化と財務体質の強化」
「魔法の杖」はないがこれまでの当院の強みを生かし、機能分担と病・病連携の推進、短期入院療養・手術への集中投資を行う。加えて、他の諸課題の解決(部署および疾患群別の採算、物流と在庫調整、医事請求業務[保留・未請求・未収対策]、DPC対策[機能係数対策、病名見直]、疾患別フロアサポーター制度と徹底的クリニカルパス化による効率化)。
2.5つの近未来の課題
(1)「医療安全・医療倫理」
これまでの医療安全・医療倫理と医療の質の着実な体制整備の継続
(2)「医療職の医業集中」
PFM強化・医療秘書・医事職員によるフロアーサポーター制度による診療科横断的な実施体制を構築
(3)「診療管理体制と広報」
実績把握の取り組み強化、研究支援、特殊領域職能集団の体系化支援、学会登録などの業務支援強化
(4)「チーム医療の強化支援」
診療センター・チーム医療の支援、多重外傷・火傷、精神科救急、医療情報部と臨床研究支援、集学的治療センターの組織化と産学連携(緩和ケア、腫瘍診療、心臓血管センター、ブレストセンター、ゲノム医療と臨床遺伝、内視鏡診断治療、消化器、脳機能、肝疾患、スポーツ医学センター、慢性疼痛と緩和診療、先端聴覚医療センター、HIV、スポーツ、アレルギー診療など)
(5)「キャンパス将来構想」
教育研究棟改築の立案、薬局群を中心とした「健康増進の街」と医局棟移転計画の立案、地域医療教育と広域災害医療センターの新規増設、スキルスラボとサージカルセンターの全国展開:宿泊施設整備、公立総合医療系の発展・他大学連携など
挙げたら正直キリがありません。札幌医科大学病院期待大です。皆様のご指導を期待しています。
略歴
土橋 和文(28期)
- 昭和50年3月
- 函館ラ・サール高等学校 卒業
- 昭和56年3月
- 札幌医科大学医学部医学科 卒業(28期)
- 昭和56年4月
- 札幌医科大学医学部内科学第二講座 研究生
- 昭和59年5月
- 国立循環器病センター内科心臓部門レジデント
- 昭和62年6月
- 札幌医科大学医学部内科学第二講座 助手
- 平成元年5月
- ロンドン大学セント・トーマス病院レーン研究所 心臓血管部門
- 平成6年2月
- 札幌医科大学医学部内科学第二講座 講師
- 平成20年1月
- 札幌医科大学医学部内科学第二講座 准教授
- 平成25年8月
- 札幌医科大学医学部病院経営・管理学講座 教授
- 平成30年4月
- 札幌医科大学附属病院 病院長
- 令和4年3月
- 定年退職
- 令和4年4月
- 札幌医科大学理事 附属病院病院長