退任教授・役職者

退任のご挨拶

循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座
名誉教授
三浦 哲嗣

1980年に札幌医科大学を卒業して以来、国内留学と海外留学の約3年、道内関連病院での1年を除いた約37年を札幌医科大学で過ごし、本年3月末をもって退職いたしました。この間、多くの小過と少数(?)の大過があったことは疑いありませんが、曲がりなりにも定年まで職務を務めることができましたのも、多くの先輩のご指導、同僚の意見や協力、後輩諸君の支援の賜物と心より感謝申し上げます。講座・診療科については、心臓血管外科や高度救命救急センター、ICUのご協力も得て、新規の治療機器・デバイスをほぼ全て導入することができました。そうした新規技術の導入のほか、診療チームの再編、多職種連携の推進によって診療の高度化はもとより、新規入院患者の増加と平均在院日数の短縮に貢献することができたのではと思っております。研究に関しては、英文論文発表数を各研究グループのバランスよく増加させることに努力し、論文の被引用回数の総計は2021年1月中旬の時点で12,362回となり、一定の成果を挙げることができたと自負しております。課題として最後まで十分には解決できなかったことは後期研修医のリクルート数が年度によって大きく変動することでした。この点は、北海道医療枠(現 ATOP-M枠)卒業生が増加する今後に期待しています。

講座の教授のほか、教務担当副医学部長、教育担当副病院長、また最後の3年間は医学部長を務めさせていただきました。残念ながら私自身は、教員採用後の35年間で教育、臨床、研究、大学運営のバランスが良くとれた教員であったとは言えませんが、それぞれに優れた教師や先輩に恵まれていたことは疑いありません。黒木由夫医学部長のもとで副医学部長に就任してようやく医学部組織と運営の全貌が理解できたといった状況でしたが、その後も色々な方々との議論のなかで課題の在り処や対応について学ぶことができました。医学部長としては、医学分野別教育評価基準を踏まえた教育プログラム・運営体制の改革、入試枠の違いを考慮した新カリキュラムの導入、地域医療総合医学講座の再編、附属総合情報センター在り方検討、教員業績評価の改革、遠隔授業の導入をはじめとするCOVID19対策、アイヌ遺骨の問題への対応などの課題に対して、多くの教職員の方々のご協力によって何とか一定の成果を挙げることはできたように思います。しかし、いずれの課題も最終的な成果を評価できる時期ではありませんので、これからの方々のお力で良いものにしていただきたいと願っております。

札幌医科大学での日々を振り返って実感することは、当然のことではありますが、組織としての機能は人材と体制が両輪となっており、それらにとって明確な目的や目標が必要であるということです。札幌医科大学の使命は「建学の精神」に表現されていることの達成ですが、それには現役の教職員だけの力では必ずしも十分ではないことは医学部長時の実感です。医学分野別教育評価基準に沿って、2018年に札幌医科大学医学部ステークホルダー懇談会を設置した理由もそこにあります。今後は、札幌医科大学医学部の同窓生の一員として、同窓会諸氏とともに母校へどのような貢献が可能であるのか考えていきたいと思っております。