退任教授・役職者

病院長退任にあたって

札幌医科大学 整形外科学講座 教授 山下 敏彦

 2014年4月から2018年3月まで、4年間にわたって附属病院長を務めさせていただきました。この間に、病院・大学職員の皆様、そして同窓の皆様から頂きました、ご支援、ご厚情に心より感謝申し上げます。

 就任時より、毎月、病院長メールマガジン「病院長室から2014(~8)」を職員向けに配信してきました。病院運営に関する病院長としての意思・方針の伝達や、種々の情報の共有を目的として、毎月せっせと作成・配信してきましたが、どの程度効果があったのかはわかりません。

 以下に、メルマガ最終号 N0.48(2018年3月号)を掲載させて頂きます。4年間の総括と、退任にあたっての思いを込めたつもりです。甚だ恐縮ですが、これをもって病院長退任の寄稿文とさせて頂きたく存じます。4年間、本当にありがとうございました。

病院長室から2018 No.48(Final Issue)

 2014年4月以来、4年間48号にわたりお送りしてまいりました本メルマガも今号で最終回を迎えました。毎度、くだらない前振りで大変失礼しましたが、本文では病院の運営状況や連絡事項など、職員の皆様に知って頂きたいことを伝えてきたつもりです。少しでも、院内・学内の情報共有、意思伝達に貢献できたとしたら嬉しいです。
 メルマガ第48号(最終号)をお届けいたします。

2018年3月22日
病院長 山下敏彦

●H30年2月の患者月報・KPIについて

  • 収支は目標に比べ、2,100万円のマイナス
  • 外来単価は、13,975円で過去最高記録更新!
  • 平均在院日数も、12.8日で過去最短記録更新!

 1月後半からのインフルエンザおよびRSウイルス感染症の拡大により、多くの病棟において入院制限をせざるを得ない状況となりました。このため、2月の入院患者数は目標より723人のマイナスとなりました。これに加え、医薬材料費率が40.6%と目標より3.0%も高くなったことなどにより、2月の収支は目標より2,100万円のマイナスとなりました。
 一方、入院単価、外来単価は目標を大きく上回り、平均在院日数もさらに最短記録を更新する12.8日となりました。
 主な指標を4年前の2014年4月と比較してみたいと思います。

2014年4月 2018年2月
入院
単価
6万3,060円 7万1,234円
外来
単価
9,817円 1万3,975円
手術
件数
28.2件/日 31.2件/日
平均
在院
日数
16.1日 12.8日
医薬
材料
費率
35.9% 40.6%

 このように、手術件数を増やすなどして入院・外来単価を増加させ、患者数はある程度減っても在院日数を短縮してコンパクトで効率の良い経営を目指す、という方向性については一定の成果が得られていると言えます。

 一方で現状における問題点としては、以下のような点が挙げられます。

1)医薬材料費の増大:最近では医薬材料費率が40%程度で高止まりしており、病院収支悪化の要因となっています。背景として、内視鏡手術等に伴う高額医療材料や免疫チェックポイント阻害薬などの高額医薬品の使用量増加があります。医薬材料費の増加は特定機能病院の宿命であるという側面もありますが、今後は経営サイドとしては、医薬材料のベンチマークを利用した適正価格の設定、値引き交渉を推進すること、そして医療の現場では、非特定医療材料の過剰使用の抑制、高額医薬品の適正使用などに留意していく必要があります。

2)患者数の減少:入院患者数の増加を目指さないとは言え、やはり大幅な患者数は収支の悪化をもたらします。病院全体の病床利用率の目標は86%に設定されています。しかし、80%に満たない病棟が常時複数みられるという状況は一向に改善されません。病床利用率を維持できない診療科にとっては、現状の病床数が多すぎるとも判断されますので、今後、新棟完成、既存棟改修に伴い病床数を調整していくことが必要になります。また、診療科によっては、入院待機患者を含め、患者自体が減少しているケースもみられます。地域医療連携や同門の病院・医院との連携を密にして患者数の確保・増加に努める必要があります。

●退任にあたって

 病院・大学職員の皆様、4年間大変お世話になりました。この4年間、皆様には何かとお願いすることばかりでしたが、にもかかわらず一向に経営状況は好転せず、大変申し訳なく存じます。これもひとえに私の至らなさ、力不足によるものと深くお詫び申し上げます。
 一方、4年の間、大きな医療事故、災害もなく経過することができましたのは、医療安全部をはじめとする全ての病院職員の皆様のご努力のお陰と心より感謝申し上げます。
 病院新棟も完成し、当院も新たな時代への突入となりますが、病棟移転、既存棟の改修、診療報酬改定や消費税増税など前途に待ち受ける課題は山積していると言えます。しかし、土橋新病院長のもと、新たな病院運営体制で、病院職員が心を一つにして力を合わせていけば、札幌医大附属病院には必ずや明るい未来が開けてくるものと信じています。
 皆様本当にありがとうございました。