新任教授ご挨拶
札幌医科大学医学部分子生物学講座 教授 鈴木 拓
2012年8月1日付けで札幌医科大学医学部分子生物学講座教授を拝命いたしました。本講座は生化学第2講座を前身とし、先代の故・豊田実教授の代に分子生物学講座と改称しました。札幌医科大学における基礎医学研究と教育の発展のため、教室員一同とともに努力して参りたく存じます。
私達の研究室では、疾患とエピゲノムとの関わりを大きなテーマとしております。生命の設計図であるゲノムはDNAを媒体として記録されていますが、それを運用するために必要な情報もまた、ゲノムは記憶しています。個々の遺伝子の働きをどう制御するかという情報は、DNAのメチル化や、ヒストン蛋白のアセチル化・メチル化などの形で記録されており、私たちはそれをゲノムの上(epi-)に載せられた第2のゲノム情報、すなわちエピゲノムと呼んでおります。エピゲノムが正しく機能することで、正常な分化や恒常性維持が可能となる一方、エピゲノム機構の破綻はさまざまな疾患を引き起こすと考えられています。その中でも、私達はがんとエピゲノム異常をメインテーマとして研究を行っています。これまでに、DNAメチル化異常が発がんメカニズムとして重要であることを明らかにしてきましたが、さらに現在はDNAメチル化を分子マーカーとして応用することで、がんのリスク診断や早期発見に応用する試みを模索しております。さらには、エピゲノム異常を修正することで治療につながるような研究を志していきたいと考えております。
さらに、診療情報、画像システム情報の診療・教育・研究への有効利用、診療実績公表・がんなどの重点疾患・専門医登録など統計資料作成、説明責任ツールの開発、メディカルライブラリー構築、医学教育・訓練サポート活用への整備を計りたいと思います。
豊田先生は、がんエピジェネティクスという研究分野を発展させたパイオニアの一人でした。その業績が高く評価されて教授に就任されてから、わずか3年余りでがんのために逝去されたことは、例えようのない悲劇であります。豊田先生の死を惜しみ、不肖の弟子に過ぎない私にその道を継ぐ機会を与えてくださった医学部教授会のご英断と激励に深く感謝し、研究・教育に全力を捧げることを改めて誓いたいと存じます。基礎研究を通して臨床に還元できるような結果を残したい、さらにはがんのみならず様々な疾患とエピゲノムについてもっと明らかにしていきたいという豊田DNA、いえ、豊田エピゲノムは、今も研究室の中に息づいております。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
略歴
鈴木 拓(すずき ひろむ)41歳
所属札幌医科大学医学部分子生物学
学歴
- 平成元年(1989)3月
- 釧路湖陵高等学校 卒業
- 平成7年(1995)3月
- 札幌医科大学医学部 卒業(医大42期)
- 平成12年(2000)3月
- 札幌医科大学大学院医学研究科 修了
職歴
- 平成7年(1995)4月
- 札幌医科大学第1内科 研修医
- 平成8年(1996)4月
- 札幌医科大学大学院 大学院生
- 平成12年(2000)6月
- Johns Hopkins大学癌研究センター研究員
- 平成16年(2004)4月
- 札幌医科大学医学部公衆衛生学講座 助手
- 平成19年(2007)4月
- 札幌医科大学医学部内科学第一講座 助教
- 平成20年(2008)4月
- 札幌医科大学医学部内科学第一講座 兼 生化学講座(現・分子生物学講座) 助教
- 平成23年(2011)7月
- 札幌医科大学医学部分子生物学講座 助教
- 平成24年(2012)8月
- 札幌医科大学医学部分子生物学講座 教授
所属学会
日本癌学会、日本分子生物学会、日本内科学会、日本消化器病学会、日本エピジェネティクス研究会、日本消化器癌発生学会、日本消化管学会、日本分腫瘍マーカー研究会、日本臨床分子医学会、日本がん分子標的治療学会、日本RNA学会、日本電気泳動学会、American Association for Cancer Research、International Society for Oncology and BioMarker
学術関連受賞
平成16年 日本癌学会奨励賞
平成16年 日本分子腫瘍マーカー研究会奨励賞
平成17年 日本臨床分子医学会奨励賞
平成17年 日本医師会医学研究助成
平成20年 日本消化器癌発生学会最優秀賞
免許・資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会認定消化器病専門医