会長挨拶

平成29年度札幌医科大学医学部卒業式並びに大学院修了式
卒業証書・学位記授与式 祝辞

 平成29年度札幌医科大学医学部卒業式ならびに大学院修了式にあたり、同窓会を代表して祝辞を申し上げます。
 まずもって、札幌医科大学医学部65期の卒業生の皆様と、大学院医学研究科修士・博士課程を修了された先生がた、並びに本日の晴れ舞台を待ち望んでいらっしゃったご父兄の皆様と関係各位に、心からお慶びを申し上げます。

 さて、これから諸君は、医師として、医療人として生きることになります。そこで、医療人としての人生を歩んでいくうえで、私が日ごろから重要だと考えていることを述べ、贈る言葉といたします。

 一つ目は医療人である前に社会人でなければいけない。二つ目は、医療人として生きるためには職業人、つまりプロフェッショナルでなければならない。そして、三つ目は、良質な医療サービスの提供はもはや一組織ではできない。いわんや一人では絶対無理で、強固に連携したネットワークやチームを形成しなければいけない、ということです。

 まず、一つ目の医療人である前に社会人たれ、ですが、社会人としての基本的素養~礼儀・挨拶等~を身に付け、社会一般的に認められた法律、規則を守るということにつきます。事業体においては行動基準という形で文章化されたものがありますが、その基準の多くは極めて当たり前のことです。これらは常に意識していただきたい重要な事項です。

 第2に真の職業人であることが求められます。医学や医療技術は、ICT、AIの導入やゲノム医療に代表されるように、もはや革新的に進歩しています。医療の専門的技術や知識の習得にプロフェッショナルとして対応しなければなりません。しかしながら、医師は患者の身体に大きな侵襲を加え、その心の奥底に立ち入って診療を行います。したがって、医師は単に医学の深奥を極め、最新の医療技術を習得するだけでなく、高潔、清廉潔白な人格をもち、すべての患者を癒すために全力を尽くすという「医の倫理」に通じた「こころ」の鍛錬も怠らないでいただきたいと思います。心と技をもった職業人、すなわち真のプロフェッショナルとして、医療界をリードする存在になることを大いに期待しています。

 最後に、超少子高齢化、雇用環境の変化、医学・医療の進歩、ニーズの多様化等を背景に、これからの医療・介護・福祉を含む社会保障制度は大きく変容しようとしています。地域医療構想策定や地域包括ケアシステム構築がその一つですが、いまや医・医連携および医・介連携はもとより多職種連携のもとに協働していかなければ立ちいかないことは明白です。加えて、地域コミュニティや住民とも強固な繋がりを持ちながら自助、互助、共助を基盤とした共生社会をめざすことが喫緊の課題となっています。諸君は、医学や医療に関する先端技術や情報にのみ目を向けるのではなく、社会全般にわたる私たちを取り巻く環境の変化を読み取り、その中で医療・介護・福祉のあるべき姿を思い描き、その姿を創りだしていくチームの中心的役割を担う人財に育っていただきたいと考えます。

 結びになりますが、札幌医科大学を巣立つ諸君には、日本と言わず世界にも通用する医師、研究者として羽ばたいていただきたいと大きな期待を寄せるところです。しかし一方で、北海道で唯一の道立の医育機関の同窓生としては、北海道の医療から目を背けることはできません。是非とも、地域医療を構築するという視点からも自分のこれからの立ち位置を考えていただければ、同窓会会長としてこの上ない喜びです。何卒よろしくお願い申し上げます。

 以上、簡単措辞でありますがお祝いの言葉とさせていただきます。
 本日は誠におめでとうございました。

平成30年3月16日
札幌医科大学医学部同窓会
会長 田中 繁道