会長挨拶

平成22年度札幌医科大学卒業式並びに大学院修了式 卒業証書・学位記授与式 祝辞

札幌医科大学医学部同窓会 会長 矢花 剛(15期)

 最初に、この度の観測史上世界最大級の東日本大震災で、未曾有の甚大な被害に遭われた方々に、心から哀悼の意とお見舞いを申し上げます。

 さて、平成22年度札幌医科大学卒業式にあたり、医学部同窓会を代表して、一言お祝いを申し上げます。

 先ほどの厳粛かつ感動的な式典に引き続き、卒業証書・学位授与式に臨まれ、医学部長から直に、卒業証書と学位記を、手にされた卒業生の皆さんと、大学院医学研究科修士・博士課程を、修了された若き新進気鋭の先生がた、並びに今日の晴れ舞台を待ち望まれ、ここにご参列されておられる、ご父兄の皆様と関係各位に、心からお祝いを申し上げます。

 私どもの母校札幌医科大学は、昨年創基65周年・開学60周年を迎えました。「進取の精神と自由闊達な気風」、「医学・医療の攻究と地域医療への貢献」という、二つの建学の精神を掲げ、しかも「最高レベルの医科大学」を目指した、素晴らしいフロンティア・スピリットに満ちた環境の中で、6年間を過ごされた本学医学部卒業生は、58期生の皆さんを含めて総勢4,913名、前身の道立女子医学専門学校卒業生115名を加えますと、5,000名を超える医学部同窓会員が、道内はもとより全国各地の医療の現場と先端で、活躍しておられます。また、研究者として国際レベルで活躍されている卒業生も少なくありません。

 今や全国でも有数の医科大学・医学部のひとつに成長した本学を卒業される皆さんは、それを誇りにしてさらに研鑽を積み、患者様や医療界の方々からばかりでなく、多くの人々から信頼される臨床医、研究者に、成長されるよう期待しております。

 時代と共に,疾病構造が変わり、医療の最先端を走る再生・移植医学、ゲノムレベルの研究などの臨床応用が進めば、当然医師の役割も変わり、医療制度そのものも自ずと変化して行くものと思います。しかしながら、「医師と言うものは、自分がいかなる仕事に従事しているかを、承知していなければなりません。一旦医師になったからには、わが身はもはや自分の体ではなく、悩める人間のものなのです」。今から150年程前、28歳の若さで、長崎に来日して若き学生に説いた、近代医学教養の父とも称される、オランダ人軍医Dr.ポンペの言葉です。「患者の為に自己犠牲にする心のない者は、医師になってはいけない」というこの教えは、目覚ましい進歩と進化を遂げつつある、21世紀初頭の医学においても、その根幹をなす永遠の言葉であり、医療の原点だと思います。

 「医師になりたい」というモチベーションをもって入学され、ハードな勉学の傍ら、クラブ活動や趣味等など多方面でも青春を謳歌され、母校を巣立って行かれる卒業生の皆さんには、「若さと言う未知のエネルギー」と「無限の可能性」があります.初心を決して忘れることなく、そのモチベーションをさらに高め、「医師の道を歩んで来て良かった」と実感出来る日が訪れることを念願しています。

 卒後研修を道外で修めようと、希望に燃えておられる卒業生もおられると思います。何れか近いうち北海道に戻ってこられ、母校札幌医科大学のさらなる発展に寄与されると同時に、益々厳しくなって行く道内地域医療の過酷な現場で、心血を注いで、日夜頑張っておられる同窓の諸先輩と一緒に汗を流し、それを継承してくれる卒業生が、一人でも多くおります様期待しています。

 最後に、医学・医療の進歩には、生命科学を始めとする基礎医学の進歩が、その基盤にならなければならないと、一臨床医の立場から、確信しています。近い将来、本学卒業生と研究者の中から、ノーベル賞受賞者が誕生することを夢みつつ、卒業生の皆さんが、一昨年設立50周年を迎えた医学部同窓会へ入会されることを、心から歓迎して、祝辞とさせて頂きます。

平成23年3月18日
札幌医科大学医学部同窓会
会長 矢花 剛