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地域医療人間総合医学専攻:人間総合医療学領域

画像医学・医療情報管理学

スタッフ 教授 名 取   博  講師 平田健一郎  小井戸一光

Information Technology 時代の画像医学と臨床医療情報を担う人材育成
 いま診療の場では、種々の画像診断法による客観的記録、定量的分析、デジタル画像情報の処理による多次元画像、仮想化画像システム、病変の計算機診断、遠隔医学等の診療支援システム導入が進み、この分野は広く展開しつつあります。私達は診療経験から得られる発想と洞察に基づく研究課題を持って、理工学や情報科学の研究者との共同研究を行い、画像医学の基礎と臨床について研究する専門医を育成しています。
 医療情報の研究分野は、病院情報システムのみならず医療に関するあらゆる情報を収集、整理、活用とその管理に関する学問ととらえることができます。診療諸情報一つをとってみても、電子的な管理を活用することによって診療上の時間的・空間的な制約のかなりの部分を取り払うことができます。診療文字情報、デジタル画像及びデジタル生理生体信号記録等を含む診療諸情報に基づく電子カルテによる診療支援システムは、より良い医療の提供と患者への情報開示等を通じて現代医療を支える柱の一つになると考えています。ITの医療界への浸透にともなって、診療上のリスク低減と患者のベネフィット向上のために、患者さんを診る繊細な感覚を持ち柔軟な思考ができる、この領域の将来を担う専門性の高い人材が望まれており、その育成に力を注いでいます。


研究テーマ
1 画像医学、生理生体検査医学、無侵襲生体計測学   6 生体と画像の統合的重ね合わせfusion imaging
2 超音波医学、臨床超音波工学                7 画像認識と画像の計算機診断
3 内視鏡診断と内視鏡下治療                  8 コンピュータ支援画像診断学、診断の客観評価法
4 生体信号地図に基づく循環電気生理学的研究      9 遠隔医学
5 virtual realityの臨床応用と三次元画像処理       10 医療情報学、病院情報システム学
  多元画像診断


研究内容の具体例
 超音波画像の機能開発とデジタル処理:高分解能の超音波画像のデジタルデータを活用し、腹部、胸部等の臓器病変を解析し臨床応用について研究する。高解像度三次元高速グラフィックス解析、ドップラ血流分析と造影ハーモニック画像の比較解析、高次高調波超音波画像による組織超音波像等を用いた研究を行っている。
超音波内視鏡に関する研究:Interventionalな体内navigationに基づく画像診断と治療に関する臨床研究。高精細超音波内視鏡画像による消化管粘膜組織のルーペ像との対比や早期癌の進展の診断能の客観評価の研究を行う。
Virtualized Endoscopy:胸部のmulti slice CTデータの三次元画像処理で得た気腔の鋳型の表面に面を張って仮想的な気管支樹を作成できる。外形の観察とともに、気管支鏡の様に内腔から観察する仮想現実的検査は、内視鏡検査の事前に行えるシミュレーション検査として、現実の内視鏡では実現できない利点を持っている。他の部位への応用、CT以外のモダリティへの応用など、多彩な発展を期待できる。
 病院情報システム、遠隔診療支援システムの研究:病院情報システムを基盤とした電子診療録等の診療支援ツールの開発とその臨床応用について研究する。遠隔診療支援についてシステムのあり方を臨床医として研究する。


大学院での研究生活について
 研究ばかりでなく、生活基盤の充実をはかり、充実した研究生活と活発な学会活動を行い、国際学会へも参加します。臨床医としての能力を身に付けるため、希望する講座診療科等への関連学会認定専門医等の資格取得に必要な期間のローテーションの確保を考慮します。超音波診断と内視鏡診断については、学会認定専門医資格取得に必要な基本的診療技術を身に付け、症例を経験し、症例収集できる研修を行います。


大学院修了後の進路
 画像診断関連部門のスタッフ補充を目指して、学会認定専門医資格を取得し、高度な専門医となる進路があります。内科系専門医のための研修ローテーションを行い、画像関連の専門医を取得した医師は、都市中核病院のスタッフとして需要が高い状況です。超音波診断、内視鏡などは必須の日常診療ツールであり、X線、CT像との所見の対比の経験に基づく診療技術を持つことが、患者さんの要求を充たす信頼性の高い専門医療を提供できる医師として望まれる状況にあります。



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地域医療人間総合医学専攻:人間総合医療学領域

リハビリテーション学

スタッフ 助教授 横 串 算 敏  岡 野 五 郎  講師 成 田 寛 志

21世紀の医学の主流は、総合医学としてのリハビリテーション医学
 21世紀は、脳をきわめる時代であり、生命倫理を問われる時代である。人間を総合的にとらえ、患者が身体的、精神的に生き甲斐のある社会生活を送れることを目的とするリハビリテーション医学こそ、21世紀が要求している医学である。
 当科では、環境に適合した義肢・装具を求めて、雪路に適合した義足と車椅子の開発を行っている。また、交通災害、スポーツ外傷などで多発している脊髄損傷、あるいは高齢化社会で急増している脳卒中における中枢神経障害の機能回復のメカニズムを解明するために生体工学、電気生理学など先端科学を駆使して研究を進めている。


研究テーマ
1 義足の歩行解析
2 雪路における車椅子の開発
3 雪路に適合した義肢の開発
4 中枢神経障害の機能回復のメカニズム
5 脊髄損傷の電気生理学的解析
6 中枢性麻痺の抑制と促進
7 痛みの病態生理の解析


研究内容の具体例
 雪路用義足の開発
 実験室内に模擬凍結路面を用意して、正常人、大腿切断者の歩行分析を行った。正常人歩行の床反発力、関節角度、それに関節モーメントを再現できる膝継ぎ手を開発し、その実用化に向けて研究を続けている。
 冬期積雪条件下での車椅子の開発
 現在市販されている入手可能な電動車椅子の積雪条件下での脳性麻痺患者による走破性試験を行い、走破性と 制御性を解析した。得られたデータから浮き彫りにされた問題点を生体工学的手法で分析して、6輪型高機能電動車椅子の開発を行っている。
 脊髄損傷の軸索再生
  ラット脊髄に人為的に脊髄損傷を作製し、損傷部をまたいで自家末梢神経を架橋移植する。電気生理学的手法で軸索が再生されることを確認している。再生を最大限に期待できる条件を設定することで、脊髄損傷治療の可能性は大きく膨らんでくる。


大学院での研究生活について
 大学院の研究は、当講座の教官あるいは基礎医学講座の教官の指導のもとに行われる。研究の経過や成果は、毎週火曜日朝に行われる整形外科との合同カンファレンスで順次発表され、スタッフによる方向づけや助言が行われる。大学院生は、研究を本分とするのはもちろんだが、臨床的な勉強も平行して行うことができる。すなわち、週1回の関連病院での臨床研修の機会が与えられている。大学院での研究生活中の生活費は、関連病院での臨床研修などの手段で保障されている。


大学院修了後の進路
 大学院修了後、臨床研修を希望する場合は、本学医学部附属病院を含むリハビリテーション医学の教育関連施設で研修をすることができる。海外留学あるいは国内留学を希望する場合は、留学先を紹介している。



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地域医療人間総合医学専攻:人間総合医療学領域


生体危機管理学

スタッフ 教授 浅 井 康 文  助教授 今 泉   均

21世紀の救急医学発展の担い手になろう!
 救急医学には医者として最低身に付けるべき基本的な救命・救急の知識と技術の習得という面の他に、高次救急医療としての、多発外傷、重症熱傷、各種ショック、多臓器不全などの病態解明とそれに基づいた治療法の開発、また、突然死の病態解明や新しい心肺脳蘇生法の開発などもこれからの救急医学に欠かせません。救急医学発展の担い手(専門家)を目指すべく当救急集中治療部の大学院コースへ進学されることをお勧めします。


研究テーマ
1 心肺蘇生法に関する研究           5 多発外傷の病態生理に関する研究
2 脳低温療法に関する研究           6 重傷熱傷時の病態生理に関する研究
3 高度侵襲時の生体分子応答に関する研究    7 多臓器不全の病態生理に関する研究
4 高度侵襲時の免疫応答に関する研究      8 災害医療に関する研究


研究内容の具体例
 心肺蘇生法に関する研究
 突然心肺停止した症例に対する心肺蘇生法は救命のために必須である。従来の閉胸式心マッサージ法に短時間で反応しない症例に対し、当部では遠心ポンプで小型化した人工心肺装置を開発し、これを経皮カテーテル挿入法にてベットサイドで迅速・容易に装着・駆動しうるPCPS装置を臨床応用して従来救命し得なかった症例を救命し得るようになった。今後、更に軽量・小型化し救急車に搭載し、発症現場での使用を目指して装置の改良を図っている。
 脳低温療法に関する研究
 重症頭部外傷や蘇生後脳症の脳保護治療法として、当部では脳低温療法を試みている。脳低温療法の実際の効果の検討、また、効果をもたらす作用機序の検討を脳循環、脳代謝、全身反応、血液凝固機能等の面から検討すると共に、脳低温療法実施時に出現してくる心機能低下、低カリウム血症、無気肺、腸管麻痺などへの対策を考えている。
 高度侵襲時の生体分子応答に関する研究
 高度侵襲時には、サイトカインをはじめとする種々のメディエータが過剰に産生・誘導され、多彩な生体反応を生じ るが、時にこれらの分子応答がショックや臓器障害などの原因ともなりうる。当部では、その分子メカニズムの解明と新たな生体制御法の確立を求め、臨床に直結した研究を行っている。


大学院での研究生活について
 当部の大学院研究者は、救急集中治療医学領域の診療における疑問に端を発した臨床に関わりの深い研究を目指して欲しい。そのため1年目は臨床に専念、2年目はテーマ・構想づくり、3年目は基礎的実験とデータ整理、4年目はまとめの段取りと考えて欲しい。経済的には奨学金を得ることが望ましいが、アルバイトなどの収入で同年度医局員と同等になるよう配慮する。


大学院修了後の進路
 大学終了後の進路は様々である。
 救急医として本学医学部付属病院救急部及び集中治療部での臨床研修が待っている。同時に、世界の最先端を行く施設での海外留学を推奨している。



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地域医療人間総合医学専攻:人間総合医療学領域

健康行動科学

スタッフ 教授 澤 田 幸 展  助教授 田 中 豪 一

健康の第一歩はストレスの理解から
 高齢化が進む21世紀は、生活習慣病の時代である。例えば、生活習慣病=f{体質遺伝、年齢、生活習慣=g(食事・嗜好品、運動、睡眠)、ストレス}といった関数が想定できる。本「健康行動科学」では、生活習慣病、特に高血圧の発症に果たすストレスの役割を心理生理学的な立場から基礎的に研究する。他方、ストレスは、セルフ・コントロールが可能であるから非薬物的治療法としての行動的処置法が、どの程度有効であるかも並行して検討を進める。


研究テーマ
1 心臓血管系の心理生理学
2 循環動態の無侵襲計測
3 データの解釈モデル
4 血圧反応性仮説
5 高血圧に対する行動的処置法


研究内容の具体例
 心臓血管系心理生理学的な視点の持つ基礎的・臨床的意味
 循環動態の無侵襲計測と関わる数学的・医用電子工学的・生理学的理解
 集約されたデータの解釈(環境受容−拒否・能動的−受動的対処・注意−感情)モデルに関する相互比較
 血圧反応性の亢進対将来の高血圧発症と関わる予測・寄与因子仮説
 高血圧に対するリラックス法・瞑想法・バイオフィードバック法等の適用


大学院での研究生活について
 本「健康行動科学」は、行動科学(特に心理学)を基礎に、医学(特に神経解剖学、心臓血管系生理学)、医用電子工学、数学など幅広い基礎知識を必要とされている。幸い、本研究室は、心臓血管系生理学にとって必要な計測機器の水準において国内最高といってよく、研究テーマは複数走っており、文献的な集積も豊富である。我々研究スタッフに負けず劣らず、意欲を持って研究に取り組む人を望みたい。


大学院修了後の進路
 ストレスの過剰が取り沙汰され、生活習慣病への手当が焦眉の急とされる現代社会。大学・各種研究機関や学校・病院・企業のストレス・カウンセラーなど出口が広いとはいえないまでも、様々な進路が考えられる。むろん、医師・看護婦免許などを有する学生にとっては、心身医学方向での研究・臨床活動にも幅が広がろう。



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地域医療人間総合医学専攻:人間総合医療学領域

臨 床 病 態 学

スタッフ 教授 渡 邉 直 樹  助教授 道 林 勉  講師 八木橋 厚 仁

恵まれた研究環境で21世紀のフロントランナーへ
 分子生物学への進歩に伴い検査医学に求められる研究課題は益々多様化、かつ、高度化しています。
 我々は、従来の生化学、血液学、生理学や分子生物学などの概念を統合し、各種臨床病態の発現機構を有機的にとらえ、解明することを目指しています。恵まれた研究環境のもとで、諸君の臨床に直結した柔軟な発想を具現化し、世界のフロントランナーを目指して下さい。来たれ、臨床病態学大学院コース。


研究テーマ
1 生体のストレス応答                  4 癌の遺伝子診断
2 サイトカインの細胞内シグナル伝達機構     5 細胞の老化、不死化、癌化とテロメラーゼ活性
3 細菌感染症の遺伝子診断             6 糖尿病、動脈硬化の合併症予知マーカー


研究内容の具体例
 生体のストレス応答
 細胞内に存在するサイトカイン(enTNF)は、MnSOD活性や熱ショック蛋白(HSP)の誘導を介し、抗癌剤、熱や外から加えられたTNF自身による傷害生(アポトーシス)に対し、抵抗性因子として働きます。
 我々は、あらかじめenTNF量を測定すると、白血病患者の抗癌剤感受性を予測できることを明らかにしました。 抵抗性発現の分子機構と臨床応用について研究を進めています。
 成人病の合併症予知マーカーの開発
 高齢化社会に向けて成人病(糖尿病、動脈硬化等)の重症度や合併症を簡便に予知出来るマーカーの開発が、切望されています。
 我々は、これまで測ることの出来なかった生体内微量物質の高感度測定法を新たに開発し、臨床応用を試みています。
 新しい癌診断法の開発
 テロメアは染色体末端に存在する構造で、正常細胞においては細胞が分裂するたびに短縮し、一定の長さまで短縮すると細胞は老化します。癌細胞では、テロメラーゼ(テロメアを伸長する酵素)活性があるためにテロメアが補足され、無限増殖能を獲得します。
 我々は、テロメラーゼ活性及び関連遺伝子の発現量を測定することによる癌診断法の開発を行っています。


大学院での研究生活について
 大学院生の研究テーマは、本人の希望を最優先して決めています。実験計画の立案や結果の解析等は、週1回の研究セミナーをはじめ、必要であればその都度相談しています。生活費の確保や将来臨床医を目指す学生の臨床研修については、学生個々の実情に合致するよう配慮しています。


大学院修了後の進路
 大学院修了後の進路は様々であるが、留学を希望する者に対しては留学先を紹介しています。



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地域医療人間総合医学専攻:人間総合医療学領域

法医学・人類遺伝学

スタッフ 教授 玉 木 敬 二  講師 安 積 順 一

新しい法医遺伝学を一緒に研究しませんか
 法医学は法律上の問題となる医学的事項を研究する社会医学であるため、その研究分野は、医の倫理、法医病理学、DNA検査などの物体検査、法医中毒学など多岐にわたる。このうち本科目では、特にDNA分析を中心とした法医学・人類遺伝学を主眼点にして研究を進める。


研究テーマ
1 DNA多型の法医学的利用に関する研究
2 ヒトミニサテライトの突然変異と多型性に関する分子遺伝学的研究
3 ガン抑制遺伝子p53などを用いた人獣鑑別とヒトの進化・分岐に関する研究
4 種々の法医試料からのDNA分析法に関する研究


研究内容の具体例
 ヒトゲノムに数多く存在する縦列反復配列(ミニサテライト・マイクロサテライト)やミトコンドリアDNAを指標にして、個人識別に有用な個人による差異(多型性)を実際にタイピングを行い法医学的有用性を検討する。特に近年注目されているSNP(一塩基置換による多型性)の法医学的応用について研究する。また、実際にこれらの新しいDNA多型を駆使して個人識別や親子鑑定に応用する際、そのための新しい法医数学の利用が不可欠であるが、わが国ではその基盤は殆どないので、関連分野と共同研究によりその充実を図る。
 ヒトのDNAに数々の多型をもたらす原因の一つには突然変異が挙げられるが、当講座では、特に高変異性のミニサテライトに注目してその突然変異の性状やしくみの解明の研究をしている。我々はこの突然変異を効率よく検出できる方法を開発したので、この利用によりゲノムにおけるミニサテライトの発生や進化に関わる重要な情報が得られる。
 p53など遺伝子の塩基配列には、色々な動物種の間で共通の領域と種によって異なっている領域が存在する。
 このことに注目し、人獣の由来が不明な組織や骨からの人獣鑑別法を確立する。さらに、ヒトのDNA多型の中には民族の分岐など人類の大きな分類をするのにも有効なものがある。これらの適切な利用により日本人の起源等を探る研究が可能となる。
 DNA分析法を法医学に応用する場合、最も重要なことは分析結果の証拠能力があるか否かという問題である。
 法医鑑識で扱う多くの試料は、腐敗、焼損、汚染など様々な状態に置かれており、抽出したDNAは変性して低分子化している。このため、実務応用できるような確実なDNA分析法の確立を目指して研究する。


大学院での研究生活について
 大学院生は、できるだけ時間に束縛されないで、柔軟で科学的なものの見方を養い将来に備えて欲しい。そのため、大学院生は必ずしも上記の研究テーマだけを選択する必要はなく、自らの興味や適性を生かしたテーマを広く求めてくれるよう指導したいと考えている。また、法医解剖や鑑定等、法医学が社会に直面する場にも大学院生の積極的な参加を歓迎するが、早い時期に実験研究によって客観的な科学的真理を追究する真摯な姿勢を養うことは、法医実務を遂行する上でも極めて重要なものとなるであろう。


大学院修了後の進路
 社会の法医学に対する需要はますます大きくなっており、医師の場合の大学院修了後の進路は、法医学のスペシャリストとしての活躍が期待されている。医師以外の場合でも、法医学研究者として大学や警察関連施設等で研究を続けることも可能である。また、留学を希望する場合、人類遺伝学、法医学どちらでも紹介可能である。