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地域医療人間総合医学専攻:地域医療総合医学領域

臨  床  疫  学

スタッフ 教授 山 本 和 利  講師 向 谷 充 宏

臨床現場で抱いた art と science についての疑問を臨床研究に結びつけよう!
 臨床疫学が基本とするのは、不確実性の中に、ある種の規則性を見いだし、それらを確率論で説明するというものである。
 そのような立場から、臨床疫学は臨床経験よりも再現性があり偏らない臨床観察を系統的に行って、予後や診断、治療に応用することを重要視する。さらに、病気とその病態生理を理解し、研究するだけでは臨床実践の指針には不十分と考え、病因、予後、診断、治療についての文献を正確に解釈するには、根拠を理解するしっかりとしたルールを熟知する必要があることを強調する臨床医学の基礎となる新しい科学なのである。


研究テーマ
1 バイアスと偶然を引き起こす要素の解析
2 診断、リスクと予後、治療、害、予防についての定量的評価
3 医学的決断分析
4 メタ分析、臨床経済分析


研究内容の具体例
1 common diseaseのスクリーニングにおけるROCカーブやその検査法の優劣を検証する研究
2 ベイズ推論における確認バイアスを補正した有病率の計算法
3 医療情報部と共同で離島医療におけるTelemedicineの費用効果分析
4 生活の質で調整した生存年数を指標にした様々な疾患の決断分析学的研究


大学院での研究生活について
 教室員全員で指導に当たるが、与えられたことだけを行うのではなく、自ら積極的に種々の問題に取り組み、探求心、向上心に燃えた人を希望するとともに、与えられた種々の条件下でフルに能力が発揮できるよう指導したい。やる気のある人には、臨床現場からの疑問を抽出するために総合診療科での臨床を実践できる場も確保するなど研究以外でのサポートもできる限り行いたい。


大学院修了後の進路
大学院修了後の進路は様々であるが、留学を希望する者に対しては留学先を紹介している。
 臨床能力を磨きたい者には、内科医として本学医学部附属病院総合診療科での臨床研修・学生指導の場を提供する。同時に、general medicineで有名な施設での海外留学を推奨している。



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地域医療人間総合医学専攻:地域医療総合医学領域


環境保健予防医学

スタッフ 教授 小 林 宣 道  講師 西     基

世界的視野での感染症の制圧のためにあなたの力を発揮してみませんか
 下痢性疾患は先進国・発展途上国を問わず罹患原因の首位を占めると共に、途上国では死亡率でも第1位を占める。年間500万人余りの乳幼児が死亡し、うち約3割がロタウイルスの感染による。このため乳幼児におけるロタウイルス下痢症の予防を目指してワクチン開発の努力が世界中で進められている。私達もこれらの流れの中で、ウイルス性腸管感染症の制圧へ向けた実験室内研究及び野外での調査研究を行っている。一方、現代医学の発展と相まって増加しつつある薬剤耐性菌は、院内感染及び日和見感染の原因として世界的に問題となっている。私達は、薬剤耐性菌の分子疫学、薬剤耐性に関与する遺伝子の分子遺伝学的研究を通じて細菌の薬剤耐性化と蔓延の原因を調べ、その成果をもとに耐性菌拡大を防止する方策を探求している。


研究テーマ
1 ウイルス性下痢症の疫学と病因学
2 東南アジア諸地域におけるロタウイルスの分子疫学
3 ロタウイルス遺伝子の変異機序に関する解析
4 院内感染起因菌の分子疫学
5 病原細菌における薬剤耐性遺伝子の分子遺伝学
6 発生初期胚における各種化学物質の毒性評価


研究内容の具体例
 ウイルス性下痢症は研究の歴史が浅く、そのウイルス学、疫学、免疫学とも不明な点が多く、新病原体の発見もあり得る新しい研究領域である。本講座では、その2大病原体(ロタウイルス、カリシウイルス)に加え各種の下痢症ウイルスについて、その疫学とウイルス学、特にウイルス遺伝子の構造と機能の関連性の解明を主眼として研究している。
 ロタウイルスの11の分節遺伝子電気泳動により分子量に従い分離される。このウイルス株特有の分離泳動パターンは疫学研究に用いられ、流行株の識別を可能とする(分子疫学)。本講座では、東南アジアや中国の研究者との共同研究により、分子疫学及び遺伝子塩基配列の決定に基づき、各国の流行株の分析、ヒトと動物間のウイルスの往き来などロタウイルスの生態学、遺伝子進化について多くの新しい発見をしている。
 院内感染起因菌として世界的な拡がりが問題となっているMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や腸球菌について、薬剤耐性遺伝子とその調節遺伝子の解析から薬剤耐性遺伝子の伝播と耐性発現の分子機序を研究している。


大学院での研究生活について
 一人前の研究者になるために、独自に研究計画を立て、計画に従い研究を実施し、時間を見出し関係する文献を検索するなど、月曜日〜金曜日は、他の講座教員の勤務状況に合わせた生活行動が求められる。土曜日、日曜日は全くのフリーの時間とする。


大学院修了後の進路
 大学終了後の進路は、海外留学、臨床医学講座での臨床研修、基礎研究の継続あるいは衛生行政分野等様々である。大学院生各人が最善の道を選択できるよう、本人の希望を尊重しつつ、支援、協力を行っていく。



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地域医療人間総合医学専攻:地域医療総合医学領域


地域保健予防医学

スタッフ 教授 森     満  助教授 池 田 聰 子

疾病の発生における宿主要因と生活環境要因の交互作用の究明を
 人間が健康を害し、疾病を発生する過程では、遺伝的要因を含めた宿主要因と、生活習慣を含む種々の環境要因とが相互に作用して影響を及ぼしていることが明らかになりつつある。本講座では、疾病の予防という観点から、宿主要因と環境要因の交互作用を科学的に提示する。


研究テーマ
1 がんの予防に関する分子疫学的研究
2 特定疾患、循環器疾患、その他の疾患の予防医学的、疫学的研究
3 有機溶剤の神経系への影響、特に行動中毒学
4 生体微量金属の栄養学と中毒学の接点に関する研究
5 地域における保健医療福祉の連携に関する研究


研究内容の具体例
 がんの発生には宿主要因と環境要因が相互に作用して影響を及ぼしている。本講座では、卵巣、乳房、大腸、膵臓、肝臓、前立腺がんなどの増加傾向にあるがんの発生関連要因の検索を行っており、それらの研究に分子生物学的手法を取り入れつつある。
 北海道内の集団を継続的に追跡調査して全死因死亡、がん死亡、脳血管疾患死亡などと関連する要因を検討している。特定疾患に指定されている全身性強皮症、特発性大腿骨頭壊死症、難治性の肝疾患(原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝疾患、劇症肝炎)などの疫学的調査研究を行っている。
 有機溶剤は神経系の機能に影響を与える。しかし、細胞レベルでは把握できないような影響もある。そこで、有機溶剤の神経系機能への影響を動物の行動変容を指標にして究明している。
 金属にはわずかの量で生体にとって重要な役割を行うものと、不要あるいは害になるものとがある。カドミウムはその後者で、体内に入るとメタロチオネンというタンパク質と結合して無毒化される。このような金属に対する生体防御機構を究明している。
 介護保険や療養型病床群の創設が高齢者の保健、医療、福祉に与える影響を科学的に推計し、高齢者のQOLの向上に資する。


大学院での研究生活について
 大学院生は、研究で一人立ちできるように指導されるが、テーマや考え方には、相当に自由が与えられる。反面、自分の責任で仕事を遂行しなければならない。自由と自立、これが大学院生活である。


大学院修了後の進路
 大学院修了後の進路は様々であるが、過去の例を示すと以下のように分けられる。
 海外の研究機関へ留学して研究を継続したり、米国などの大学の公衆衛生学部へ入学してMaster of Public Healthの資格を修得する。
国内の大学や研究所のスタッフに採用される。
厚生省や北海道保健福祉部に勤務して衛生行政に携わる。
大きな企業の産業医となって、産業衛生に携わる。
臨床医となりつつも、積極的に公衆衛生活動を行う。



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地域医療人間総合医学専攻:地域医療総合医学領域


地域医療保健学

スタッフ 助教授 浦   信 行  講師 齋 藤 重 幸

疫学、予防医学を理解した高レベルの臨床医学研究者を養成!
 高齢化社会の到来や食習慣、生活習慣の近代化、欧米化に伴い日本人の疾患構造は次第に変遷し、悪性腫瘍発生部位の変化や動脈硬化性疾患の増加など医療の対象は著しく変化しています。一方で我が国の平均余命は世界最高水準であり、これを支える診断、治療のレベルの進歩は目覚ましく、これらの臨床医学を修得することは当然のこととなっています。地域医療保健学では従来の内科学第二講座の流れを汲み、高度で熟練した臨床医学の上に疫学、臨床医学の実践的研究を踏まえて、予防医学を含めた全人的な医療が可能な高度な臨床医学研究者の養成を行います。


研究テーマ
1 日本人における生活習慣病の実態把握に関する疫学的研究
2 生活習慣病の発症関連因子、背景因子に関する臨床的・基礎的研究
3 地域一般住民における生命予後、機能予後、QOLの規定因子に関する研究
4 生活習慣病と遺伝素因に関する研究


研究内容の具体例
 高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満などの頻度を職域、地域の悉皆調査より明らかにする。また、循環器疾患基礎調査や国民栄養調査など national data の解析から日本人における特に循環器疾患の構造を解明する。
 端野・壮瞥研究、NIPPONDATA、INTERMAP study 、帯広研究など当教室が長年手がけてきた前向き疫学調査継続と解析から悪性腫瘍や動脈硬化性疾患の発症頻度及び発症予知因子、関連因子の解明を行う。
 地域の前向き疫学調査より、一般住民における生命予後、機能予後、QOLを評価し、その劣悪因子の解明を図る。また、劣悪因子改善の介入により、予後が改善するかを検討する。
 多施設との共同研究により高血圧、糖尿病の関連遺伝子を同定し、その遺伝子機能の解明を図る。


大学院での研究生活について
 日々の診療から高いレベルの臨床研究を手がけることができる医学者養成のためのカリキュラムを組んでいます。
 当然、生活面・収入面で特に支障を来さないよう医局では十分配慮しています。


大学院修了後の進路
 希望者には、留学を積極的に推奨している。教室は特に予防循環器の分野では先進的な取り組みをしている国内外の施設と共同研究を行っており、それらの施設での研究も可能である。また、内科臨床医として特に循環器病学、腎臓病学、内分泌・代謝学のより高度な臨床研修の道も開けている。