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地域医療人間総合医学専攻:発育・加齢病態医学領域

消化器機能病態学

スタッフ 教授 新 津 洋司郎  講師 加 藤 淳 二

病気の本質を解明してみないか!
  近年、ヒトゲノム解析が急速に進み21世紀中には、ほとんど全ての病気の発症機序が遺伝子・分子レベルで解明されると予想されている。消化器機能病態学では、加齢に伴って増加してくる難治性消化器疾患(特に大腸・胃・肝癌)を対象として、生化学的・分子生物学的分析法を駆使して病気の本質を探究することにより、最終ゴールとしては画期的な治療あるいは予防法の開発に繋がる研究テーマを推進する。
 講義では、各消化器器官材料からの蛋白・酵素・遺伝子の精製法及び各種分析法について具体的に解説・演習を行う。また、癌の遺伝子治療の基礎的理論(ベクター構築法、変異導入法、ノックアウト、ノックインなど)についても言及する。大学院修了時には、研究の立案・計画、結果の分析・解釈、論文作成に至るまでの一連の過程を修得することを目標とする。


研究テーマ
1 胃癌の発癌メカニズム分析と転移の分子機構の解明
2 大腸癌の前癌病変の遺伝子変化と発癌化学予防
3 消化器癌(肝癌・膵癌)に対する遺伝子治療
4 ウイルス肝炎の肝発癌機構の解明と発癌防御
5 炎症性腸疾患の発生機序の解明と診断・治療法の開発


研究内容の具体例
 大腸癌の前癌病変 abberant cript foci(ACF)の拡大内視鏡による同定とその遺伝子変化―当科では、ACF(図1に示すようなサイズ1oに満たない異常cript)が拡大内視鏡で観察可能であることをすでに報告している(N Engl J Med,339:1277−1284,1998)が、本研究では、その遺伝子の変化から大腸癌の初期遺伝子変化としてAPC変化に先立ってras変異が重要であることを見いだした(Gastroenterology 121:599−611,2001))。
 2 肝癌の遺伝子治療―原発性肝癌で特異的に複製・発言するアデノ
  ウイルスベクターを構築し、動物実験で著明な抗腫瘍効果を確認し
  (図2)、ヒトへの臨床応用に向け検討している。
 3 C型肝炎からの発癌に鉄イオンの関与が大きいことを見いだし、
  遮血療法により肝癌発症の予防が可能なことを明らかにした。
  (Cancer Res,in press)
 4 TGF−βが、typeU受容体結合型PP2Aを介してp53の活性化
  (核移行)を促進することを示した。
(図1)
 5 ヒストン脱アセチル化酵素阻害
   剤によるp53アセチル化の促進作用
  (アポトーシス誘導)
 6 Fas−Fas−ligandは、ラジカル産生を
  介し各種caspaseを活性化する。
 7 潰瘍性大腸炎では細胞骨格蛋白をclass
  U抗原上に表出させ、抗体産生が誘導さ
  れる。
 8 カドヘリン―カテニン複合体形成と細
  胞増殖との関係



腫瘍特異的複製可能
アデノウィルスベクター









遺伝子工学的に改変した遺伝子
    (図2)









無治療群










遺伝子治療群
大学院での研究生活について
  生活面は札幌市内・近郊にある多数の関連病院での兼業体制がよく整備されているので全く心配はない。研究体制は基本的に指導医及び2〜3名の研究者から成るグループ制をとっており、研究を進める上での必要な知識・手技等を容易に習得でき、また月に一度の全体研究会議において他のグループの研究者との討論の場が設けられているので客観的な視点から評価しながら研究を推し進めることができる。


大学院修了後の進路
  希望に応じて国内・国外への留学先を紹介する。留学後には臨床医として、さらに研鑽を積むべく消化器専門医養成コースや研究も並行して続けながら教官スタッフを目指す道も選択できる。いうまでもなく臨床医・専門医として就職を希望する際には随時、就職先を斡旋・紹介する。




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地域医療人間総合医学専攻:発育・加齢病態医学領域

循環腎機能病態学

スタッフ 教授 島 本 和 明  助教授 三 浦 哲 嗣
                   講 師 土 橋 和 文
                 〃   中 田 智 明
                 〃   土 田 哲 人

進歩する循環器疾患・腎臓疾患研究に貢献し得る医学者の養成
  生活習慣の欧米化、高齢化に伴い日本の疾病内容が変遷し、近年は動脈硬化並びに糖尿病を基盤とする、循環器疾患、腎臓疾患が増加しつつある。これらの疾患の診断・治療法にはめざましい進歩が見られているが、病態を含め解決されていない問題が数多く残されている。本科目では循環器疾患、腎臓疾患における臨床上最も重要な問題に焦点をあて、臨床医学のみならず基礎医学的なアプローチからもその解明に貢献し得る医学者を養成することを目標とする。


研究テーマ
1 高血圧症の成因と病態に関する臨床的・基礎的研究
2 腎疾患の成因と水・電解質代謝に関する臨床的・基礎的研究
3 虚血性心疾患の病態解明と新たな治療法に関する基礎的研究
4 不整脈、虚血性心疾患、心筋疾患の診断と治療に関する臨床的研究


研究内容の具体例
 本態性高血圧を糖尿病、高脂血症、肥満と共通の背景因子であるインスリン抵抗性の面から解析し、従来の昇圧・降圧系の検討に加え、サイトカインを含めて生化学・分子生物学的解析を行っている。
 腎における水・電解質代謝と腎不全の病態における腎性降圧利尿系、増殖因子の意義を生理学的、分子生物学的解析に加え、遺伝子学的に解析している。
 虚血・再灌流による心筋細胞障害の機序、内因性の心筋細胞防御機構におけるシグナル伝達、心室リモデリングによる心筋並びに血管内皮細胞の機能変化に関して、生化学的・細胞生物学的な解析を行っている。
 頻拍性不整脈の原因機序・診断・薬剤及び非薬剤治療、冠動脈疾患の治療、心筋疾患及び心不全の予後、腎透析施行例の心臓血管合併症に関して、超音波心エコー、心臓核医学、心臓カテーテル等の検査・治療手段を用いた検討を行っている。


大学院での研究生活について
  研究に従事する時間の確保とともに、臨床医としての研修にも支障が生じないようにカリキュラムを組んでいる。希望により短期間の国内・国外での研修も可能となっている。経済的な面についても研究に支障をきたさないよう医局で配慮している。


大学院修了後の進路
  大学院修了後には、認定内科医、循環器専門医、腎臓専門医の資格取得のための臨床研修を本学医学部附属病院並びに関連教育病院で行うことや、国内(国立循環器病センターなど)でのさらなる臨床研修、海外留学で研究者としての経験を積むことなど様々な可能性がある。




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地域医療人間総合医学専攻:発育・加齢病態医学領域

感覚機能病態学

スタッフ 教授 氷 見 徹 夫  講師 白 崎 英 明  坪 田   大

耳鼻咽喉科学領域の免疫学、神経学に興味ある諸君へ
  耳鼻咽喉科疾患には、感覚器の障害、上気道の障害、嚥下発声などの障害、頭頚部腫瘍を含む。これらは小児から高齢者まで幅広い年齢層にわたり、その病態解明は社会的にも要求度が高まってきている。生体防御機構、アレルギーなどの免疫学的分野から神経病理、神経生理など幅広い分野の基礎的研究を行うことが我々の使命である。大学院における研究はこれらの魅力的な分野を研究することである。


研究テーマ
1 扁桃の免疫学的検討
2 鼻アレルギーの病態解明
3 中耳炎の免疫学的検討
4 聴覚障害の神経学的検討
5 頭頚部悪性腫瘍の免疫学的検討


研究内容の具体例
 我々の教室の扁桃の免疫学的検討は、世界的にも認められているもので、「病巣感染」の臨床的な検討のみならず、近年盛んに研究されている粘膜免疫との関わりを追求して行く。
 鼻アレルギーの分野でも、このポピュラーな疾患の病態解明に、最新の免疫学的手法を用いて検討を進める。特に、アレルギー疾患の治療に結びつく研究を精力的に行うことが求められる。
 耳疾患の分野では、小児の中耳炎は臨床的に重要であり、この分野でも免疫学的手法を駆使した研究がなされている。動物モデルを用い、さらに臨床的な発症要因を解明することを目的とする。
 近年我々の教室が精力的に行っている高度難聴に対する人工内耳治療に関した内耳の基礎的研究は、世界的にもトピックスになっている。「内耳神経再生」や「高次聴覚機能」の基礎的研究を行う。
 頚部腫瘍の中でも、EBウイルス関連が示唆される悪性リンパ腫や上咽頭腫瘍に注目して研究が進められている。今まで有効な治療が見いだせなかった進行性鼻壊疽の治療法確立に向けた精力的研究が求められている。


大学院での研究生活について
  単に研究者としての育成のみならず、優秀な耳鼻咽喉科医師になることも求められる。このため、ある期間は臨床と研究の両方を並行して行う時期がある。研究テーマが実地臨床にどのように役立つかを考えながら研究を進めて行くことが必要なため、その時期で得られた臨床的な感覚は、必ず研究成果に反映されてくる。


大学院修了後の進路
  大学院修了後の進路は様々であるが、留学を希望する者に対しては国内外の留学を紹介している。