札幌医科大学は,旧道立女子医学専門学校を基礎に,戦後の新制医科大学の第一号として医学部医学科の単科で昭和25年に開学しました.附属がん研究所は昭和27年に開設されたがん研究室を前身として,北海道におけるがん対策を強化する社会的要請に応えるために、昭和30年に設置されたわが国で最初の公立のがん研究施設です.当初は内科系の研究室も所属していましたが,昭和56年4月から生化学,分子生物学,病理学(平成14年に分子病理病態学と改名)の基礎医学3部門体制となり,現在に至っています. 平成18年7月には50周年記念講演会が開催されました.
分子生物学部門は昭和44年4月に設置され,現在の研究テーマはがんやその他の病気の発生・進展に関わる遺伝子を同定し,新しい診断や治療への応用を目指すことです.特にヒト発がんに関与する各種がん関連遺伝子の同定と機能を細胞および個体レベルでの解析により明らかにすることをメインテーマとしています.具体的には分子生物学・分子遺伝学的手法を用いて,がん抑制遺伝子p53とそのファミリーp73, p63の機能解析を中心にがん関連遺伝子の研究を進めています.がんは複数の遺伝子変異が体細胞に蓄積し,その結果として細胞の増殖制御ができなくなる遺伝子の病気であることがわかってきています.多くのがん関連遺伝子に関して,その変異や発現異常が発がんや悪性化をもたらす機序を明らかにすることにより,新たながんの予防や診断・治療法開発の基礎となる情報や実験系を生み出すことが可能となると考えています.