ごあいさつ

教授写真

 「神経科学」という学問の領域はあっても、講座名としてはあまり馴染みのないものです。札幌医科大学では、平成20年度から新たな領域の「神経科学講座」を発足させました。

 医学部においては、基礎医学、臨床医学という区分が広く行われていますが、神経を対象とした自然科学はこの枠組みにはあてはまりません。分子レベル、ニューロンレベルから、多数ニューロン活動、領野の連携、個体としての活動まで、それぞれのレベルにおいて共通した性質を持つとともに、個性をもった変動の大きな集団を相手にしています。心理学や哲学などといった分野とも無関係ではありえません。

 従来の神経研究は、基礎系講座における動物実験を中心とした計画研究、臨床各科での疾患を対象とした観察研究、介入研究が主流でした。外部から行動などを注視することによって得られる情報から、神経系の果たす役割を推論していく帰納的な方法は、これからも重要な研究となります。一方、近年のヒトの精神活動への興味の高揚は、健康なこころの問題までも研究の対象とするようになってきました。考えるといった作業の裏では、どのような脳の活動が行われているのでしょうか?単に計測するのみでなく、どのようなことを考えていたかを、直接、被験者から教えてもらうというようなヒトの協力が必須です。さまざまな活動状態、心理状態を意図的に作ることによって、それに伴う脳神経活動をとらえていくという計画研究、演繹的な考えが出番です。昨今の技術開発のめざましい非侵襲的脳機能検査法が研究推進の大きな助けとなってきています。

 これらの両方向からの取り組みに挑戦していこうというのが、我々の講座です。本講座の前身は、昭和39年に発足した生理学第二講座です。動物実験で扱う器官は内臓から神経へとかわりましたが、前任の青木藩教授の積み重ねた神経系の基盤研究を財産として、これからは、健常人、患者を対象とした臨床神経生理的視点による知見を積み重ねていきたいと思います。 研究室は、基礎系の建物の中にあります。異種領域からのスタッフが集まっており、病院や保健医療学部や他大学との連携を行いながら、試行錯誤を繰り返しています。規模は小さくとも、夢は大きく、新しい領域への挑戦を恐れずに、独自の色合いを目指して歩み始めたところです。

 神経科学の未来を共にめざす方々のご参加をお待ちしています。

  平成22年5月

   神経科学講座
   長峯 隆

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