新任教授・役職者

学長就任のご挨拶

塚本 泰司

「建学の精神を拠り所に、医学・医療研究の一層の飛躍と地域医療支援の充実を」

 本年4月から札幌医科大学学長・理事長を拝命致しました。微力ではありますが、札幌医科大学の一層の発展に尽力する覚悟でおりますので、同窓会の皆様の御支援、御協力を何卒よろしくお願い申し上げます。
札幌医科大学のこれまでの65年余の歩みは、まさに建学の精神にある「医学・医療の攻究と地域医療への貢献」でした。私達の目指すところはこれからも、困難な道ではありますが、建学の精神に掲げられたこの理念の追求に他なりません。
大学の現状と将来の課題について、就任に際して感じたところを同窓会の諸先生と共有致したいと思います。

 法人としての大学は、現在、第2期の中期計画が進行中です。その成果は順調で後半3年間の年度計画も開始していますので、これを確実に継続、実施することが重要と考えています。今後の第3期中期計画との関係でいえば、教育・研究棟の建設は平成31年度以降にも及びますので、これを円滑に進めることに全力を尽くします。同時に、教育・研究のバックボーンを支えるという意味でも、新施設の教育・研究設備の充実を図っていきます。
 附属病院についても、現中期計画における経営基盤の確立という点では、いくつもの課題があります。病院の上位目標は、『安全で質の高い医療を提供する』ことにありますが、一方で、安全で質の高い医療を提供できるような環境を作り出し、その成果を患者さんに還元することも必要です。そのための適切な利益の確保は不可欠です。現中期計画における法人6年間の収益見込みの3/4は、附属病院からの収益が充当されています。したがって、外的な要因が 附属病院の経営状況に直接大きく影響し、その結果は大学法人運営に及ぶ可能性がありますので、経営基盤の確立は極めて重要であります。病院執行部、病院経営管理部の機能を十分に活用しながらこの課題に取り組むつもりです。
 附属病院の経営基盤の確立の方策の中には、現在の病院の中央棟のリフォームも含まれています。予算の制約はありますが、将来の病院経営に資するようなリフォーム計画を準備中です。例えば、現在中央棟3階に位置する手術部、ICU、救急部を、高度急性期医療を担う病院として相応しいものにリフォームします。この中には手術室関連の整備、ICUの増床なども含まれています。

 大学における研究をどのように支援して行くかは、また後ほど触れますが、中期計画との関係では、現在実用化に向けて順調に進んでいる神経再生医療、がんワクチンに対する支援活動を一層強化します。特に、自家骨髄間葉系幹細胞を用いた脊髄損傷に対する細胞治療が、厚生労働省の先駆け審査指定制度に指定されましたので、一般の患者さんに使用できることが現実のものとなってきました。このような状況から、この再生医療製品を用いた治療を本大学が主導して実施できるように大学、附属病院におけるシステムを構築する準備を進めています。

 次に学部学生・大学院学生の教育、大学における研究、附属病院での臨床、そして地域医療支援について順次触れます。
大学には、優秀な高校生を入学生として選抜し、将来のすぐれた医療人となるよう学生を育成する義務があります。新入生選抜の機能を担うアドミッションセンターに医療人育成センターから一部の機能を移管することで、2名の増員を図りました。このことで、センター機能が一層向上することを期待しています。
 センター試験が導入されてから、北海道外出身の入学者が増えました。道外出身学生は北海道内には定着する傾向が低いことから、推薦入試の「特別枠」、「地域枠」のみならず、一般入試の「北海道医療枠」を設置し施行しています。その結果、本年度では、定員110名のうち87名、79%が北海道出身となっています。もちろん、入学者の学力には全く変化は見られていません。北海道の医療を担う優秀な若い力を確保するための入試選抜方法として定着することが期待されています。
 大学院生に対しては、若手医療者のリサーチマインドを醸成する意味でも、研究を奨励し、現在の支援対策以上のものを模索したいと思っています。良質な地域医療を展開するためには良質な教育を受け、高い研究マインドを持った医療者が不可欠であると考えています。

 次に、研究です。神経再生医療、がんワクチンなどに見られるように、現在進行中の「橋渡し研究」の実施に対するサポートが、大学の責務であることについては、先ほども強調しました。さらに、基礎講座・研究所を含め基礎研究のための基盤整備も不可欠です。新教育・研究棟の建設とともに、研究備品の整備に万全を尽くすことが必要と考えています。
 より重要な点は長期視点を持った研究の存在です。すべての研究の種が大きく花開くわけではありませんが、種を蒔かなければ実を刈り取ることはできません。現在行われている優れた基礎研究の更なる発展は不可欠ですので、これらを適切に「育成」できるようその状況を整えることを考えています。臨床研究も車の両輪の片方として、その重要性は論を俟ちません。そういった意味で、基礎、臨床問わず研究の必要性を強くアピールし、リサーチマインドを持って研究に従事する若手医療人の確保を推進したいと考えております。

 次に附属病院における臨床についてです。新しい学科目として「血液学」、「免疫・リウマチ学」、「集中治療医学」が誕生します。これに伴う新しい診療科も新設される予定です。新しく設置される診療科への協力体制が何より重要ですので、病院全体で新しい診療科のスタートを盛り上げてもらいたいと思っています。外科系の診療科も体制が整い、附属病院の機能も一層充実してきました。さらに、患者さんへより高度な医療を提供するためにも、複数の診療科により運営される疾患センター(例えば、消化器病センター、内視鏡センター、循環器病センター、ロボット・腹腔鏡手術センターなど)を設置するなどの病院の体制造りも必要と考えています。
 札幌医科大学の大きな使命の一つである地域医療支援の継続、強化をするための医師の育成では、学生に対する卒前臨床教育、初期臨床研修、さらには専門医教育と、切れ目のないバックアップ体制の構築を重視していきます。このようなサポートをすることで、地域医療へより一層関与できるのではないかと考えています。同窓会の先生方の御協力も得ながら、地域医療支援の継続と強化を図っていきます。
 地域医療に関して最後に強調しておきたいことは、これを支えるためには、附属病院での臨床の充実が不可欠であるということです。この原則は決して崩すことはできません。附属病院における臨床の実績が地域医療を支える根幹であると思っています。

 私たちは、現在、諸先輩のたゆまない努力により形作られた大学を見ています。特に、新中期計画では大学および附属病院の建物が一新します。このハード面のイノベーションを、どのようにしてソフト面でのイノベーションに結び付けられるかを考え、新しい大学、附属病院の建物に新しい風を吹き込んで行かなければなりません。
 医学部同窓会の諸先生方のこれまで以上の御支援を切にお願いする次第です。