教授就任挨拶

札幌医科大学医学部内科学第二講座 三浦哲嗣

 2010年11月1日付けで内科学第二講座教授を拝命いたしました。札幌医科大学における循環器内科学、腎臓内科学、代謝内分泌内科学の教育、診療、研究の推進のため、教室員ならびに関連病院の多くのスタッフと協力しつつ努力する所存でおります。

 教育、研究、診療のいずれをとっても今日の状況は厳しいと言わざるを得ません。社会の変化に呼応して学生の気質も大きく変わっておりますし、研究ではこれまで以上に質だけでなくスピードと量が要求されております。また附属病院では格差の拡大する社会を背景として、心理的、社会的問題を多く併せ持った患者さんが増えております。一方、地域では深刻な医師不足があり、医育機関にあっては診療と研究の両方をこなすいわゆるphysician scientistが欧米と同様に減少しております。

 こうした状況にあっての教室運営ですが、「各セクションパートが優れているだけでなく合奏能力の高いオーケストラのような教室」を目指したいと思っております。そのためには、「目標を高く設定すること」と、「衆知を結集することができる環境作り」が重要であると考えております。日常診療、国内外の学会や海外留学での成果を見ますと、本学に集う研究生、大学院生の潜在能力の高さは明らかです。教育、研究、診療における目標を高く設定することに何の問題もないと思います。従って目標達成の成否は「いかに人々の知恵と知識を結集することができるか」にかかっていると考えております。あらゆる場面で、健全で自由闊達な議論ができる教室、自由闊達な議論を通して組織としての学習能力も高まる、そういった姿の教室を作るべく、努力する所存でおります。

 「我々の眼の前には過去が我々の証として展開している。未来へは後ずさりしながら入ってゆくしかない」とヴァレリーは言っています。また「過去に目を閉ざすものは結局のところ現在にも盲目となる」というヴァイツゼッカーの名高い演説の一節もあります。その演説は第二次世界大戦終戦の40周年ものですが、ヴァイツゼッカーは「一時代の責任ある立場にいた人たちの世代から、次の完全な世代交替までが40年である。そしてその間にかつて身に受けた助けや救いを心に刻んでおくことができなくなりがちである」と注意を喚起しています。今年は、内科学第二講座が開設されて47年目の年にあたります。講座開設当時の入退院台帳を見ますと、当時の死亡退院の多くが30?40才代であり、死因は腎不全、弁膜症による心不全であったことを知ることができます。現在のような診断機器、治療法のない時代にどれほどの困難があったかは想像に難くありません。先に述べましたように本学を取り巻く多くの問題、課題がありますが、内科学第二講座ならびに札幌医科大学の歴史と業績から多くを学び取りつつ、教室員ともども現在の問題を解決し未来への展望を開くことに努力したいと思っております。同窓会の諸先生には今後とも是非ご指導、ご助力賜りますようお願い申し上げます。