会長挨拶

札幌医科大学医学部同窓会会長
退任にあたって

20期 田中 繁道

2012年以来、10年間(足掛け11年)の長きにわたり会長を勤めさせていただきました。会長退任にあたり、この10年間の経験を基に札幌医科大学医学部同窓会についての想いを少し語らせていただきます。

私の前会長 矢花剛先生から、2010年に副会長のご指名をいただき、同窓会の何たるかの理解不十分のままにお引き受けしたのが、同窓会業務に携わる始まりでした。当時は、矢花会長がリーダーとなり同窓会を牽引し、私はその指示に従って動いていればよかったのですが、突然、矢花先生の体調不調もあり、次期会長へのお話があり、やむにやまれずお引き受けすることになりご推薦・選出していただきました。通常会長は複数期はやられるものだと思っていましたので、まさしく青天の霹靂でした。

会務に関する経験が浅いままの会長職でしたが、矢花先生からはご丁寧に引き継ぎを受けました。同窓会の最大の懸案事項は、委員会制による開かれた運営の確立と財政問題、加えて役員の若返りであると当時認識しました。しかし、私が最初に面食らったのが、長い同窓会の歴史の中で、大きな行事は大枠スケジュール化されているにも関わらず、そのスケジュールはもとよりその当日のタイムスケジュールも長年経験してこられた常任幹事の先生の頭の中にあり、期日間近になって情報が伝わるという状況でした。また経理の方法も会計士や税理士の指導もなく、素人の経験で処理されてきたものを監査がチェックしていたのが実情でした。これは必ずしも当事者の問題ではなく、最近よく言われるレガシーシステムの踏襲の結果だと思います。

矢花元会長の発案で、会務運営に委員会制を導入して間もない時期でしたので、各委員会の役割が明文化されていたにも関わらず、順調に機能しているとは言えない状況でした。当然ながら紆余曲折はありながらも、委員会制を何とか軌道に乗せることができ、役員(副会長、常任幹事)の先生方と共に同窓会の活動の見える化に努めてきました。加えて、経理も公認会計士の指導を受け、誰が見ても理解できる処理方法とすることができました。同窓会行事の手順も可能な限り文章に残し、後任に託すことができました。役員の若手への移行も少しは達成し、少なくとも考え方としては方向性ができたと考えています。まだまだ改善の余地はあるものの、少しは同窓会のお役に立てたかな、という多少の満足感はあります。

一言加えさせていただきますと、委員会制を取ったということは、一方で専門制を敷いたということにもなります。一般の企業でも言われていることですが、仕事の属人化が進むとその人がいなければその部門の機能が停止ないしはそれに近い状態に陥ります。リスク管理として、このような事態は避けなければなりません。そのためには少なくとも自分の対応している仕事内容を記録し見える化し、かつ情報の共有化を図ることはかなり重要です。それと関連することですが、コミュニケーションのあり方は、皆さんの施設でも大きな課題の一つだと思います。ましてや札幌医科大学医学部同窓会は抽象的な目的のもと、ボランタリー集団が役員として会務を運営する組織です。そう容易な課題でないかもしれませんが、同じベクトルを向いていけるような同窓会であってほしいと願っています。

一方、悔いはたくさんあります。一番の心残りは財政的立て直しができなかったことです。今の終身会費制を継続するなら5万円では安すぎます。しかし、会費値上げに伴う懸念材料は、卒業生の同窓会離れ(あるいは無関心)による入会者の減少に拍車をかけはしないかということです。このため、会費値上げの積極的な提案に躊躇してしまいました。まずは、同窓生の寄付による財政立て直しを図り、そのうえで会費値上げの議論を始めてはいかがでしょうか。また、近年では幹事不在の卒業期が目立っています。結果、毎年の講演会、社会福祉貢献賞、懇親会を担当する当番期幹事を数年前になってから慌てて依頼し、担当者を選ぶという自転車操業的な運営を迫られています。すべての卒業期の幹事を、可能な限り卒業前に決めるよう強く働きかけていくべきでした。

最後に、何よりも声を大にして言いたいことは、大学と同窓会が一体となるという理念が必要です。力を結集することこそ重要で、『同窓生は札幌医科大学を、札幌医科大学は同窓生(同窓会)を常に気にかけ、お互いに協働し合うこと』を大学と会員の皆さまに呼びかけたいと思います。私も提案はしてきたつもりですが声が小さすぎたのでしょう、そこには至っていません。「札幌医科大学の発展なくして同窓会の発展はなく、同窓会の発展なくして札幌医科大学の発展なし」ということを、大学も同窓会も肝に銘ずべき、と考えます。

新会長西里 卓次先生による執行部も立ち上がり、船出をしました。これからの札幌医科大学医学部同窓会と札幌医科大学の発展を願って、会長職を辞しても応援していきたいと考えています。11年にわたる会長の間、皆様からいただいた多大なご支援、ご協力に感謝申し上げます。ありがとうございました。

末筆になりますが、まさに未曾有の新型コロナウィルス感染は、日により新規陽性者の変動がみられるもののトレンドとしては収束に向かっていると思われます。長期にわたる新型コロナウィルスとの戦いになっておりますが、光明は見えています。皆様が今後ますますご健勝でご活躍されることを祈念申し上げ、会長退任のご挨拶とさせていただきます。

令和4年9月30日