専門分野別診療案内
排尿障害
排尿に関することでお悩みの方へ
排尿に関する悩みは小さなお子様からご年配の方までたくさんの方が持っているものの、なかなか相談しにくいことが多いと思います。しかし、排尿は毎日繰り返し行われる生活の一部ですので、症状が続くことで生活の質が大きく低下し、健康的な生活が送れなくなるため、我々は排尿の悩みを非常に重要なことと考えております。また、そのまま放っておくと腎臓の機能が悪くなることもあるので注意が必要です。
それぞれの排尿に関する症状(尿が出にくい、尿が近い、など)の原因は多彩であり、簡単に分からないこともあります。具体的な病名としては前立腺肥大症、過活動膀胱、間質性膀胱炎、低活動膀胱、神経因性膀胱、尿道狭窄症などがあります。当院では様々な方法で原因を調べて治療方法を決めておりますが、特に内圧尿流測定検査では非常に多くの情報が得られ、症状の原因がほとんど判明します。方法としては尿道に細いカテーテルを挿入して行う検査なのですが、痛みがないように麻酔をして行います。他の簡単な検査で原因が分からない場合はこの内圧尿流測定検査を行う場合もあります。
前立腺肥大症
前立腺肥大症は60歳代男性の約6%、70歳代男性の約12%がかかり年齢とともに進行する非常によく見られる病気です。前立腺は膀胱の出口部の尿道を取り囲むように存在し、精子を作る働きを持つ臓器ですが、様々な原因で年齢とともに大きく肥大していきます。前立腺が肥大すると尿道が狭くなり、また前立腺が膀胱へ飛び出していくことで、尿が出にくい症状や頻尿症状の原因となります。がんなどとは違い命にかかわることは少ないですが、最近は健康寿命の重要性が注目されていることもあり、前立腺肥大症を治療して生活の質を高めることは非常に重要なことです。
前立腺肥大症は薬による治療で症状が良くなることも多いですが、薬が効かない重症の患者さんには手術による治療も選択肢の一つです。手術の内容としては、以前は経尿道的前立腺切除術といって内視鏡を使い電気メスのようなもので前立腺を少しずつ切り取っていく手術が主に行われていましたが、出血量がやや多いこともあり高齢の患者さんや合併症の多い患者さんにはあまりお勧めできないものでした。しかし最近では手術機器の発達により体にやさしい手術が出来るようになりました。当院でもグリーンライトレーザーというレーザーで前立腺を蒸散させる手術を行っていますが、出血がほとんどないため抗血栓治療薬(血をサラサラにする薬)を内服したまま手術することも可能です。保険適用の手術ですので高額ではなく、手術時間は1時間半程度で入院期間は5日程度です。また、重要な点として前立腺が肥大していれば必ず手術による治療効果が得られるわけではないため、当院では手術をした場合に排尿状態がどの程度改善するかを予測出来る検査(内圧尿流測定)を原則として行っております。更に、手術後も状態が改善しているか、再発の危険はないかなど定期的な経過観察をして、手術後の生活をサポートさせていただいております。
性同一性障害
腎移植
他の医療機関の方へ
当科腎移植外来へのご紹介につきましては、専用の診療予約申込書にて、当院医療連携室にお申し込み下さい。
当科では腎移植をおこなっています。
- 腎移植とは
慢性腎臓病が進行したものは「末期腎不全」と呼ばれ、自分の腎臓の機能を代償する治療を受ける必要があります。この治療は「腎代替療法」といい、血液透析、腹膜透析、そして腎移植が含まれます。
腎移植は、この中で唯一の根治治療であり、血液透析や腹膜透析に比べると、生活の質が高いだけではなく、生命予後(寿命)も改善すると言われています。腎移植は特別な治療ではなく、健康保険が適用される、標準的治療です。
腎移植には、健康な親族の方から腎臓を提供していただく「生体腎移植」と、亡くなった方から提供していただく「献腎移植」の2つがあります。腎臓を提供して下さる方を「ドナー」と言います。腎臓をいただく患者さんを「レシピエント」と言います。
手術では、レシピエントのお腹を開けて、ドナーからいただいた腎臓の血管などを繋ぎ、移植します。通常は右下腹部に移植します。 - 腎移植を受けることのできる方
腎移植の適応となるのは、以下の方です。医学的に問題がなければ、70歳台の方でも腎移植を受けることは可能です。- 末期腎不全で、血液透析などの治療が必要、と言われた方
- 既に血液透析、あるいは腹膜透析を受けられている方
- 心臓の機能、呼吸の機能などが、手術に耐えられる
- 感染症がない、あるいはあっても病気がよく抑えられている
- がんなどの悪性腫瘍ない、または根治している(がんの状態、種類により異なります)
- ご本人、あるいは周りの方が、内服薬の管理をきちんとできる
亡くなった方から腎臓の提供を受ける「献腎移植」を希望される場合は、希望する腎移植施設(当院もお選びいただけます)を通して検査を受け、「日本臓器移植ネットワーク」に登録する必要があります。詳しくは公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク ホームページをご覧下さい。 - 腎移植と拒絶反応
腎移植では他人の臓器を体内に入れるため、拒絶反応を起こす可能性があります。免疫抑制剤などを服用することでほとんどが予防できます。また、従来その危険性が高いと考えられてきた「血液型不適合腎移植」も、ほとんどの場合は安全におこなうことができます。
しかし、ドナーの組織に対する「抗体」を持っている場合、激しい拒絶反応を起こす可能性が高いと考えられます。これを「抗ドナー抗体陽性腎移植」といいます。妊娠、輸血、以前の臓器移植などをきっかけに、このような「抗体」ができると考えられます。
以前は拒絶反応の可能性が高いため、腎移植をおこなうことはできないと考えられていました。しかし、現在では事前に精度の高い検査をおこなうことと、手術前に特別な治療をおこなうことにより、多くの方で腎移植をおこなうことが可能となっています。 - 腎移植の相談、腎移植後の定期受診について
腎移植の準備のためには、数回外来を受診していただき、検査を進めていく必要があります。腎移植後は、拒絶反応や合併症を抑える大切なお薬があり、これを永続的に続けなければなりません。安定すれば、1~3か月ごとに通院していただき、定期検査とお薬の処方をおこないます。腎移植前の相談、および腎移植後の定期受診に関して、通常は腎移植を受けた病院へ通院する必要があります。 - 札幌医科大学泌尿器科の腎移植の特徴
- 現在、年間約10件の生体腎移植をおこなっています。必要な検査が終了していれば、3~4か月後に生体腎移植を予定することが可能です。
- 通常の生体腎移植や「血液型不適合腎移植」はもちろん、従来は難しいと考えられてきた「抗ドナー抗体陽性腎移植」も積極的におこなっています。詳しい検査をおこない、腎移植ができるか検討いたします。
- 当院からの遠隔地にお住まいの方にも、頻繁に札幌にお越しいただくことなく、腎移植前の相談、検査や、腎移植後の管理をおこなう体制を作っています。腎移植前に1回は当院の外来受診をしていただく必要はありますが、あとは手術の時に入院していただくのみで、その後の当院への定期外来通院は不要とすることができます(ただし、1〜2年に1回の定期検査入院にはお越しいただくことがあります)。現在、八雲総合病院、製鉄記念室蘭病院、帯広協会病院、函館五稜郭病院で対応が可能です。さらに今後、この他の地域でも体制を整備する予定です。
- 当院は献腎移植の実施も可能です。当院での登録をご希望の方はご相談下さい。献腎移植について、詳しくは公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク ホームページをご覧下さい。
- 次のような方は、是非当科にご相談下さい
- 主治医に、近々腎移植などの治療が必要、と言われた方。
- 腎移植の説明は受けたことがなく、血液透析を予定されている方、あるいは既に血液透析を受けている方。
- 腎移植の説明は受けたが、札幌から遠隔地に住んでいるので難しい、と考えられている方。
- 他の病院で「腎移植は難しい」、と言われた方でも、腎移植が可能な場合があります。
内分泌・男性不妊症
札幌医科大学泌尿器科では、当院婦人科、および院外のクリニックと連携して、男性不妊症に対する以下の治療をおこなっています。それぞれ、どの治療が適しているか、診察や検査をおこない、ご相談いたします。
- 精液中の精子が少ない方のための治療
- 顕微鏡下精索静脈瘤切除術
精巣の静脈に静脈瘤がある場合、精巣の温度が上がることで精子の産生が低下している可能性があると言われています。顕微鏡を使って、この静脈を遮断することにより、70%以上の方で治療効果が得られます。手術は2泊3日の入院で、全身麻酔でおこないます。
- 顕微鏡下精索静脈瘤切除術
- 精液中に精子が見られない方で、顕微授精をおこなうための治療
- 精巣内精子採取術
精巣では精子が作られている可能性が高い方には、日帰り入院で、局所麻酔で可能です。 - 顕微鏡下精巣内精子採取術
精巣での精子の産生が低下している可能性が高い方が対象です。精子を採取できる可能性を高くするため、全身麻酔で、顕微鏡を使って、精巣組織を選んで採取します。2泊3日の入院で可能です。
- 精巣内精子採取術
- 精液中に精子が見られない方で、できるだけ自然妊娠を考えたい方の治療
- 顕微鏡下精管精管吻合術
以前に精管結紮術を受けた方で、その後お子さんを希望される方などが対象になります。 - 顕微鏡下精管精巣上体吻合術
精液中に精子が見られない方で、精子の通り道が閉塞している可能性がある方が対象となります。
- 顕微鏡下精管精管吻合術
性機能
札幌医大泌尿器科では、勃起障害などの性機能障害でお悩みの方やいわゆる男性更年期障害といわれる加齢男性性腺機能低下症候群に対して、古くより専門外来を開設して治療を行ってきていました。本邦では勃起障害や射精障害などに対して、海外とは異なり認められている治療は限られてはおりますが、できる範囲で治療を行っております。性機能障害でお困りの方は、一度ご相談ください。
また、当院では労働災害や交通事故後に勃起障害を自覚し、その診断でお困りの方にもその認定に必要な検査も施行しております。こちらもお困りの方は是非ご相談ください。
海外では女性に関する性機能障害に対する、診療や治療も盛んです。本邦では、その病態に対して保険診療で認められている治療はない状態ですが、できる範囲での相談等には対応していきたいと考えております。何か質問や聞いてみたいことがございましたら、当科までご連絡ください。
悪性腫瘍
がんの治療は、大きく分けて①手術、②放射線、③薬物療法があります。がんの種類や進行度(ステージ)によって適応が異なったり、これらの治療を組み合わせたりします。がんを制御するためには、手術であればどのような切除範囲にするか、臓器の機能をどこまで温存し、どのように再建するかを考えます。放射線治療であれば、どのような方法で照射範囲や照射量をどうするかを計画し治療を行います。薬物療法であればどの薬をどのようなタイミングでいつまで行うかが重要になります。
また、治療により日常生活の質(quality of life: QOL)を損なわないか、そのために準備すること、整えるべきことは何かを患者さんやご家族と一緒に考えて治療をすすめていきます。がんの制御と機能の温存を両立するため、常に最新の知識や技術を磨き、国内外に我々の治療指針とその検証結果を報告し、患者さんにとってベストな治療を提供することに努めています。