病理研修医は語る
病理診断科・病理部 計良淑子
医学部入学時には、おそらくそのほぼ全員が、かっこいい、デキる臨床医になってばりばり患者さんを助けるぞ、と野望を胸に秘めていることでしょう。わたしは…、う〜ん、それはやっぱりそうであったはずです。
しかし、今私は患者さまからかなり離れた場所から診療をしています。病理医になるなんて、想定外の事態です。というか、それ以前に病理医なんて生業があることも知らなかったくらいです。
あぁ、そうそう、医学部低学年の頃は、なんとなく腫瘍内科医になりたかったんでした。あら、立場は変われど、ちゃんと腫瘍病理の立場で役立ってるじゃないですか。初志貫徹ですね。違うか。
軽口はさておきまして、私が病理医を志したのはかなり遅く、初期研修中のことでした。内科や外科では、生検材料や手術材料を採取し提出するとき、その結果を待っているとき、結果が出て治療を検討するとき、つまりは日常診療のかなり大部分の過程で、病理組織診断の重要性を痛感させられました。まだ自分の将来について決めかねていた時期でしたから、いくつかの臨床科と共に、すんなり病理診断科・病理部も候補に挙がりました。
どんな臨床科の検体をも扱い、ほぼ全科の臨床医と対等に話すことを必要とされる病理医。正直、わたしに務まるだろうかと不安な気持ちもありました。病理に進んでみようかと迷っているときに他科の先生に相談すると、「病理だなんて、勉強好きなんだね。」とか、「頭いいんだね。」なんて言われてしまい、暗澹たる気分で否定していました。
やっぱり臨床をやりたいのではないか、というか、やっておいた方がいいのではないか、そんなマイナーな道に入って行って大丈夫なのか、と逡巡していたときに救いになったのも、しかしながら臨床科の先生方のアドバイスでした。「何といってもつぶしが効くよ。」「もう一度やり直すなら、間違いなく病理を選ぶ。(注; ほんとにこう仰ったんですよ)」
初期研修2年目、札幌医科大学附属病院病理診断科・病理部での研修を自由選択期間の多くを充てて、そのまま入局し、現在に至ります。紆余曲折を経る…ことはありませんでしたが、私なりに悩んで出した結論です。
そして、今はまっっったく後悔することなく、充実した毎日を送っています。そういえば、「病理って楽なんでしょ。」「9時5時なんでしょ(就業時間内で帰れるんでしょ)。」とも言われましたね。残念ながら、そんなことはありません。よく考えればそんな甘い世界であるはずがなく、(甘〜い世界を期待していたわけではありません ^^;)、多岐に渡る組織診断がそう簡単にすいすいできるようになるわけはありません。悩んで、調べて調べて、勉強して、英語の教科書引っ張り出して、聞いて回って、文献探して、です。それでも腑に落ちないこと、わからないことがあります。でも、自分の純粋な興味に従った結果、やはり一番自分にふさわしかったと胸を張って言えますし、ずっと続けていける仕事だと確信が持てるようになってきました。
病理診断科・病理部は2010年4月から、長谷川教授を筆頭に、医師5名と病理検査技師6人、技師補助員1名、解剖補助員2名、秘書1名、受付1名で構成されます。標本作製や細胞診のスクリーニングを担っている検査技師と二人三脚で日常業務をこなしていくのも、他科にはない特徴です。病理を専門とする検査技師は細胞検査士という資格を有した方が多く、独立したプロフェッショナルとして、お互いに尊重して仕事をしています(いつもお世話になっております(._.))。
また、診断病理の世界でも、若い世代には女性医師が増えています。診断業務はかなりフレキシブルに働くことが可能な環境ですから、私自身を含め、妊娠、出産を考えていかなければならないけれどもキャリアを継続したい女性医師にとっては、大きな魅力と思います。外来、病棟、検査、出張をこなさなければならない他科に比べ、産前産後、育児中も働きやすい環境であるはずです。座ってできる仕事が大半であることも、男女差なく力が発揮でき、また仕事を継続していく上で有利な環境と思います。もちろん、男性医師にとってもこれらは魅力ではないでしょうか(重ねて言いますが、楽なだけではないんです)。
診断病理の世界はかなり特殊と思われるかもしれません。しかし、だからこそ一度しっかり見てほしいと願っています。学生向けの勉強会も始まることですし、ぜひとも学生の皆様、顔を見せて下さいね。心よりお待ちしています。
(2010年3月)
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