病理診断科・病理部について
病理診断
病理診断科の医師は、病理解剖を除けば、直接患者さんを診察することはありませんが、あらゆる疾患において診療の一翼を担っています。
まず、内科や外科などの各診療科で生検や手術によって患者さんの体から採取された組織(検体)が病理診断科に提出されます。その検体から作製された標本を顕微鏡で観察し、病変の良悪性の判定や腫瘍の広がりの検索、炎症性疾患の評価などの組織診断が行われ、主治医のもとに病理診断報告書が提出されます。病理診断結果は患者さんの治療方針の決定に生かされます。
検体はまず、その形態をなるべく生きた人体の中にある状態に保つため、固定液に浸ける「固定」処理を行います。固定液としてはホルマリンが用いられます。胃生検などの生検の場合には微小な検体が多いので、固定された検体をそのまま標本にする場合が多いのですが、手術材料などの大型の臓器場合、検体から必要な部分だけを「切り出し」て標本にする必要があります。この「切り出し」作業は通常、病理医によって肉眼的な観察および写真撮影とともに行われます。最初の動画をご覧下さい。
手術の現場で病理診断が必要とされることがあります。理想的には手術前の検査で腫瘍の良性・悪性の診断がついているに越したことはありませんが、その診断がつかなかった場合や、何らかの事情で手術前の検査が行えない場合などです。こうした場合、手術の現場で腫瘍の切除方針を決める前に検体をとって病理診断を下す必要があります。「術中迅理診断」は通常なら検体の提出から標本作製、診断まで、数日かかるところが15分ぐらいの短時間で行われます。これは、手術中に病変が完全に取り切れたかどうかを確認したり、腫瘍の切除範囲を決定するためにも行われます。さらに、特定のリンパ節を検体として取ってがんがそのリンパ節へ転移していないかどうかを確認する場合もあります。次の動画をご覧下さい。
病理解剖
患者さんが死亡されたときに、主治医から病理解剖が提案されることがあります。病理解剖では、実際に体の中を開けてみることで画像や血液検査だけでははっきりしなかった変化を探すことができるため、臨床的・病理学的に非常に有意義な結果を得られます。ただし、ご遺族が同意された場合のみ病理解剖の依頼が成立します。
解剖時は胸腹部あるいは頭部から臓器を取り出し、詳細に観察します。解剖終了後はご遺族にご遺体をお返しします。その後、標本を作製して組織学的に検討し、最終的な報告書の作成には数ヶ月かかります。報告書の提出後、各診療科とCPC(臨床-病理検討会)を行い、患者さんの死因、疾患の状態、治療効果などについて議論します。
当科では、札幌医科大学附属病院に入院された患者さんだけでなく、関連病院・非関連病院からも病理解剖を受け付けております。詳細はお問合せください。なお、ご遺族からの直接のご依頼は受け付けておりませんので、主治医とご相談ください。
診療実績
年/診断名 | 組織診断 | 細胞診 | 迅速診断 | 院内解剖 | 院外解剖 |
---|---|---|---|---|---|
2023年 | 9,347 | 8,101 | 713 | 14 | 0 |
2022年 | 8,771 | 8,222 | 686 | 10 | 5 |
2021年 | 8,506 | 8,073 | 702 | 12 | 1 |
2020年 | 7,961 | 7,803 | 724 | 14 | 0 |
2019年 | 8,679 | 8,683 | 845 | 20 | 5 |
ISO15189取得
臨床検査室の国際規格であるISO15189を取得しました
病理部は、臨床検査室の国際規格であるISO15189:2012の認定(認定番号:RML02900)を2022年6月24日に取得いたしました。
ISO15189とは臨床検査室の品質と能力に関する特定要求事項を提供するものとして国際標準化機構(International Organization for Standardization)が作成した国際規格です。病理標本の作製や組織・細胞診断において病理検査室の品質保証の重要性は高まってきています。また国際的整合性を踏まえた検査データの正確性が重要であり、ISO15189を用いた病理部・病理診断科の品質マネジメントは必須であると考えられます。またこの規格を遵守することで精度の高い診断結果を診療医、患者に提供することはもちろん、各診療科の臨床研究および治験等にも寄与できるものと考えます。ISO15189を取得している病理部・病理診断科として日々改善を行い、質の高い医療を提供し続けていけるようスタッフ一同努力してまいります。