札幌医科大学附属病院 病理診断科・病理部
 
組織・細胞のとっても大事な顕微鏡診断

 病理診断とはどのようなものなのでしょうか?
 病理学とは、顕微鏡を使って病気のなりたちや原因を明らかにする学問で、医学部では基礎医学の重要な分野の一つです。その中で、「病理診断」は患者さんの組織や細胞を顕微鏡で見て正確な判断を下すことで、臨床医学のいわば「縁の下の力持ち」といってよい分野です。その専門の医師を「病理医」といいます。病理医は札幌医科大学附属病院では「病理診断科・病理部」で、また「病理診断科」を標榜している一般病院で常勤しています。
 実際に病理医はどのような仕事をしているのですか?

外科医、学生と一緒に術中迅速標本を見る
 病理診断で分かるのは、腫瘍が良性か悪性か、周辺の組織への拡がり具合はどうか、どの薬が有効かなど、主治医が治療方針を決める上で重要な情報が含まれています。病理医は直接患者さんを診ることはありませんが、手術中に待機して「術中迅速診断」 を行なっています。これは、外科医が持ってきた組織を検査技師が凍結し、薄くスライスしてすぐに染色した標本を顕微鏡で見て調べるものです。標本ができあがるまで15分ぐらいかかりますが、病理医は良悪性の判定や、がんが取り切れていて断端にがん細胞があるか無いかを判断し、その結果をインターホンで手術室に伝えます。外科医は手術中の患者を待たせていますが、その結果を聞いて手術をどのように進めるかを判断する重要な根拠にしています。
 標本を染色すると何が分かるのですか?

乳癌組織のFISH検査では、HER2
遺伝子増幅 (赤) が多数で陽性判定
 最近、様々ながんで原因遺伝子が発見され、その遺伝子異常に対して効果が期待できる薬を選んで狙い撃ちすれば大きな治療効果が望めることが分かってきました。また、腫瘍に特異的な遺伝子異常を検出することは病理診断にとっても有用です。例えば、乳癌、胃癌では「HER2」遺伝子増幅のある患者さんに対して「ハーセプチン」という治療薬が有効です。この場合は、異常な遺伝子が作るタンパク質に色を付ける「免疫染色」を検査技師が組織標本で行なって、陽性あるいは陰性かを病理医が顕微鏡で見て判定します。 陽性か陰性かの判定が困難な時は、さらにHER2遺伝子異常そのものを組織標本で検出する「FISH」という遺伝子検査を検査技師が行い、病理医が判定した陽性結果に基づいて主治医はその治療薬を選択します。私たちの研究室では遺伝子診断用のFISHプローブを研究・開発し、日常の病理診断と患者さんの治療に役立てています。
 病院に病理医がいることが医療にとって大事なんですね。
 その通りです。病理医がいると患者さんは診断結果が早く分かるようになります。先に述べた術中迅速診断だけでなく、患者さんが不幸にして病院で亡くなると病理解剖を行なって死因を究明し、治療効果を検証することで、明日の診療に役立てることができます。研修医のための症例検討会を行なうこともできます。しかし、北海道には病理医の常勤する病院がまだまだ少ないのが現状です。現在、病理診断に興味をもってもらえるように、医学部の学生教育に力を入れて取り組んでいます。
 
TOPご挨拶病理診断科・病理部についてメンバー紹介教育・研修のお知らせ研究内容研究業績リンクお問い合わせ
copyright(C)2006 Sapporo Medical University Hospital. All right reserved.
 
リンク お問い合わせ