ごあいさつ
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「衛生学」は基礎医学の一分野で、人の健康・疾病に関わる環境要因を研究することにより、疾病の予防と健康を推進する学問です。人の健康に関わる環境要因には、物理的要因、化学的要因、生物的要因、社会的要因など様々なものがあります。私たちの仕事は、それらの環境要因による健康影響と予防医学的方策について教育・研究を行うことです。
札幌医科大学医学部衛生学講座では、生物学的要因である感染性微生物(細菌、ウイルス)に着目し、感染症および感染制御を目標とした研究活動に取り組んでいます。私たちの研究には、感染性微生物に関する分子疫学的・分子遺伝学的研究から感染症流行の時系列解析に至るまで、幅広いアプローチによる様々なテーマがあります。感染症は今なお全世界の人々の死亡原因の4分の1、開発途上国では約半分を占めています。おもな感染症は制圧されたと考えられている先進国においても、新型インフルエンザのような新興感染症の脅威を免れることはできず、結核等の再興感染症や薬剤耐性菌の蔓延など多くの問題が解決されていません。過去から将来に至るまで普遍的でグローバルな健康問題である感染症について、学内外において教育・研究・啓蒙を進めることが、私たちの使命と考えています。
私たちの研究・教育活動には、「国際協力」という大きな特徴があります。日本国内での研究に加え、感染症の研究・教育・保健活動を通じ、特に開発途上国における協力・支援活動を行ってきました。現在、5カ国(中国、インド、バングラデシュ、ミャンマー、キューバ)と感染症の共同研究を進めており、現地における研究の支援や研究者の教育にも尽力しています。私たちの教室においても、途上国の研究者を様々な形で受け入れており、技術指導を行いつつ共同研究を行っています。
今後も世界的視野に立ち、教室員が一丸となって感染症研究と国際協力を推進していきたいと考えております。