知財制度に関する質問

入門編

Q1.自分の研究成果が特許になるのか相談したいのですが、相談窓口はどこですか?

附属産学・地域連携センターまでご連絡ください。担当者が詳しくお話を伺います。 また、開発部門長や他のスタッフが各講座を訪問して相談に応じることもできます。出願する場合に備えて、外部への発表(学会発表、論文発表等)には十分ご注意ください。

【知的財産(特許出願等)に関するお問合せ先】
札幌医科大学 附属産学・地域連携センター
〒060-8556 札幌市中央区南1条西17丁目
TEL:011-611-2111(内線21070)
FAX:011-611-2185
E-mail:chizai※sapmed.ac.jp(※を@に変えてください)

Q2.知的財産に関する業務内容を教えてください。

1)知的財産の創出支援(シーズ発掘・発明相談・研究戦略相談)
大学教職員の研究成果が発明等として出願可能か等の相談に応じます。特許出願等に向けた研究戦略の相談に応じます。


2)知的財産の保護支援(知的財産の手続・管理)
創出された発明等について、学内審査会で検討を行い、出願が決まったものについて、外部特許事務所と連携しながら出願等の手続を進めます。出願後は、特許化等の支援、特許権等の維持管理を行います。


3)知的財産の活用(技術移転、特許の実施)
大学で生まれた知的財産を、社会で活用するための支援を行います。そのために、 情報を発信し、社会で活用するための橋渡しとして、円滑な技術移転を推進します。 また、企業、大学、行政等の他機関に対する大学側の窓口として機能します。


4)その他の活動
I. 先行技術調査支援を行います
研究の計画を立てたり、研究成果につき出願を考慮する場合には、先行する特許等の調査が欠かせません。調査のノウハウにつき手解きします。
II. 契約相談を行っています
共同研究、MTA等の契約に関する相談に応じます。
III. セミナー等
セミナー等の啓蒙活動の企画・支援を行います。

Q3.大学における特許出願の手続きはどのようになっておりますか?

大学の教職員が発明等を行った場合は、まずは産学・地域連携センターへご一報ください。発明者等からヒヤリング等を行い、産学・地域連携センターで先行事例調査や特許性、市場性などの評価を行います。この間、必要に応じて発明者とディスカッションを行い、特許出願等の可否を検討します。特許出願等を行う場合は、大学が特許を受ける権利等を承継し、特許事務所と出願書類の作成を行います。出願書類の作成に当たっても、発明者等とディスカッションを行い、また、産学・地域連携センターからはJSTの特許出願支援の申請も行います。

特許権利取得までのプロセス・維持管理
特許出願後、特許庁に審査請求を行い、特許として成立するかどうか審査を受けることになります。多くの場合、特許庁から拒絶理由通知がなされることになりますが、担当弁理士や産学・地域連携センターと必要に応じて、発明者も含めて、対応を検討します。この特許庁の審査を通過すると、晴れて特許権として登録されることになります。特許を維持するには毎年年金を納める必要がありますが、この手続きも産学・地域連携センターが行い、年金は大学が負担します。

プロセスの図

Q4.特許出願に必要なデータや手続き関係書類はどのようなものがありますか?

特許出願に当たって必要な書類の作成、手続きは基本的には産学・地域連携センターと外部特許事務所が行います。
出願書類の作成に当たっては、学会発表レベルのデータが必要となり、イントロダクション、図、リザルト、マテリアルアンドメソッドに相当する内容を揃えて頂きます。また、産学・地域連携センターからは発明者に対し、データの確認や、追加実験の有無などの問い合わせ、ディスカッションをお願いする場合がありますのでご協力をお願いいたします。

Q5.特許出願にはどれくらい時間や費用がかかるのですか?

最初の相談から特許出願までは概ね1ないし3か月かかります。
学会発表や論文発表など、外部に発表する予定がある場合はご注意願います。なお、大学から特許出願する場合(出願人が大学)、特許出願に係る費用の一切は大学が負担します。

Q6.大学院生は、特許出願することは可能でしょうか?

大学院生の発明は職務発明とならず個人発明として取り扱われ、権利も大学院生に帰属します。しかしながら、一般的には教員等と共同で研究を行い、発明が産まれるので、単独で発明者となることはまれです。また、大学院生が出願人(権利者)として名前を連ねることによって、出願費用や契約など個人的な負担が大きいので、権利を大学に譲渡することをお勧めしています。
これによって教員と同じ扱いになりQ7で述べているメリットを受けることができます。

基礎編

Q7.大学に発明を譲渡した場合のメリットを教えてください。

発明者が大学に特許を受ける権利を譲渡すると、特許に係る手続きを大学の責任において行いますので、その煩わしさから解放されます。
さらに、それらに係る費用負担も大学が行います。また、特許および特許を受ける権利のライセンス活動等も、教職員と連絡を取りながら大学が責任をもって行います。 

Q8.個人名義で、出願できますか?

発明の帰属先は、札幌医科大学教職員の勤務発明等に関する規程に則り、大学に承継していただくことになります。
但し、知的財産権に関する承継審査において、大学が承継しない旨を決めた場合には個人帰属となります。

Q9.転勤などにより移動した場合の権利は、どうなりますか?

特許を受ける権利は、異動前に発明が完成した場合、異動前の機関に帰属します。
もし、異動後に発明が完成した場合、発明に対する研究の寄与度などについて、異動前後の所属機関で検討する必要がございますので、産学・地域連携センターまでご相談ください。

Q10.特許になる発明とならない発明の違いを教えてください。

特許となる発明には、次の6つの要件を満たしていないといけません。これらの要件が一つでも満たされない発明は特許になりません。

  1. 発明であること
    特許法において、発明は「自然法則を利用した技術思想の創作のうち高度なもの」と定義されております。単なる発見やデータそのもの、マニュアルや計算方法、自然法則そのものは発明とみなされません。
  2. 実施可能で産業上利用できること
    特許出願に当たっては、発明が実際に「作れ」、どのように「使える」かについて明細書に具体的に記載する必要があります。また日本では、治療や診断など、医師が人間に対して行う医療行為については特許が認められませんが、医薬用途の特許等として権利化できる場合が多いのでご相談ください。
  3. 「新しい」技術であること(新規性)
    特許出願前に、その内容が公になると、その技術は「公知」のものとみなされ、新規性を失い特許が認められません。たとえ本人よる論文発表、学会発表、ネットや新聞その他での発表によっても新規性は失われますので注意が必要です。また、出願前の特許の内容について、守秘義務を負わない第三者に開示することは避けてください。必要な場合は簡単な守秘義務契約を締結するようにしてください(ひな形は研究支援課知的財産係にあります)。
  4. 「容易に思いつかない」技術であること(進歩性)
    その発明が新規のものであっても、既存の技術の単なる組み合わせなど、従来の技術から容易に考えられるものには特許が認められません。 一方、その発明により従来の予想に反したり、その分野で一般的に予想される内容を大幅に上回る効果が得られる と特許性の判断に有利に働きます。
  5. 他の特許出願より先に出願していること
    日本や世界のほとんどの国では同一の発明について複数の出願があった場合、先に出願した人に権利を与える「先願主義」を採用しています。
  6. 公序良俗に反しないこと
    クローン人間や大量殺傷兵器など、公序良俗に反する発明には特許が与えられません。

Q11.特許出願と特許権の区別について教えてください。

特許は出願しただけでは特許権にはなりません(論文投稿と同じです)。
日本国では、出願後3年以内に出願審査請求を行い、特許庁審査官による実体審査を受ける必要があります。その後、この審査を通過し、所定の手続きを経ると特許権が発生します。

Q12.発明者と出願人は、どう違うのですか?

大学の教職員の特許を受ける権利等は、勤務発明規定に則り、原則、大学に帰属します。
発明者は発明を着想し、完成させた人のことであり、出願人は特許権を受けることになる人もしくは法人のことです。
本学では発明規定により、教職員による勤務発明を特許出願する場合、発明者は発明に実際に関与した教職員となりますが、財産権は、出願人である大学のものとなります。
但し、将来、この財産権により利益が生じた場合、札幌医科大学教職員に係る勤務発明等に係る収入配分要領に従って発明者に利益が還元されます。

Q13.発明者の定義とは?

発明者は、学会や論文等の共同著者とは意味合いが異なります。 特許庁「日本における発明者の決定」※では、「発明者とは、当該発明の創作行為に現実に加担した者だけを指し、単なる補助者、助言者、資金の提供者あるいは単に命令を下した者は、発明者とはならない。」とされ、すなわち、①実験テーマを提供した、②実験において単に一般的なアドバイス・指導を与えた、③研究費や設備を提供した、④指示されて単に実験を手伝った、⑤指示されて単にデータをまとめた、だけでは発明者になれないことを明示しています。
研究室のスタッフを発明者に含める場合に、ご不明な点がございましたらご相談ください。

※引用:特許庁ホームページ-第6回特許制度小委員会配布資料7-1(PDF)

Q14.特許出願したい研究内容について、学会発表を行いました(論文では未発表)。出願は可能でしょうか?

特許出願したい内容について、たとえ本人の学会発表によっても、新規性が失われたとみなされ、原則として特許出願はできません
また、学会に先行して要旨集が出版される場合、その時点で新規性が失われることがあるので注意が必要です。特許出願を考えている研究内容につき、学会発表を予定している場合はなるべく早めに(要旨の作成時期等)附属産学・地域連携センターまでご連絡ください。

学会発表後も新規性を失わなかったものと取り扱い、特許出願を可能とする例外的救済措置はありますが、海外での権利化に制限がかかる、ないし、特許出願費用の支援を受けるのが難しくなるなどの不利益があります。

その他

Q15.抗体やベクター、細胞などを他の大学・企業等の機関へ送りたい、もしくは相手から受け取りたい場合の留意事項はありますか?

産学・地域連携センターがこれら契約を管理する以前には、契約内容を読まずに押印やサインが行われていたため、その後の学会・論文発表およびそれらから派生した知財権で相手方とトラブルになることがありました。
そもそも大学研究者の作製した抗体やベクター、細胞等の成果有体物はその機関の財産であるため、 受ける場合でも譲渡する場合にも、相手方と成果有体物譲渡契約(MTA:マテリアルトランスファーアグリーメント)を締結することになります。
そうすることで、抗体やベクター、細胞などに係る知的財産を保護し、それらの乱用を防ぐとともに、それらから生じた不測の事故に対する研究者の責任に及ぶことを守ります。トラブルを避けるためにも、抗体やベクター、細胞などを譲受する場合、産学・地域連携センターまでご相談ください。

Q16.特許以外の知財の取り扱いについて(例えば本を執筆した場合の著作権など)

大学が保護・管理する特許以外の知財は、実用新案、意匠です(著作権、商標についてもご相談ください)。
著作権の対象となる著作物については、職務上作成した著作物を 取り扱いの対象としております。例えば、入試問題等は職務著作物として本学に権利が帰属しますので届け出は不要ですが、プログラムおよびデータベース等に関するものは、職務著作物となる可能性もございますのでご相談ください。
その他の個人的な執筆活動等の権利者はそれを行った研究者個人になりますが、大学に譲渡したい場合などご連絡ください。 

Q17.利益相反とはどのようなものなのか教えてください。

利益相反(COI;Conflict of Interest)とは、大学及び大学に所属する教職員が産学連携活動を行うにあたり、特定の企業等から得る利益又は企業等に対し負担する責任と大学の職務(教育と研究)における責任が相反している場合、および本学が産学連携活動によって得る利益と大学自体が社会に対して負担する責任が相反している場合、その他これに類する場合をいいます。
特に、大学機関などと関わりのあるバイオベンチャーの場合、利益相反に注意しなくてはなりません。現在、産学連携活動が盛んに行われている中で、大学は、社会に対し、不当と思われる個人的な経済的利益を生じさせないように管理し、教職員が安心して産学連携活動等を行えるよう、また、社会の批判から教職員及び大学の信頼を守るよう利益相反のマネジメントを行っております。