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基盤研究A Out of Africa : ホモ・サピエンスのアジア拡散モデルの再構築

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研究目的

アフリカで進化し10数万年前に出現したホモ・サピエンスは、その後アフリカを出て (Out of Africa) およそ4-5万年前になりユーラシア東部まで拡散したと推定されている。従来はアフリカを起点にヨーロッパ、アジア、サフールへと放射的に拡散した図式が一般的であったが、最近の遺伝学的知見や形態学的研究から現生人類の拡散はこうした単純で一直線的なものでなく、古くに分岐し系譜を異にしたサピエンスによる複数回の拡散移住と混血置換があった可能性や、さらには初期サピエンスにネアンデルタール人やデニソア人などサピエンス以外の人類との交雑の可能性も浮かび上がっています。本研究では現生人類のアジアへの時空的な移住の経路と回数(重層構造の有無)を形態学と遺伝学の両域から解明し、脱アフリカ後のホモ・サピエンスの拡散モデルの再構築をおこなっています。

研究組織

研究代表者

詳細一覧表
氏名 所属 研究内容
松村 博文 札幌医科大学・保健医療学部・教授 先史人類の形態解析

研究分担者

詳細一覧表
氏名 所属 研究内容
斎藤 成也 国立遺伝学研究所・集団遺伝研究部門・教授 現生人類のゲノム系統解析
篠田 謙一 国立科学博物館・人類研究部・研究調整役 古代ミトコンドリアゲノム解析
海部 陽介 国立科学博物館・人類研究部・研究グループ長 先史人骨の形態解析

研究成果

代表者の松村は東ユーラシアのサピエンス拡散二層モデルを構築し、その成果をCraniometrics Reveal “Two Layers" of Prehistoric Human Dispersal in Eastern Eurasia と題してScientific Report (article No. 1451) に公表しています。リンク先https://www.nature.com/articles/s41598-018-35426-z その骨子は、日本を含むユーラシア東南部の先史採集狩猟民は、アフリカからユーラシア南部を経て拡散し、ニューギニアやオーストラリア先住民とも共通の祖先を有する人々で構成され、シベリア北部を横断し最寒期を生き抜いた北東アジア人が黄河揚子江域において農耕を始め、再び寒冷化した4.2kaを境に急速大規模に拡散し、熱帯由来の先住狩猟民と交替したとするモデルであり、自身で発掘した東南アジア等の先史人骨を用いたゲノム共同研究(Lipson et al. Matsumura共著 Science 361: 92-95)リンク先 https://science.sciencemag.org/content/361/6397/92 からも裏付けられています。また松村は篠田とともに、インドネシアのグアハリマウ遺跡の形態解析とゲノム解析を終え、オーストロネシア集団の中国南部台湾からのOut of Taiwan仮説の完全実証に至る成果を得て、論文をPlosOneに投稿しました。リンク先 https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0198689また中国福建や台湾での国際シンポジュウムでも同成果を公表し注目を得ました。一方ベトナムのBau Du遺跡の発掘調査により、完新世中期のパプアサフール系集団の存在と独特な屈葬埋葬習慣や嗜好性植物(カナリウム)を明らかにし、これらの特徴が同時期以前の中国、東南アジアに居住した広域の先住狩猟民に共通することがわかりました。さらにサピエンスのアフリカからの移住ルート解明のため、アフリカ集団とヨーロッパ旧跡時代人の3次元形態データを採取しています。海部は、日本列島への渡来集団を類推することを目的として、長崎県の縄文早〜前期人骨について形態特徴を報告しました。またインドネシアのスラウェシ島・マロス石灰岩地帯で発掘調査中の遺跡とジャワ島のバンドンに所在する研究機関を訪問し、当地の旧石器時代人骨についての形質学的研究を開始しました。斎藤は、インド洋アンダマン諸島、マレー半島、フィリピン諸島に分布するネグリトのゲノム規模SNPデータを解析し、彼らがパプア人・オーストラリア原住民との共通祖先から3〜5万年前に分岐し、そこから東アジア人が進化したことを裏付けるデータを得ています。また、オーストラリア先住民・パプア人に次いで、ルソン島のアエタネグリトがデニソワ人からのゲノムを受け継いでいる割合が高いことを発見した。彼らと2万年ほど前に分岐したマレー半島のネグリト人にはデニソワ人のゲノムがほとんど伝わっていないので、分岐後にゲノム移入があった可能性がある。篠田はグアハリマウに加え、Batanes Islands の Diosdipun Caveから出土した人骨のDNA分析を行い、東南アジアに多いハプログループを見いだしています。

図書

New Perspectives in Southeast Asian and Pacific Prehistory
Edited by: Philip J. Piper, Hirofumi Matsumura, David Bulbeck
ANU Press発行