Entered: [1997.05.03] Updated: [1997.05.06] E-会報 No. 37(1996年 11月)
合同シンポジウム講演要旨

TGF-βスーパーファミリーのシグナル伝達機構
北海道大学・薬学部
渋谷 浩司


 TGF-β、BMP(骨形成因子)といったTGF-βスーパーファミリーは細胞質内領域にSer/Thrキナーゼを含む受容体を介して細胞内にシグナルを伝え、様々な生理活性を発揮することが知られている。我々はこれまで出芽酵母のSTE11温度感受性欠損変異株を用い、MAPKKKとして機能するマウス由来のSer/ThrキナーゼcDNA(TAK1:TGF-β Activated Kinase 1)を単離し、TAKlがPAI-1(Plasminogen activator inhibitortype 1)遺伝子を活性化しうること、TGF-βやBMP刺激により活性化されること等からTGF-βスーパーファミリーのシグナル伝達系に関与する新規の分子であることを明らかにした。また酵母Two-hybrid法を用いたスクリーニングによりTAK1と結合する因子としてTAB1(TAK1 Binding Protein 1)とTAB2を単離し、このうちTAB1がTAK1のキナーゼを活性化し、PAI-1遺伝子を活性化する因子として機能することも明らかにした。さらに、TGF-β受容体からTAK1やTAB1の活性化機構を知る目的で酵母Two-hybrid法を用い、I型BMP受容体細胞内領域に会合する分子の単離を試みた。その結果、I型TGF-β受容体に結合することが知られていたFKBP12をはじめ3種の分子cDNA(BRAM1-3)を得た。このうちBRAM2がCOS細胞内での発現実験により細胞内でI型BMP受容体細胞内領域と結合することを確認した。そして、BRAM2はTAB1と結合しうることから、受容体からTAK1やTAB1へのシグナル伝達を担っている分子であることが示唆された。また、アフリカツメガエル初期胚4細胞期背側にxTAK1 mRNAを微量注入したところ腹側化を示したことから初期発生過程においてTAK1はMAPKKKとしてBMP-2/4のシグナル伝達経路に関与している可能性が強く示唆された。


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