トピックス

第28回衛生微生物技術協議会報告


山崎謙治

大阪府立公衆衛生研究所


衛生微生物技術協議会第28回研究会は平成19年7月5・6日に岡山市で開催され、胃腸炎ウイルスのシンポジウムとして4題の発表がなされた。

1. ノロウイルス2006/2007シーズンの疫学的特徴  野田 衛(国立医薬品食品衛生研究所)
 2006年のノロウイルス(NV)集団発生事例は前年の2.2倍と増加し、感染経路では人-人感染事例が増加した。集団発生事例ではカキ以外の原因食品(寿司など)が増加した。流行は例年より早く発生し、九州から順に北上した。1歳台、70歳以上の患者が増加し、老人ホーム、病院での発生が増加した。NVの遺伝子型は95%以上がGII/4であり、感染力が強いことおよび不顕性感染率が高いことが流行の要因であったことが推測された。

2. 2006/2007シーズンに流行したノロウイルスのゲノム解析  本村和嗣 (国立感染症研究所)
 11都道府県で発生したNV感染症事例中、GII/4が検出された43事例の糞便からゲノム全長(7.5kbps)またはORF1,2全長(2.5kbps)の塩基配列を得た。系統樹解析の結果、1)2006-2007冬期のNV感染症では異なる起源をもつ3種類のGII/4が流行していたこと、2)一昨年、愛媛、堺、千葉で流行したウイルスは全国的規模で流行していないこと、3)これまでの流行株とは異なる新型ウイルスが全国的規模で流行していること、などが示唆された。またエントロピー解析により、最近の流行株はキャプシドの外側を構成するVP1のP2ドメインのアミノ酸が変化しやすいことが明らかになった。

3. 市販のノロウイルス検査キットの評価  福田伸治 (広島県立総合技術研究保健環境センター)
 市販されているNV検出試薬のうち、1)NV特異モノクローナル抗体を用いたELISA法、2)RNA抽出を必要としないNV直接検出RT-PCR法、3)RNAを直接定温で増幅するNASBA法と核酸クロマトグラフィ法を組み合わせたもの、4)定温でNV cDNAを増幅するLAMP法を比較検討した。RT-PCR法(厚労省)との一致率は、60%, 95%, 90%, 90%であり、感度は52%, 97%, 91%, 94%、特異性は100%, 86%, 86%, 71%であった。NV流行施設の規模に準じて、それぞれの長所、短所を考慮した対応が可能である。

4. ロタウイルス流行状況とワクチンの現状について  葛谷光隆 (岡山県環境保健センター)
 感染性胃腸炎起因ウイルス検索において、ウイルスの種類にかかわらず、粒子数という一定の感度で検出できる電子顕微鏡法によるスクリーニングでウイルス構成比を調べた。構成比はA群ロタウイルス62.1%、SRSV 12.6%、NV 12.3%、サポウイルス6.9%、アストロウイルス3.2%、C群ロタウイルス0.7%であった。A群ロタウイルスG型別では2003/04シーズン、2004/05がG3型、2005/06がG9型が優位であった。第2世代ロタワクチンとしてウシロターヒトロタリアソータントワクチン(RotaTeq)、ヒトロタ弱毒ワクチン(Rotarix)が海外で承認された。


←Back   抄録目次   Next→
トップページへもどる