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第8回プラス鎖RNAウイルス国際シンポジウムの報告


染谷 雄一


国立感染症研究所ウイルス第2部


 2007年5月26日から30日にかけて、米国ワシントンDCで第8回プラス鎖RNAウイルス国際シンポジウムが開催された。世界各国から数多くの研究者が参加し、プラス鎖RNAウイルスに関する66の講演と250程のポスター発表とがあった。下痢症ウイルスに関する演題は、ノロウイルスに関する講演が4題、ポスターが10題、サポウイルスに関するポスターが2題、アストロウイルスに関する講演が2題、ポスターが2題であった。以下主な演題を紹介する。

 Xi Jiangのグループ(シンシナティ大学)は、ノロウイルス粒子と血液組織抗原(糖鎖)との相互作用に着目し、単離したキャプシドタンパク質のPドメインを糖鎖と共に結晶化し、その相互作用の様子をX線結晶構造解析により明らかにした。

 Ian Goodfellowら(ロンドンインペリアルカレッジ)は、ノロウイルス(MNV)のVPgとeIF4EやeIF3などの翻訳開始因子との相互作用を解析するとともに、in vitro合成したノロウイルスRNAが5’末端のキャップ構造の有無にかかわらず、in vitro翻訳が行われないことを示し、VPgの翻訳開始における重要性を報告した。C. Sandoval-Jaimeら(メキシコCINVESTAV-IPN)はノロウイルスゲノムの5’及び3’末端とLa、PTB、PAPBなどの宿主タンパク質との相互作用に関して報告した。

 J. Rohayemら(ドレスデンウイルス学研究所)は、ノロウイルス3D RNAポリメラーゼの機能解析をし、ノロウイルス遺伝子複製に関する興味深いモデルを提示した。

 V. K. Wardら(サザンプトン大学他)は、MNV遺伝子をバキュロウイルスを介して哺乳動物細胞に導入し、感染性のあるMNV粒子の回収に成功した。

 E. F. Donaldsonら(ノースカロライナ大学他)は、近年の世界的なノロウイルス流行株であるGII/4型のなかにも、時間経過とともに配列の変化が認められ、抗原性にも影響を及ぼしていると報告している。  次回第9回は、2010年オランダで行われるようである。日本からも多くの研究者の出席を期待したい。


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