特別企画[今冬におけるノロウイルス胃腸炎の大流行について]

感染性胃腸炎, ノロウイルス感染症の疫学状況


岡部 信彦


国立感染症研究所感染症情報センター


 感染性胃腸炎は多種多様の病原体による疾患を包含する症候群であり、全国約3,000カ所の小児科定点から毎週報告がなされている。発生が増加するのは主に冬季であり、その大半はノロウイルスやロタウイルス等のウイルスが原因であると推測されている。例年、わが国の感染症発生動向調査による報告のピークは12月中旬以降となることが多く、その時期の報告、特に集団発生例の多くはノロウイルスによるものと推測される。2006/07年の感染性胃腸炎の報告は05/006シーズンに比べると少ないがほぼ例年通りの発生状況で、2006年末にピークを迎え、2007年に入り減少した。

 一方、地方衛生研究所から感染研情報センターに報告される「集団発生病原体票」(食品媒介による感染が疑われる「食中毒」や「有症苦情」、人→人感染や感染経路不明の胃腸炎集団発生などの事例ごとの情報が含まれている)では、 2006/07シーズンはNorovirus genogroup II による施設内集団感染、食中毒などの集団発生の報告が例年に比べ早く10月から大きく増加し、11月をピークに2006年9月〜2007年7月までに1,123事例が報告された。このうち、genogroup IIの遺伝子型別まで実施された432事例中414事例ではGII/4が検出されている。

 Norovirusが検出された1,152事例の推定感染経路別の内訳は、人→人伝播が疑われているものが691事例、食品媒介が疑われているものが236事例、その他感染経路が特定できず不明のものが225事例であり、診断名別にみると、「感染性胃腸炎」838事例、「食中毒」207事例、「有症苦情」103事例、「不明」4事例であった。

 10月の学術集会では、感染症情報センターで得られた06/07シーズンの感染性胃腸炎、ノロウイルスの疫学的状況をまとめ、報告させて頂く予定である。

 なお本抄録内容の詳細は、IDWR 50w 2006, IDWR 33w 2007, IASR 速報<速報>ノロウイルス感染集団発生 2006/07シーズン(2007年8月15日現在報告数)などにある。


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