LAMP(Loop Mediated Isothermal Amplification)法は栄研化学(株)の納富らにより報告された等温遺伝子増幅法である。この方法は通常,6領域を認識する4種類のプライマーを使用するため特異性が高く,短時間に目的遺伝子の増幅が可能であり,増幅産物量が多いことから簡易検出に適している等の特徴があるといわれている。ここでは,Reverse transcription (RT)-LAMP法によるノロウイルスの検出について紹介する。
我々が用いているRT-LAMP法はORF1/2 overlap近傍をターゲットにしており,genogroup I (GI)でposition 5270-5671(Norwalk/68/US),GIIで4979-5389 (Lordsdale/93/UK)である。ノロウイルス遺伝子は多様性に富むため,GIでは9本,GIIでは13本のプライマーを混合して用いている。遺伝子の増幅は62℃の等温条件下で90分間行っているが,多くは60分以内に検出が可能である。この方法の検出限界はgenotypeにより異なるが,102〜103コピー/反応であり,GIとGIIのクロス反応および他の下痢症ウイルス(サポウイルス,アストロウイルス,アデノウイルス40および41型,AおよびC群ロタウイルス)とのクロス反応は認められていない。集団発生事例から得た糞便を用いた試験では,RT-PCRの結果とよく一致しており,糞便からのノロウイルスの検出に有用であることが認められた。また,通常はリアルタイム濁度測定装置を用いて行うと便利であるが,LAMP反応が進行するとピロリン酸マグネシウムの白濁を生じるので,エンドポイントでの目視判定も可能である(Fukuda et al.: J. Clin. Microbiol., 44, 1376-1381, 2006)。
通常,GIとGIIは相同性が低いためRT-LAMP反応は遺伝子グループ特異的に行うが,GIおよびGII用プライマーをミックスすることで,GIとGIIの同時検出も可能である。この場合,上記のプライマーに加え,GIで1本,GIIで2本のプライマーを追加して行っている。検出感度は遺伝子グループ特異的RT-LAMP法に比べ,genotypeによっては1オーダー程度低くなるが,より簡便にノロウイルスが検出できる。同時検出を行う場合には,ループプライマーに蛍光色素を標識して用いている。GI用にはAlexa Fluor 488,GII用にはAlexa Fluor 594を標識している。RT-LAMP反応終了後,産物をアガロースゲル電気泳動し紫外線を照射すると,GIは緑色,GIIは赤色(GIとGIIのミックスサンプルは黄色)の蛍光を発するようにしているので,これにより遺伝子グループのスクリーニングも可能である。