話題提供

検査法紹介

イムノクロマト法によるA群ロタウイルスの検出


札幌医科大学 小児科

本間 真二郎


 A群ロタウイルス(以下RV)は小児の急性下痢症の原因ウイルスのなかで、頻度、重症度ともに最も重要なウイルスである。RVの迅速診断のためのキットには何種類か異なる原理のものが市販されており、広く臨床の場にて使用されている。このうち、イムノクロマト法を利用したものには「ディップスチック栄研ロタ」(以下ディップスチック)とイムノカードSTロタウイルス(以下イムノカード)がある。

 当科の入院、外来患者から得られた糞便検体においてRT-PCR法あるいはPCR法にてウイルスが検出された糞便を対象としてディップスチックとイムノカードについて比較検討を行った。

 ウイルス陽性検体の内訳はロタウイルス陽性検体126検体(G1 45検体,G2 18検体,G3 19検体,G4 25検体,G9 19検体)、ノロウイルス陽性検体56検体、サポウイルス陽性検体6検体、アデノウイルス陽性検体3検体、アストロウイルス陽性検体6検体である。RT-PCR法にて複数のウイルスが陽性となり混合感染が示唆される例は対象から除外した。

 ロタウイルス陽性検体ではディップスチックは126検体中121検体(96.0%)が陽性、イムノカードは118検体(93.6%)が陽性であった。このうち1検体を除く116検体で両検査とも同じ結果であった。RT-PCR法にてRV陽性でディップスチック陰性であった6検体の内訳はG1が3検体でG2,G3,G9がそれぞれ1検体ずつであった。一方イムノカード陰性の9検体ではG1が6検体でG2,G3,G9が1検体ずつであった。ノロウイルス陽性検体中3検体でディップスチック、イムノカードともに陽性であった。サポ、アデノ、アストロウイルス陽性検体はすべて両検査とも陰性であった。

 ディップスチック、イムノカードとも検出感度、特異性ともに良好で、結果も相関しており、迅速診断キットとして有用と考えられる。


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