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「ノロウイルス、サポウイルスに関する新知見」


国立感染症研究所 ウイルス第2部

岡 智一郎


 ノロウイルス、サポウイルスによる下痢症は、わが国を含め世界各地で発生している。とくにノロウイルスはウイルス性集団食中毒発生事例や冬季の感染性胃腸炎の主要な原因ウイルスである。サポウイルスによる下痢症はノロウイルスと比べて報告例が少ないが、ヒトに下痢症を起こすウイルスとして公衆衛生上重要なウイルスである。また、ノロウイルス、サポウイルスはウシやブタなどの動物からも分離されており、ヒトと同様にこれらの動物の下痢症に関与していると考えられている。

 本演題ではヒトおよび動物由来のノロウイルス、サポウイルスに関する新知見として、検出系、疫学、基礎的な研究の各項目について、この1年の間に報告された論文の中から、いくつか抜粋して紹介する。

 ヒト由来のノロウイルス、サポウイルスについて、新たな核酸検出法が相次いで発表され、より簡便にこれらのウイルスが捉えられる基盤が整ってきた。

疫学的な解析についても多くの報告がなされた。特にWangらは、ブタから分離されたノロウイルス、サポウイルスの解析を複数、報告した。いまのところ、ヒトと動物から同一の塩基配列を有するウイルス株が分離されたという報告はないが、新たな株の出現に備え、ヒトおよび動物のノロウイルス、サポウイルスの分離株の動向を注意深く観察しておく必要がある。

 現時点ではヒト由来のノロウイルス、サポウイルスの培養増殖系の確立は報告されていないが、一部の動物由来ノロウイルス、サポウイルス株では細胞での培養、動物への感染増殖系の確立が報告されている。また、ブタ由来のサポウイルス株では感染性クローンを使用したリバースジェネティクスも可能となっている。最近になって、Changらは、ヒト由来のノロウイルス株のrepliconの作製を報告した。今後、in vitroでの個別の機能性タンパク質の活性検討に加えて、このようなrepliconがノロウイルスのゲノム複製、増殖阻害剤の検討に有力なツールになっていくと思われる。また、Le Guyaderらは、ノロウイルスが血液型様物質を介してカキの消化組織に吸着することを示した。カキにノロウイルスが濃縮される要因なのかもしれない。


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