第6回日中ウイルス学会は中国上海市の復旦大学医学院にて6月21日と22日の2日間開催された。初日にKey Note Speechの後、Emerging Disease Seminarが行われ、2日目に一般演題が2室に分かれて発表された。一般演題は討論を含めて1人15分で行われ、中国側からの発表は32題、日本側の発表は19題であった。この中で下痢症ウイルスに関する発表はKey Note Speechで谷口孝喜(藤田保健衛生大学)による1題、一般演題で7題(中国側2題、日本側5題)であった(以下敬称略)。。
谷口の講演はヒトのロタウイルス感染における抗原血症とロタウイルスのreverse genetics開発に関してであった。一般演題における中国側の発表のうち1題はWuhan (武漢)CDCのWangによるもので、2000年から2006年のWuhanでの小児と成人の下痢症においてA群ロタウイルスの疫学的および遺伝子学的特徴を比較した。両者にepidemic season(10月から1月)の違いはみられなかった。また、genotypeもG3P[8]、VP6-subgroupは2、NSP4 genotypeはBがもっとも流行しており、差はみられなかった。。
中国側からのもう1題の一般演題はXiamen(廈門)大学のWuらによるものであった。彼らはHEV ORF2 の蛋白がウイルスの細胞への接着と侵入に必須であることから、免疫原性と反応性の高いp239蛋白を作製し、natural蛋白と構造が同一であることを確認した。その後この蛋白とHepG2 細胞抽出物とを反応させて、細胞側のreceptor候補物質を拾い上げた。今回取り上げたのはGRP78/Bipであった。。
日本側の一般演題として、小林宣道(札幌医大)がBangladeshの成人の下痢患者からA、B、C群ロタウイルスとは異なり、1997年中国で報告されたADRV-Nに近いウイルスを報告した。牛島廣治(東京大学)は2002年から2005年の日本5箇所での急性胃腸炎患者から発見されたウイルスの疫学的、遺伝子学的検索結果について報告した。沖津祥子(東京大学)はRidascreenノロウイルスELISA kitをVLPと臨床検体を使用して検定した結果について報告した。また、田中智之(堺衛研)は和歌山県と大阪府における野生動物の肝・血液・筋肉からHEVのgenomeおよび抗HEV抗体を、またハンターの血清から抗HEV抗体を検出したことを報告した。この結果は野生動物がHEVに汚染されていることを示した。實方剛(鳥取大学)はイヌ、ネコの急性胃腸炎の重要なウイルスであるcanine parvovirusの迅速診断キットとして、これに対するIgM monoclonal 抗体を用いたイムノクロマトキット構築を報告した。。
なお、2008年の第7回日中ウイルス学会は東京で開催される予定である。