話題提供

カリシネットの活用状況と今後の運用


三瀬敬治 札幌医科大学・医学部・衛生学

片山和彦 国立感染症研究所ウイルス第二部


 昨年秋より、カリシウイルスデータベースのテストサイトを立ち上げ、下痢症ウイルス学会会員の希望者に限定してサイトの公開を行ってきた。
(テストサイトのURL http://teine.cc.sapmed.ac.jp/~calici/)

 9月末現在までに、管理者を除き約40名の登録があったが、利用状況は芳しくない。原因としては、Google, Yahooなどの検索エンジンでピックアップされないため、サイトを見つけにくいことが考えられる。このため、ウイルス性下痢症研究会のサイトのトップページからリンクを作成した。

 これまでの利用状況から推測すると、本データベースに期待されている機能は、日本各地で決定されたノロウイルスの塩基配列から遺伝子型を同定することが中心であると思われる。

 昨年紹介したイギリス(http://www.iah.bbsrc.ac.uk/virus/Caliciviridae/)、ドイツ(http://www.calicilab.de/)、アメリカ(http://brc.vbi.vt.edu/pathogens/)のカリシウイルスデータベースの現在の状況も同様の傾向を示しており、低迷状態となっている。これは、ノロウイルスに関してはメジャーな遺伝子型がほぼ出そろい、新しい遺伝子型を発見するのが困難になってきていることも一因であると考えられる。しかし、一方ではノロウイルスのみならずサポウイルスに置いてもゲノムリコンビネーションが報告され、カリシウイルスがホストレンジを変え、動物からヒトへの新たな感染拡大や流行を引き起こす可能性も示唆されるなど、ゲノム全長を対象とした分子遺伝学的解析は新たな展開を迎えつつある。

 また、DDBJ, Genbank, EMBLからなる3大データベース上において、日本から報告されたノロウイルス、サポウイルスのゲノム塩基配列は、かなりの数を占めている。これらを考慮に入れ、我々が構築しているデータベースを全面的に改良し、DDBJとの連携を視野に入れた本格的なカリシウイルスデータベースとして稼働させれば、日本がカリシウイルスゲノム研究の主導権をとる可能性がある。しかし、一方では、疫学調査にゲノタイピングを生かす国内向けのサービスに限定し、臨時サブデータベースとして存在させるという方向性もある。  いずれにしても、学術的、非学術的に関わらず、ネットのコミュニティサイト運営を活発におこなうためには、強力な企画力と人的努力が必要であるが、これには予算の確保、人材の確保など多くの困難が予想される。

 本会では、このような現状を報告するとともに、今後の展開についてご意見を頂き、今後のデータベースの向かうべき方向性を探ってみたい。


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