トピックス

ノロウイルスの最近のトピックス


堺市衛生研究所  田中 智之


[流行疫学について]
 2004年のノロウイルス流行状況の大きな特徴は、4月から6月にかけて、例年には無く高い流行パターンを示した。特に、大阪府内では、大小の集団発生が見られた。この概略について説明する。

[ノロウイルス細胞培養の動き]
 ヒトノロウイルスは未だに組織培養による分離が出来ていない数少ないヒト病原ウイルスの一つである。いくつかのカリシウイルス培養の試みについて報告する。カリシウイルス科サポウイルス属であるPorcine enteric calicivirus(PEC), Cowden 株をLLC-PKを用いた細胞培養の試みがなされた。
この中で、最初は胆汁酸が(Green et al.)、最近では小腸内容物から誘導されるcAMPがPECウイルスの増殖に必須であるとの報告がある(Saif et al.)。
 一方、Murine Norovirus 1(MNV1)を用いた感染実験では、signal transducer and activator of transcription 1(STAT1)-dependent innate immunityが MNV1感染成立に重要であることを報告している。換言すれば、STAT1の解析次第で組織培養が可能であることを示している。また、immunocompromized miceでは、systemic infection がみられ、これは、人にも同じ事が言えるのではないかと考察している(Virgin IV et al.)。

[サポウイルス遺伝子解析]
 (Xi Jiang et al)。
 ノロウイルスにはXi Jiang によるArg320リコンビナントの報告以来 いくつかの報告がある。しかし、サポウイルスの報告は見られない。Xi Jiang らはサポウイルスのカプシド領域の遺伝子解析から、少なくとも9つの遺伝子クラスターの分類を報告している。我々もSakai C12株が recombinant Sapovirus であることを明らかにし、サポウイルスにおいてもノロウイルス同様に、自然界でリコンビナントが生じること、遺伝子系統樹(クラスター)の分類に変化が起こりえることを報告した(Katayama et al.)。


←Back   抄録目次   Next→
トップページへもどる