提案

カリシウイルスのデータベース構想


国立感染症研究所  片山 和彦


 カリシウイルス科には、ラゴウイルス、ベジウイルス、ノロウイルス、サポウイルス の4つのウイルス属が存在する。人に感染するのはノロウイルスとサポウイルスである。近年、ノロウイルスについては、複数の株のゲノム全長塩基配列が明らかにされるとともに分子遺伝学的解析が進み、ゲノタイピング法が確立された。最新の論文(JCM vol.42, p2988-2995, 2004, Kageyama T., et al)によれば、ノロウイルスはGI, GII二つのゲノグループに大別され、GIには14のゲノタイプ、GIIには17のゲノタイプが確認されている。サポウイルスについては、ノロウイルスの5〜8年あまり昔を後追いしている状況である。現在、幾つかのグループによってサポウイルスの塩基配列データーの蓄積が行われつつある。今後、遺伝子解析が進み、VLPsの発現や抗原性など基礎的な分野ばかりでなく、分子疫学の進展が期待できる。また、研究の進展に伴い、ノロウイルスやサポウイルスはゲノムの非構造蛋白質コード領域と構造蛋白質コード領域の境界でゲノムの組換え(リコンビネーション)を起こして、劇的に進化することが明らかになってきた。さらに、ノロウイルス、サポウイルスにはウシやブタから発見され、ゲノム塩基配列が明らかにされた株も存在している。ヒトのウイルスと動物のウイルスの間でゲノムの組換えが起きる可能性もあり、人獣共通感染症として考える必要があるかもしれない。

 このような研究を支えているのは、世界三大遺伝子データベースとして知られているDDBJ, Genbank, EMBLである。DDBJには月当たり3億塩基を超える登録が行われており、年々登録数も増え続けている。遺伝子データベースはいわば、遺伝情報の海を通り越して宇宙であると言っても過言ではない。このように広大な宇宙から、カリシウイルスの研究者が必要とする情報を引き出すのは容易なことではない。そこで、カリシウイルスに特化したデータベースを作成し、DDBJと協力しながらカリシウイルス研究者の遺伝子配列情報解析をサポートすることを目的とした、サブデータベース及び情報交換の場の構築を目指すのが、本プロジェクトの基本構想である。

 本演題では、カリシウイルスデータベースの概略を紹介し、ホームページを簡単にナビゲーションする。


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