ロタウイルス研究の現状について、昨年の下痢症研究会での報告以後に出版された論文から抜粋して報告する。要点は以下の通り。
1. ワクチン、免疫
- RIX4414 (Rotarix)、Rotateq
- VP7がポリクロナールB細胞活性化を起こす。
- Lactobacillus casei strain GG: 効果みえず。
- 植物アルファルファにウシロタウイルスVP4とβ-グルクロニダーゼの融合蛋白質の発現-免疫マウスの乳飲みマウスに感染防御効果
- TMVをベクターとしての植物(タバコ)でのVP8(ウシ)の受動免疫の成立
- ジャガイモでのVP7の発現:経口投与により腸管での中和IgAの誘導
- マウスロタウイルスEmcN株は便へのウイルス排泄量が高い→マウス感染モデル
- HIV-Tat transduction peptideとロタウイルスNSP4の融合蛋白質はTh1粘膜免疫を誘導する。
2.疫学
- ヒトにおけるG9, G8, G5
- G10P[11] (インド)、G3P[14] (ベルギー)、G12P[9] (日本)、G9P6]、G3P[4] (コロンビア)、G5P[8](カメルーン)、G6P[14] (ハンガリー)
- G2 集団発生、アフリカでのG2の重要性:G2P[6]
- ヒトB群ロタウイルス(インド)、ヒトC群ロタウイルス:オーストラリア
- 霊長類(mangabey, pigtail, rhesusとapes)の88%がロタウイルス抗体が陽性
- G8P[14] (ウシ、日本)、P[3] (バッファロー)、P[22] (new Pタイプ;ウサギ)、
- P14[23] (ブタ)
- ウシB群ロタウイルス(インド)、ウシC群ロタウイルス(日本)
- Intragenic recombinationの存在
- Chromatography paper strip method
3.増殖
- RoXaN (rotavirus X protein associated with NSP3):-NSP3-eIF4GI 複合体→翻訳の制御に関与する。
- RNA silencing
- プラス鎖RNAはViroplasmで合成される。
- NSP2 とNSP5がゲノムのパッケージングに関与する。
- NSP2/NSP5がViroplasm形成に関与する。
- NSP4が細胞外マトリックス蛋白質laminin-β3、fibronectinに結合する。
- NSP4がカベオラ様のモデル膜と結合する。
- トリロタウイルス(PO-13, Ty-1, Ty-3, Ch-1)の吸着にはシアル酸の存在が必要
- シクロオキシゲナーゼの産物:プロスタグランジンの阻害はロタウイルス感染を抑制する。
4.病原性
- intestinal transplantation後に、33例中13例に20回の感染性胃腸炎の発生。14エピソードがウイルス感染で、そのうち8エピソードがロタウイルス感染
- 超音波検査において、回腸の壁の厚さが厚くなる、リンパ節腫脹の頻度が有意に高い→腸重積
- バングラデシュ老人の下痢症におけるロタウイルス検出の頻度:4%
- カナダ 1月〜5月 下痢症の入院患児の71.7%がロタウイルス陽性
- 無症候性ロタウイルス株I321に感染した新生児はその後のロタウイルスによる下痢になりにくい。
- 神経伝達物質セロトニン、VIPがロタウイルス下痢に関連
- ウイルス排泄量と重篤度に相関がある。
- インターフェロン誘導能欠失のStat1ノックアウトマウスの実験系で、成熟マウスでの免疫反応は劣るが、乳飲みマウスでの下痢誘導やウイルスの増殖には影響はない。
- ロタウイルスによる痙攣とNOに有意の関連がある。
また、2004年4月28日〜30日に開催されたThe 3rd International Conference on Vaccines for Enteric Diseasesで示された、臨床試験が進行中のロタウイルスワクチン(Rotarix、Rotateq, LLR)の現状について簡単に紹介する予定である。